新卒で働き始めたり異動で新たな場所で働いたりと、4月は環境が大きく変わる人が多い季節。今までとは違った環境で、新しい人間関係を構築しようと奮闘している人もいることだろう。なるべく良い関係を築きたいと思っていても、ちょっとした言動が気になったり、職場の空気に馴染めずにうまく発言できなかったりして、もどかしさを感じてしまう場合も少なくない。

そこで今回は、コミュニケーションのプロであるリクルート マネジメントソリューションズのソリューション統括部コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー・松木知徳さんに、新生活に役立つコミュニケーションのコツを教えてもらった。

  • リクルート マネジメントソリューションズ/ソリューション統括部コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー、松木知徳さん

    リクルート マネジメントソリューションズのソリューション統括部コミュニケーションサイエンスチーム チームリーダー・松木知徳さん

目に見えないものに不安がつきまとう

新しい環境になんだか馴染めないと感じているケースはよく聞くが、具体的にどのようなことがあって「馴染めない」と感じてしまうのだろうか。この原因は、「目に見えないもの」にあると松木さんは分析する。

「ビジネスの場で、明文化されている職務定義などのほかにも、目に見えないルールがある場合があります。目に見えるものは、自分なりに考えて行動することができますが、目に見えないものはずっと不安が残り、モヤモヤと『馴染めない』という感覚につながります」

新しい環境になり、マニュアルや会社の組織図、職務規定など何かしら可視化できるものは、それを読んで理解したり、不満があったとしても克服するための試みを自分なりに起こせたりできる。場合によっては、不満があっても明文化された決まりごとならばと諦めもつくだろう。

しかし、職場風土や暗黙のルールなどは、わかるまで払拭されず不安がずっと残ってしまう。新しい環境においては「この見えないものを理解することにエネルギーを使うケースが多い」と松木さんは話す。その不安感こそが、「馴染めない」という悩みの正体と言えるだろう。そこを解決するためには「大まかに言えば、相互理解に尽きる」という。

相互理解をスムーズにするコツ

ビジネスにおける相互理解は、「組織が自分に期待していること」「自分が組織に期待していること」のギャップをできるだけなくしていくことで進む。ここをスムーズに行えれば、新しい環境にも早く打ち解けられるだろう。そのためのポイントを松木さんにまとめてもらった。

■対人コミュニケーションのポイント
1.自分の存在を知ってもらうこと
2.自分の人となりを伝えること
3.自分から新環境(組織や人)を知りに行くこと
4.できないことを素直に聞くこと
5.感謝の意を伝えること

「まずはシンプルに、接触機会が多いほど人は相手に対して好感を抱きます。その意味で、挨拶はとても重要。挨拶に『今期から〇〇に配属された××です』と付け加えると良いと思います。みんなが自分に話しかけやすくなるよう、積極的に挨拶をしましょう。そのうえで、自分がどんな人なのか、仕事の経験やスキルだけでなく、趣味や特技などの話題も距離を縮めるきっかけになります」

最近では、プレゼンテーションツールを使ったスライドなどで自己紹介する場面も多くみられるようになったという。そして、自分を知ってもらうだけでなく、相手を知ることも大切だ。

「すべての人と仕事で関わるわけでなくとも、職場の人の人となりを知ることで緊張感がなくなり、パフォーマンスを上げることができます。私のところでは、異動してきた方がアポを取って、組織の全メンバーと30分ずつ面談をして、人となりや仕事内容を聞く機会を最初に作っています」

仕事に関係のない話題でも、知ることで安心感が得られる。ちょっとした雑談も、職場に馴染むための近道だ。それでも、仕事をしていくうえでわからないことにぶち当たることもあるだろう。

「簡単そうで意外と勇気が必要なのが『できないことを素直に聞く』ことではないでしょうか。でも、新しい環境に入ったばかりの今こそ、些細なことでも聞きやすいタイミング。そして、サポートをしてもらったら、きちんと感謝を伝えることが大切です。質問をきっかけに周囲のメンバーとも関係が近くなりますし、ちゃんとしていて礼儀正しいという第一印象があれば、進んで支援したいと思ってもらえるはずです」

  • 自分を知ってもらうだけでなく、相手を知ることも大切

    自分を知ってもらうだけでなく、相手を知ることも大切

自分が環境に馴染むための相互理解だけでなく、ビジネスにおける相互理解も大切なポイント。どういう仕事を自分に求められているのか、自分が仕事に対して何を考えているのかについて、ギャップを埋めることで、信頼性を獲得できる。その押さえるべきポイントを、松木さんに3つにまとめてもらった。

■ビジネスとしての信頼性獲得の方法
1.評価の方法を知る
2.自分のビジネスとしての思いを伝える
3.基本は報・連・相

「自分の仕事がどのように評価されるのかを知っておくことはとても大切ですが、着任した際に、仕事とともに評価基準まで教えてくれる組織はそう多くないかもしれません。ストレートに聞きにくい場合は『私に期待していることがあれば教えてください』くらいのトーンで上司に聞いてみると良いでしょう。少し仕事を覚えてきたら、こんな仕事をしたい、こんな貢献をしたいという自分のビジネスでの思いを伝えることができると、上司からの依頼も変わってくるかもしれません。そして、基本ではありますが重要なのが『報・連・相』です。どんなにいい仕事をしても、伝えることができなければ評価されません。これは新人でもベテランになっても同じことだと思います」