ルネサス エレクトロニクスは3月29日、3月30日付(米国時間の3月29日付)でIDTの買収が完了することを受けての今後の同社の方向性の一端についての説明会を実施。併せて先だって明らかにした国内工場の一時生産停止を検討している背景についても説明を行い、単に需要が少ないために工場を止めるのではなく、そこには同社としての新たな試みが隠されていることを明らかにした。

ルネサス+IDT+Intelsil=ソリューション?

ルネサスは2016年にパワーマネジメントICなどのアナログ半導体製品を主軸としていたIntelsil(現ルネサス エレクトロニクス・アメリカ)の買収を発表。そして2018年にタイミング製品や通信インタフェースなどのアナログ半導体を主軸としていたIDTの買収を発表するなど、もともとの事業の柱であるマイコンの周辺となる部分を有するデバイスベンダの取り込みを図ってきた。

こうした買収の背景として、同社代表取締役社長 兼 CEOである呉文精氏は「いろいろなシナジーがある」という言い方を行ってきたが、要は同氏が社長に就任して以降、ずっと唱えてきた「One Global Renesas」の具体的な姿がそこにはあるといえる。

  • 呉文精

    ルネサス エレクトロニクスの代表取締役社長 兼 CEOである呉文精氏

実際、同社は主力のマイコンやSoCを中心に、IntelsilのPMIC(パワーマネジメントIC)や、IDTのクロック、RapidIOやIO-Linkのような通信インタフェース、そして各種のセンサ技術などを組み合わせた、特定用途向けソリューションをIDT買収完了予定の3月30日に「ウィニング・コンビネーション」として15種類発表する予定であり、今回の説明会では先行して、3社の技術を組み合わせることで実現した流体やガスの流れを検知するフローセンサの実物も披露された。

  • ウィニング・コンビネーション

    ルネサス、Intersil、IDTの技術を組み合わせてルネサスだけで特定分野に対する課題解決ソリューションの提供を可能とする「ウィニング・コンビネーション」の提供が、IDT買収の1つの答えといえるだろう

こうした取り組みを加速させるために、こちらも既報のとおりだが、4月1日付けで新たな役員人事を、そして同7月1日付けで新たな組織体制へと移行を進める予定だ。1つ気がかりなのは、新たな2つの組織は「オートモーティブソリューション事業本部(ABU)」と「IoT・インフラ事業本部(IIBU)」となる予定だが、このIIBUのトップにIDTのExecutive Vice President, Global Operations and Chief Technology Officerを務めるSailesh Chittipeddi(サイレシュ・チッティペディ)氏(3月30日付けで同社のPresident and CEOに就任)が執行役員常務として就くという点である。Intersilの例もあるにはあるが、同社の屋台骨の1つを日本人以外がまとめる、ということがどこまで現実的なのかについては、まったくの未知数といえることから、チッティペディ氏の手腕が試されることとなるだろう。

  • ウィニング・コンビネーション
  • ウィニング・コンビネーション
  • 15種類用意されるウィニング・コンビネーションの1つとなるフローセンサ。IDTのセンサやルネサスのマイコンなどで構成されている