こんにちは、三度の飯より宇宙が好き、科学コミュニケーターの中島朋です。


さっそくですが皆さん、今年は"あれから50年"の記念すべき年です。一体何のことか、わかりますでしょうか。50回目の誕生日を迎える方もいらっしゃるかもしれませんが・・・


今から50年前の1969年7月20日、人類が初めて月面へと到達しました。そのアポロ11号では、船長であるニール・アームストロング氏、そしてバズ・オルドリン氏が月面歩行を成功させました。

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アームストロング船長が撮影したバズ氏(©NASA)

地球から38万km先の月まで人間の活動領域を拡げることができた背景には、冷戦下にあったアメリカと旧ソ連との宇宙開発競争が関わっています。その歴史を簡単に振り返ってみましょう。


1957年、旧ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、その1か月後にはスプートニク2号が犬を乗せて打ち上げられました。そして1961年、人類初として旧ソ連のユーリ・ガガーリン氏が宇宙飛行を成功させました。それから8年後には、人類の月面歩行が成功。競争を通して加速度的に宇宙開発が進んだわけですが、有人月探査は3年後には打ち切られ、その後は地球近傍で様々な実験や研究を行う方向へとシフトしていきます。2011年には、地上400㎞上空に国際宇宙ステーション(ISS)が完成し、世界15か国が協力して様々な研究や実験などが行われてきました。


おもに地球近傍で行われてきた有人宇宙開発ですが、今、新たな時代へと進もうとしているのです。


それは、再び人類が月を目指すというもの。現在、アメリカを中心に国際協力で月周回軌道に人が住める有人拠点を作り、船内での実験やそこから月面探査を行う「月近傍有人拠点(Gateway)」計画が進んでいます。その拠点では、宇宙飛行士が約30日間滞在することを想定しています。そしてこの計画は、月面探査のみならず、将来的な火星を含めた月以遠探査への技術実証も大きな目的の1つとされています。この3月には、アメリカ副大統領が、アメリカは5年以内に宇宙飛行士を再び月面に着陸させると述べたことが、メディアでも大きく取り上げられました。


そんな、新しい宇宙探査時代が始まろうとしている現在、地球に住む市民の皆さんは、宇宙をどう捉えているのか、来館者の方を対象(小学2年生~社会人の方 60名)に調査を行いました!


ご協力いただきました皆様、ありがとうございました!


問いはこちらの6つ

1:皆さんは宇宙に興味はありますか?
2-1:あなた自身は、宇宙に行ってみたいですか?
2-2:自分が宇宙に行く、もしくは行かないとしても、最も気になる点はどこですか?
3-1:人類は、地球を飛び出しどこを目指してほしいですか?
3-2:人類が宇宙に行く、もしくは行かないとしても、最も気になる点はどこですか?
4:月面に1年住むとしたら何が必要ですか?


今回の「あなた編」ブログでは、問1と2の結果をご紹介します。(問3は「人類編」、問4は「月面編」ブログでご紹介します!)

ではさっそく、調査結果を見ていきましょうー!


問1:皆さんは宇宙に興味はありますか?

興味がある...90%

興味がない...5%

どちらでもない...5%


宇宙に興味を持たれている方が全体の90%を占め、関心の高さが伺えます。さらに掘り下げ、宇宙のどんなものに興味があるのか聞いてみたところ、以下のようなご意見が!


星空、星座、天体の岩石の成分、銀河、ブラックホール、ロケット、宇宙の果て・・・   等


「宇宙」とひとことに言っても、好きな分野は分かれますが、圧倒的に多かったのが、"星を見るのが好き!"というご意見。夜、空を見上げるとそこにはたくさんの星々。やはり私たちにとって、普段から目に見える星々は、物理的距離は遠くとも、心理的に身近に感じるのかもしれませんね。
(ちなみに宇宙好きの中島ですが、夜空を見上げるのは大の苦手。星の輝きと対照的な宇宙を埋め尽くす漆黒の闇に吸い込まれてしまうのではないかと、恐怖心を感じてしまうのです。)


また、調査を行った時期が2月~3月ということもあり、2月22日に小惑星リュウグウへタッチダウンを成功させた「はやぶさ2」というキーワードも多く聞かれました。読者の皆さんは、宇宙のどんなものに興味がありますか?


そして冒頭で、これまでの宇宙開発についてお話しましたが、人工衛星やISS内での実験などに興味を持たれる方はごく少数でした。特にGPSなどで、普段から人工衛星の恩恵を受け生活している私たちですが、生活の一部になっているせいか、特別それを意識する、それらの未来に注目するという方は多くありませんでした。



問2−1:あなた自身は宇宙に行ってみたいですか?

