全3話の『仮面ライダージオウ スピンオフ RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』の第1話が、映像配信サービス「ビデオパス」にて2019年3月31日より配信開始される。

須賀貴匡(すが・たかまさ)。1977年生まれ、東京都出身。1999年に俳優デビュー。2002年の『仮面ライダー龍騎』では、偶然カードデッキを手にしたことから仮面ライダーの戦いに巻き込まれ、それでもライダー同士の戦いをやめさせようとする青年・城戸真司を演じ、多くのファンを獲得した。以後もNHK大河ドラマ『花燃ゆ』(2015年)をはじめとするテレビドラマや、映画、舞台など幅広いジャンルで活躍している。撮影:大塚素久(SYASYA)

『RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』とは、現在テレビ朝日系で好評放送中の特撮テレビドラマ『仮面ライダージオウ』(2018年)のEP21、EP22にも登場した、かつて仮面ライダー龍騎の変身者だった「城戸真司」を主人公に置いたスピンオフドラマであり、2002年~2003年にかけて放送された特撮テレビドラマ『仮面ライダー龍騎』としての完全復活オリジナルドラマでもある。脚本を手がけるのが、『龍騎』のメインライター・小林靖子と共に作品世界を支えた井上敏樹であること、城戸真司役の須賀貴匡をはじめとする『龍騎』オリジナルキャストが多数登場し、かつてのテレビシリーズと同じく"仮面ライダー同士が最後の1人になるまで戦う"という宿命を背負う物語が描かれることなどが明らかにされ、『龍騎』ファン、ならびに「仮面ライダー」ファンを期待にうちふるわせている。

マイナビニュースでは、『RIDER TIME 仮面ライダー龍騎』に登場する、『仮面ライダー龍騎』オリジナルキャストそれぞれに単独インタビューを敢行し、テレビシリーズ終了から16年ぶりに映像作品として"復活"を遂げた『龍騎』ワールドにふたたび出演するにあたっての心境や、新作にかける意気込みを訊いた。

インタビュー第1回はこの人、仮面ライダー龍騎/城戸真司を演じた須賀貴匡である。かつての真司は仮面ライダー龍騎への変身能力を得ながらも、仮面ライダー同士の命の取り合いを防ぐべく悩み苦しむという心優しき青年だった。あれから歳月が過ぎた現在、真司のキャラクターはどのように変化したか、あるいは変わっていないのか。ひさびさに真司を演じる須賀にそのあたりを中心にお話をうかがった。

――昨年、須賀さんは"大人のための変身ベルト"バンダイのCSM「Vバックル」の音声ギミック用として久しぶりに城戸真司の"声"を収録され、マイナビニュースで『龍騎』当時をふりかえるインタビューを受けられていましたね。あのときのお話では「龍騎の新作オファーがあれば引き受けたい」とお話されていましたが、まさかこんなに早く『ジオウ』へのゲスト出演や『龍騎』の新作ストーリーが実現するとは思いませんでした。須賀さんご自身はどのように思っていましたか?

CSMの音声を収録したときは、まったく何も聞いていませんでした。ただ『ジオウ』が始まったころから、周囲の方々から「『ジオウ』に出演しないんですか?」と言っていただくことが多くなり、そのときは「まだそんな話はないんですよ」と答えていましたが、昨年の末に『ジオウ』の出演依頼が来て、そして今年はこのスピンオフでしょう。さっきも松田(悟志:仮面ライダーナイト/秋山蓮)くんと話していたんですけれど、平成仮面ライダー20作目という節目のタイミングで、こんなスピンオフドラマが作られるなんて『龍騎』は恵まれていますよね。

――井上敏樹さんが書かれた台本は、『龍騎』テレビシリーズが放送されていた2002年から17年後の現在を意識して、当時観ていた子どもたちが"大人"に成長したことを見越したような、ぐっとアダルトムードな内容になっている印象です。須賀さんが台本を読まれたときの感想をお願いします。

