2019年の3月22日~24日にかけて東京ビッグサイトで開催された「第46回東京モーターサイクルショー」。今年は153の出展者が合計555台のバイクを出展した。国内最大級の二輪車イベントだ。来場者数は過去最高となる14万9,524人を記録した。

ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内4大メーカーをはじめ、ハーレーダビッドソンやトライアンフなど、国外メーカーやパーツメーカーが一堂に会した会場内は、二輪不況などどこ吹く風とばかりに盛り上がっていた。

各メーカーのブースのほか、会場には女性ライダーをサポートするレディスサポートブースも

二輪不況が叫ばれるバイク業界だが、2019年はどんなトレンドが見られるのだろうか。二輪専門誌を多数手がける株式会社クレタで『レディスバイク』の編集長を務める岩崎雅考氏に話を聞いた。

「第46回東京モーターサイクルショー」は大盛況

まず、「第46回東京モーターサイクルショー」の内容を振り返っておくと、なんといっても注目を集めていたのは、スズキが2019年の発売を予定する新型「カタナ」だ。初代カタナは2000年を最後に惜しまれつつも生産終了となっていたが、2018年の「インターモト」(バイクの国際見本市)で後継車種が発表されていた。スズキは2019年春から欧州を中心に販売する計画としているが、ファンの多い車種だけに、国内市場投入への期待が高まる1台だ。

今後、多くの話題を集めること間違いなしの新型「KATANA」。スズキのブースには、2000年モデルの「GSX1100S カタナ」も合わせて展示された

近年、話題のニューモデルを続々とリリースしているカワサキは、2016年の「ファイナルエディション」以来の復活となる「W800 STREET」「W800 CAFE」をブースに展示。「W800 STREET」は1966年発売の「W1」を彷彿させるアップハンドル仕様のクラシカルスタイル、一方の「W800 CAFE」は専用のフロントカウルやカフェシートなどを装着したカフェレーサースタイルとなっていた。これらの車種は2019年3月に発売となっているが、昨今のネオレトロブームともあいまって人気を得そうだ。

「W」ブランドを受け継ぐ最新モデル「W800 STREET」。ボディサイズは全長2,135mm×全幅925mm×全高1,120mm、シート高770mm、販売価格は99万3,600円だ
スワローハンドル&フロントカウルを採用する「W800 CAFE」は、「W800 STREET」と比べてよりスポーティーな印象
2017年12月の発売以来、圧倒的な支持を集めるカワサキ「Z900RS」

『レディスバイク』編集長に聞く2019年のトレンド

国内外のバイクメーカーおよびパーツメーカーが集結したとなれば、気になるのが2019年のトレンドだ。長らくバイク業界を見続けてきた『レディスバイク』編集長の岩崎雅考氏は、どのように感じているのだろうか。

バイク雑誌の編集長として、二輪業界の移り変わりを目の当たりにしてきた岩崎氏

「傾向としては近年同様、ネオレトロ系やSS(スーパースポーツ)が今年も主流になると思います。ただ、今年はヨーロッパ系が小排気量(125cc)のネオレトロモデルを出してきているのが注目ですね」

そういって見せてくれたのが、ITALMOTO(イタルモト)の「Tiquattro125 Scrambler」とMUTT MOTORCYCLES(マットモーターサイクルズ)の「RS-13 125」の2台だ。

レディスサポートブースにて国内初披露となった「Tiquattro125 Scrambler」。2019年6月に43万2,000円で発売となる

1952年にイタリア・ボローニャで誕生したITALMOTO。創業以来、“Made in Italy”にこだわる同社ならではのバイク「Tiquattro125 Scrambler」は、イタリアンデザインと最新テクノロジーが融合した1台だ。スマホの充電やナビゲーションに使用できるUSBソケットが付いているところなど、レトロな見た目とは裏腹に実用性も高い。

「RS-13 125」は、イギリスの二輪メーカーであるMUTT MOTORCYCLESが2019年4月のリリースを予定するバイクだ。デザインはカスタムビルダーでもある同社役員のベニー・トーマス氏が担当。車名にもなっている「RS」は、生鉄を意味する「Raw Steel」の略だ。あえて荒削りな仕上げとしたタンクのスチール感が、カスタム色の印象を強めている。

「RS-13 125」のタンクはすべて職人が磨き上げ、ヘアライン加工を施している

近年のトレンドである「ネオレトロ」について岩崎氏は、「カワサキのZ900RSをはじめとする中型~大型二輪に加えて、小型二輪にもネオレトロ系が登場したことで、今後もこの流れは続くと思います」と話す。

女性ライダー増加の要因? 継承が進むバイク文化

東京モーターサイクルショーに設置される女性ライダー向けブース「レディスサポートスクエア」をプロデュースしてきたのが、岩崎氏が編集長を務める『レディスバイク』だ。岩崎氏自身もブースに立つ中で、1つの波を感じたという。

「今年は例年よりも若い女性が多い印象です。特に、両親と一緒に訪れる若い女性の姿が増えたと感じています。バイクブームを過ごした両親の影響で、バイクに興味を持ってくれる若年層が増えたのではないでしょうか。これはすごくいい傾向だと思います」

バイクブームが一過性のものとして終焉を迎えるのではなく、ブームを経験した世代が親になり、その子供たちがバイク乗りになる。要するに、バイクが文化になってきていると岩崎氏は指摘する。

レディスサポートブースでは、実際にバイクにまたがり撮影を行う女性の姿も多数見受けられた

「80年代のバイクブームの時と比べれば、二輪ユーザーが減っているのは間違いありません。しかし、SNSの広がりもあって、バイクで気軽に出かけて、景色や話題のお店などを写真に撮って投稿するという新しい楽しみ方も生まれています。若い世代がバイクに興味を持ってくれていることは業界にとって朗報であり、このチャンスは絶対にいかさないといけませんね」

強まる排気ガス規制や駐輪場所の減少など、バイクを取り巻く環境は必ずしも良好とはいえないのが現状だ。しかし、岩崎氏のいうように、バイクが文化になってきているのであれば、2019年は新しいうねりに期待できるのかもしれない。

(安藤康之)