行ってみたい...73%

行ってみたくない...27%


実現可能かどうかにとらわれず、シンプルに行ってみたいと答えて下さった方が7割を超えました。さらに、行ってみたいと答えてくださった方に、どこに行ってみたいかも聞いてみました。その結果がこちら!

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(青:児童・生徒・学生の方 緑:社会人の方)

月は絶大な人気を誇りますね!身近な天体である月に行き、まずは住んでいる地球を外から眺めてみたいという理由が大半でした。そして、この質問で最も驚いたのが、その先・より遠くに行ってみたい、と答える方が次いで多かったこと。土星のリングを近くで見てみたい、ブラックホールまで行きたい、など、夢のあるご意見もありました。人の探求心・好奇心は尽きませんね~!


さらに、行ってみたいと答えてくださった方の多くに共通してみられたのが、自分で見てみたい・調べてみたいという実体験を望む声です。書籍やインターネット等を通して、月や火星、そしてそれ以外の天体や銀河の様子などを見聞きできる機会は多いものの、やはり自分自身で体験してみたいという想いは強いということがわかりました。


せっかくなので、なぜそこに行きたいか、その他の理由もご紹介したいと思います。


■ISS
・地球を外から見てみたい。外から見てみたらよくわかるだろうから。(多数)

→残念ながらISSの高度では、地球の全貌は見ることができません。しかし、地球の青さ、そして雷やオーロラなどの様々な現象は、地球外から眺めると違った印象に映るかもしれませんね。


・無重量だと水が丸くなると聞いたので、色々な実験をしてみたい。(大学生)

→ほとんど重力がない環境では、水は表面張力の影響で表面積を小さくしようと球体になります。精密機器に囲まれた船内で、水を使った実験はスリリングではありますが、地球とは異なる環境で様々なことを試してみたいですね。

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球体になって浮かぶ水(©NASA)

■月
・ドラえもんが行ったから。(小学生)

→なんとも可愛い回答ですね。この春の映画「ドラえもん のび太の月面探査記」を鑑賞した方も多いのではないでしょうか(私も観ました)。ふだん地球からは見ることができない月の裏側には新たな文明が築かれているのではないか、わからないからこそ想像が膨らみ、ワクワクする気持ちになりますね。


・ISSも興味があるが、ISSは作られた環境。実際に居住可能なように作られている。一方、月ではまだ暮らせていない。暮らせるのかという可能性に興味がある。(社会人)

→これからどうなっていくのか、その過程を楽しみにしているというご意見。これから有人月探査がどう進展していくのか、非常に楽しみなところですね!


■火星
・映画オデッセイのイメージが強く、火星だと住めそうな気がするから。(多数)

→映画や漫画、小説などの情報をもとにお話してくださる方が多くおられました。


■その先
・銀河系外:ISS内の見学もしてみたいが、地上にいながらアバター等を用いてでもできそう。だから、銀河の渦を見てみたい。普段見る銀河の写真は地球から撮ったものだから、別の視点から見てみたい。(社会人)

→地球にいながら現地のロボット(アバター)を操作する宇宙開発が計画されています。また、将来的にアバターを用いた宇宙旅行も考えられているそうです。地球で宇宙を体験する、そんな未来がやってくるかもしれないですね。


・遠く:地球にはない何かを発見してみたい。新しい生命を見てみたい。(多数)

→地球外生命に興味を持たれている方も多くおられました。


行きたくない理由としては、そもそも宇宙に興味がない、行ってもしたいことがない、というご意見のほか、地球の環境に適応した人間の体が、新しい環境に適応できるか不安を感じる、というものもありました。



問2−2:自分が宇宙に行く、もしくは行かないとしても、最も気になる点はどこですか?

どこが課題と感じるか、気になるかを、技術面、コスト面、安全面、生活面、そしてその他、という5つの区分で選んでもらいました。その結果がこちらです!

※1:○...各区分の上側(その他の場合は左側)は、行ってみたい人
×...下側(その他の場合は右側)は、行ってみたくない人
※2:2つシールを貼って下さった方がいるため、調査人数よりも数が多くなっています

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(青:児童・生徒・学生の方 緑:社会人の方)

自分が行く・行かないに限らず、安全面を気にする声が最も多いですね。ロケットの安全性だけではなく、行った先の環境に適応できるか、のように行き先の安全性を心配する方も多くいらっしゃいました。次いで、コスト面を選ぶ方が多いという結果でした。