あっ、今回はこういう切り口で来るんだなと思いました。やっぱり、当時の『龍騎』を書かれていた井上さんだからこそ、僕もすんなりとまた『龍騎』の世界に入ることができたんです。『龍騎』の世界にはさまざまな切り口があって、その異なる"切り方"によって作品を提示することができるのも魅力です。今回、井上さんは「ミラーワールド」という特殊な世界の中でのバトルをメインに置いて話を組まれています。

――監督を務められた柴崎貴行(※柴崎監督の崎は立つ崎が正式表記)さんは、いまや平成仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズで大活躍されているエース監督ですが、『龍騎』当時は助監督として参加されていたそうですね。

当時はセカンド助監督で、最前線で現場をバリバリ仕切られていました。『龍騎』スピンオフの出演が決まったとき、柴崎さんに連絡してみたのですが、そのとき「いま『龍騎』をもう一度第1話から観返して勉強している」とおっしゃっていて、その懸ける思いの強さを感じました。

――『龍騎』テレビシリーズからおよそ17年もの年月が過ぎましたが、須賀さんがふたたび真司を演じるにあたっては「あのころの真司」と「年月を経た現在の真司」とで演じ方がどのように変わりましたか?

まず台本を読んで、このスピンオフ作品がいったい"どの時代"の出来事なんだろうと考えました。今回のお話の中でも、真司は昔と同じく"仮面ライダー同士の戦いを止めたい"と強く思っているんです。しゃべっている言葉や動きなども、ほとんど当時と一緒の印象。いつまでも真司は子どもっぽい性格のままなんですね。しかし、ファンの方たちが"いま観てみたい"のも、まさにそういう真司なんじゃないか。ですから、監督とも相談して、当時と同じボリュームで演じようと思ったんです。ただ、17年前とは僕自身の芝居の仕方がまったく異なっていますから、当時の真司に思いきり"寄せて"いくのではなく、あくまでも現在の須賀貴匡の演技として演じています。

――テレビシリーズの空気を強く感じさせる、真司と蓮が言い争いするシーンなんて、演じられている須賀さんや松田さんにとってもふと懐かしさを感じる部分ではないですか。

そうですね。今回の物語では、殺伐としたライダー同士のバトルシーンの割合が多く、その合間に描かれる変身前の人間同士のやりとり、それぞれの関係性を見せるシーンが少ないのですが、短いながらも蓮と真司との芝居はやっていて楽しかったですね。真司が持っている"憎めないヤツ"感みたいなものが、今回の台本にもしっかりと描かれているので、ちょっとしたことで真司と蓮がいがみあうシーンなど、ファンの方々がご覧になると懐かしく感じていただけるかもしれません。もちろん、僕も同じ思いで芝居をしています。

――ひさびさに「仮面ライダー」の現場に入られて、特に印象に残ったことは何でしょう。

今回は「ミラーワールド」に真司たちが閉じ込められた状態で、生きて外の世界へ脱出するために仮面ライダーが戦う、という設定なんです。そのため、『龍騎』テレビシリーズでは一度もなかった「変身前の真司が、仮面ライダー(変身後)と絡む」カットがあるんです。スーツアクターさんたちと直接芝居で絡むことになり、彼らがどういう思いを持って撮影に取り組んでいるのかがよくわかり、印象に残りました。

――『ジオウ』のときと同じく鏡の中の真司=「裏真司」が今回も登場し、真司の心に辛いものをつきつける役割を担います。ひとり二役で「善」と「悪」を演じ分けるのはたいへんなのではないでしょうか。

表と裏の二面性を出す芝居は慎重にやっていますので、ぜひ注目してほしいところです。まあ、人間誰しもが潜在的に持っている"黒い"部分を増幅したらどうなるか、ということですよね。真司の場合は、ああいうタイプの人間になるぞ、と自分の中で捉えながら演技をしていました。内面の演じ分けもさることながら、興味深かったのは一人二役の撮影手法です。昔とは違い、撮影の技術が格段に進歩していて、こんな場面も"合成"が入るのか!と驚きました。昔から比べると撮影機材も進歩していますし、CGのリアルさなども当時より遥かに優れています。共演の方たちと「当時はこんな機材、見たことなかったよね」なんて話していました。まだ完成作品を観ることができないのですが、最終的にどんな画面に仕上がっているのか、今から楽しみにしています。