先月2019年3月に安川情報システムからYE DIGITAL(ワイ・イー・デジタル)に社名を変更したばかりの同社。創業の理念を忘れないようにYaskawa Electricの頭文字を冠しながらも、更なるデジタル化推進を掲げ社名の変更を行っている。先頃開催された「第28回 Japan IT Week 春 前期」ではAIやIoT、そして同社が産業機械開発で培った技術を融合させた取り組みが紹介されていたのでレポートしてみよう。

  • 「2019 Japan IT Week春 前期」、YE DIGITALブースより

    「2019 Japan IT Week春 前期」、YE DIGITALブースより

"YE DIGITALが実現するデジタルトランスフォーメーション"と銘打たれた同社のブースでは、産業機械向けのIoTソリューションを別の業種や環境で他社と共同して開発した二つのソリューション屋内位置測位システム「Local Positioning System」と「MMsmartBusStop」を全面に設置してあった。

Local Positioning Systemは、同社が投資している米国シリコンバレー企業であるLOCIX開発のワイヤレスカメラ「LOCIX HD VISION SENSOR」を活用した屋内位置測位システム。工場内の物や人の位置情報をLOCIXのシステムで収集し、それ以外のWMS(倉庫管理システム)やMES(製造実行システム/Manufacturing Execution System)、他のIoTデバイスのデータと共に同社クラウドのMMCloudに集約して一元管理するというものだ。搬送ロボットや人員の作業動線の分析、計測器、工具、金型などの適正位置の分析などを効率的に行うことができる。この製品は、まだ参考出展の段階だが近い内に製品化される予定だという。

  • LOCIX社のカメラと位置測位センサー。同社のカメラやセンサーは、高度な省電力機能が特徴で静止画像を一時間に一枚撮る程度なら単三電池一つで2~3年は持つ。屋外に複数設置する場合に最適で広島の災害現場でも監視用に採用されているという
  • LOCIX社のカメラと位置測位センサー。同社のカメラやセンサーは、高度な省電力機能が特徴で静止画像を一時間に一枚撮る程度なら単三電池一つで2~3年は持つ。屋外に複数設置する場合に最適で広島の災害現場でも監視用に採用されているという
  • LOCIX社のカメラと位置測位センサー。同社のカメラやセンサーは、高度な省電力機能が特徴で静止画像を一時間に一枚撮る程度なら単三電池一つで2~3年は持つ。屋外に複数設置する場合に最適で広島の災害現場でも監視用に採用されているという

デジタルトランスフォーメーションを進める同社が展開するもう一つのソリューションが、バス停をデジタル化した「MMsmartBusStop」ソリューションだ。これは、同社が福岡で鉄道、路線バスを運営する西日本鉄道グループと共同で開発したソリューションで、すでに北九州や北陸などで実証試験も終了。近日中にも西鉄グループのバス停として導入される予定だという。このスマートバス停は、時刻表データの配信や、広告、お知らせ情報などの独自コンテンツの配信などを行うことができる。

  • MMsmartBusStopことスマートバス停。ソーラーパネルが設置されているなど省エネ設計も特徴で、電気の引けないような僻地においての運用を考慮に入れている。サイネージの下部には広告などが表示される

    MMsmartBusStopことスマートバス停。ソーラーパネルが設置されているなど省エネ設計も特徴で、電気の引けないような僻地においての運用を考慮に入れている。サイネージの下部には広告などが表示される

同社は自動販売機と一体型のバス停も開発中で、すでに今年2月から一年間、北九州で実証試験を行っており、このタイプのバス停も近日中に登場するかもしれない。同社では、このようなケース以外にも物流施設内の停車場の空き状況を一括管理するソリューションなども展開しており、同社のトランスフォーメーションの取り組みがわかる。

製造会社向けのIoTソリューションでは産業機械分野に特化したAI「Paradigm」を活用したソリューションの数々だ。その一つがAI画像判定ソリューション「MMEye」。同ソリューションはAIによる画像判定サービス。同製品の特長は、正常な画像と異常な画像を比較する異常検知機能と登録した物体を画像内から即時に抽出する物体検知機能、多種多様な物体を分類する分類機能の三つ。ブースではクッキーを使った物体検知デモが行われ、デモでは何点か割れたクッキーをリアルタイムで判定。クッキーの割れを見つけるだけでなく、焼き具合の判定、欠陥クッキーのレベル評価も行うことができるAIの高度な検知能力を見ることができた。

  • 画像解析ソリューション「MMEye」のデモの模様。デモでは何点かの割れもののクッキーを乗せたトレイの中から不良品のみを抽出している

    画像解析ソリューション「MMEye」のデモの模様。デモでは何点かの割れもののクッキーを乗せたトレイの中から不良品のみを抽出している

  • Iが不良のクッキーを抽出。赤の枠で囲まれたクッキーが不良品。形だけでなく、焼け具合などもチェックする

    AIが不良のクッキーを抽出。赤の枠で囲まれたクッキーが不良品。形だけでなく、焼け具合などもチェックする

  • クッキーの個別の評価を出力。クッキーの欠けだけでなく、欠けた状態も評価。また、焼き具合なども検知する

    クッキーの個別の評価を出力。クッキーの欠けだけでなく、欠けた状態も評価。また、焼き具合なども検知する

予知保全ソリューション「MMPredict」は、MMCloudで収集した製造装置やプラント設備などのセンサーデータをAIが機械学習し異常発生を推定、ユーザーに通知するソリューションだ。センサーデータを元に正常モデルを作成し、そのデータと稼働データとの乖離度から故障予兆を検知する。ブースでは、異常を発生させる装置を設置した機械でAIがどのように異常を感知するかを解説するデモが行われていた。

  • 「MMPredict」のデモ。モータが回転する機械に、電流値を取得するセンサーと異常を発生する機械を設置したデモ機|

    「MMPredict」のデモ。モータが回転する機械に、電流値を取得するセンサーと異常を発生する機械を設置したデモ機

  • MPredictがセンサーの波長を記録。正常の状態と比較して異常な波長を予兆として検知。ユーザーに通知する

    MMPredictがセンサーの波長を記録。正常の状態と比較して異常な波長を予兆として検知。ユーザーに通知する

最後に紹介するのが、工場内のネットワークの状況をリアルタイムに把握し、異常を早期に検知しインシデントの発生や被害の拡大を防止するセキュリティソリューション「MMsmartSecurity FS-Eye」。既存ネットワークに専用のエッジコンピューターとゲートウェイを設置し、工場内のデータをセキュリティに関わるイベントログ関連のログのパケットを抽出、インターネットに接続しない閉鎖域網でログデータだけを送信する環境を構築する。セキュリティ監視業務はセキュリティオペレーションセンターが担当、インシデント発生時にはメールと電話で連絡を入れてくれる。

  • 「MMsmartSecurity FS-Eye」では、工場内にFA用エッジコンピューター「SecurityEdge」とゲートウェイに「MMLink-GWL」を設置するだけで導入できる

    「MMsmartSecurity FS-Eye」では、工場内にFA用エッジコンピューター「SecurityEdge」とゲートウェイに「MMLink-GWL」を設置するだけで導入できる

1978年創業の社名を新しいデジタル時代に向けてYE DIGITALに変化させていった同社。長年培ってきた製造業におけるIT技術と新しいAI技術が融合する同社新サービスの今後の展開に期待したい。