一方、技術面に対する心配の声が少なかったというのは意外でした。行き先に月を選ばれた方も多く、近い将来人が月に行く技術は確立されるだろう、だから安全性の方が気になる、という声も聞かれました。また、民間企業の社長が月を目指す、アメリカ企業スペースX社の創設者であるイーロン・マスク氏が火星移住計画を発表するなど、民間企業ベースで月や火星などを目指すという社会的な流れの影響も受けているのではないかと考えられます。


では、それぞれの区分の理由をいくつか見ていきましょう!
(○:行きたい方の理由  ×:行きたくない方の理由)


□技術面
○:技術が発展すれば、安全性も高まり、コストも抑えられる。今は総合的に見ても、全体的に足らないと思う。(社会人)
×:遠くに行くってだけでもそれなりに技術が必要。ただ遠くに行けるだけの技術があっても、それだけでは人は生きていけない。行った先で何か起こった時に対処できる技術があるのか。(大学生)

→当然ですが、現在の技術力に対して不安を感じられる方もいます。"技術"といっても、行く技術、生活する技術、想定外の事に対応する技術など、総合的な技術力を高めなければ、安心して宇宙に行けないですね。


□コスト面
○:危険なのは承知の上。安全面は、どんなに努力しても、リスクは0にできない。何かミス一個で終わる。そこを議論してもしょうがない。(社会人)

→安全面を気にする声が多い一方で、ある程度のリスクは受け入れるしかないだろうというご意見。どの程度のリスクなら受け入れられるか、そしてリスクを上回るベネフィットがどのくらいあるのか、それぞれが持つ価値観によって違ってくると思います。


□安全面
○:行って見てきたものを、地球に帰って誰かに伝えたい。だから、せっかく行っても、帰ってこられなければ意味がない。技術面やコスト面は安全に関わっているが、安全性が担保できないと乗りたいと思えない。(社会人)

→これまでも宇宙に行った宇宙飛行士たちが経験談を語り、多くの人々に影響を与えてきたように、行った先で見たものや感じたもの等を他の人たちと共有することで、楽しさや面白さが伝わるだけではなく、新しい価値観やイマジネーションが生まれる可能性につながるかもしれませんね。


○:安全ということ自体がわからない。情報がたくさんあれば変わってくるが、その情報がないから、わからない。(社会人)

→安全かどうかを判断する材料が少ないということですね。たとえ国や企業などが、"○○という理由で安全です"と謳ったとしても、判断するのは皆さん自身。様々な情報から自分で判断することの重要性を改めて感じたご意見でした。


○:民間人が行っても、行った先で何か起こったらサポートがない状態で、取り返しがつかない。何か起こった時の心構えができていない。(高校生)

→宇宙船や行った先の安全面だけではなく、不慮の事故が起こった時のサポート体制や行く者の心構えまで、広く考えていますね。物理的なものへの安全性という信頼もそうですが、関わってくる人への信頼や自分自身が行くとなった場合の心構えも非常に重要です。


□生活面
○:宇宙の生活がどんな感じでやっているのかが気になる。映画とかはその辺りがざっくりと切り取られている。衣食住の具体的なところが見えづらい。(社会人)
×:それぞれ行った先で快適に生活が送れないのではないか。居住区が心配。(大学生)

→行き先の環境や期間にもよると思いますが、皆さんはどの程度の衣食住を求めますか?消臭効果のある衣類を1週間着れる?現在のISSの食事メニューは16日間のローテーションですが、ひと月に同じ食事を2度経験するのは許せる?快適かそうでないかと感じる境界は人によって変わってきますが、一度振り返ってみると面白いかもしれませんね。


□その他
×:行くまでの準備に時間がかかる。そして、行ってすぐ帰ってこられるものではないから。(高校生)

→確かに長期滞在となると、宇宙飛行士のように事前に様々な訓練をする必要があるかもしれませんが、企業によっては宇宙空間(地表100kmを超える空間が宇宙)で5分ほどの無重量体験を行う宇宙旅行も計画されており、事前の訓練は数日程度だそうです。



さて、ここまでいかがでしたでしょうか?
次回は、"自分"から"人類"に視点を変えた時、どんな風に考え方が変わるのか、もしくは変わらないのかをアンケート結果をもとにお話していきたいと思います。



Author
執筆: 中島 朋(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
高校生の時に宇宙飛行士が話す講演会に参加し、宇宙と宇宙飛行士に魅了される。先輩からの「女の子に物理なんて無理」という言葉をバネに物理に没頭。そして宇宙に関する研究をしたくて物理の道へ進むも、研究はなぜか放射線検出器の開発。そこで電子部品の可愛さを知る。より多くの方々とともに、科学と社会のあり方を考えたいと、高校理科教諭を経て、2018年より未来館へ。