米アップルが日本時間3月26日にスペシャルイベントを開催した。

動画配信など新サービスの発表だろうというのが大方の予想だったが、蓋を開けた結果出てきたのは、動画配信サービス「Apple TV+」、定額制ゲームサービス「Apple Arcade」、ニュースサービス「Apple News+」の3つの新サービス。さらにはクレジットカード(に似た何かではなく本当にクレカ)の「Apple Card」まで登場した。バラエティに富む発表内容だったので、少しまとめてみたい。

発表会はアップル本社内にあるスティーブ・ジョブズ・シアター(Steve Jobs Theater)で行われた

Apple TV+

Apple TVアプリで利用できる定額動画配信サービスがこの「Apple TV+」だ。

今回のApple TV+は先行し既に巨大なNetflix、Hulu、Amazonプライムビデオに真っ向から挑むサービスで、アップルの勝算が気になるが、まずはオリジナル番組の魅力で勝負するようだ。以下に同社の発表を引用しておこう。

「オプラ・ウィンフリー、スティーヴン・スピルバーグ、ジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーン、オクタヴィア・スペンサー、J・J・エイブラムス、ジェイソン・モモア、M・ナイト・シャマラン、ジョン・M・チュウなど、世界で最も著名かつクリエイティブなアーティストたちによるまったく新しいプログラムをご用意しています。」

Apple TV+に参加するスティーヴン・スピルバーグ監督がゲスト登壇

ちなみにApple TVアプリ自体も今年5月にアップデートする予定で、iOS端末だけでなくMacでも、さらには他社のスマートTVや、競合するAmazonのFireTVでも利用できるようになる。これによりApple TVアプリがあれば、他社のものも含めて定額動画配信の視聴環境が手に入るというわけだ。

Apple TV+のサービス開始は今年の秋。料金と提供地域もその頃に公開する予定だという。

Apple Arcade

「Apple Arcade」はゲームのサブスクリプションサービス。簡単に言えば追加課金ナシの定額制でゲーム遊び放題というサービスだ。iOS端末やMac、tvOS機器に対応し、リビングで遊んでいたゲームの続きはiPhoneで、といったデバイス間でのゲームデータ共有もできる。

問題はどんなゲームがラインアップされるのかだが、Apple Arcadeに参加するゲームデベロッパーとして名前が挙がっているが、Annapurna Interactive、Bossa Studios、カートゥーンネットワーク、Finji、Giant Squid、KleiEntertainment、コナミ、LEGO、ミストウォーカー、SEGA、Snowman、ustwogamesなど。

SEGAと言えばソニック・ザ・ヘッジホッグ。Apple Arcadeへは今年後半に「Sonic Racing」を提供予定

著名クリエイターの手による、100タイトル以上のオリジナル新作ゲームを独占提供するともしており、ファイナルファンタジーの生みの親として知られる坂口博信氏や、シムシティのウィル・ライト氏らが新作に着手中というアナウンスがあった。アップルはApple Arcade用ゲームの開発費を助成するプログラムを用意し、クリエイターを積極的に囲い込もうとする姿勢も見せている。

提供開始は今年の秋で、日本での提供は明言されていないが、150か国以上での提供を予定しているというので期待したい。

Apple News+

今回の「Apple News+」は、既存のiOS向けニュースアプリ「Apple News」をバージョンアップしたもの。

ウェブニュースや300誌以上の雑誌に加えて、新聞紙面も定額でまとめて購読できるという特徴がある。購読者に合わせて厳選されたニュース記事を提供する新しいサブスクリプションサービスだとしているが、キュレーションやレコメンドでアップルならではの機能が盛り込まれているようだ。

雑誌と新聞が定額で読み放題の「Apple News+」

サービスの定額購読料は9.99ドルからで、米国、カナダ、英国、オーストラリアで展開する。今のところ他の国・地域向けでサービスを提供する情報はないが、国ごとの出版社との契約負担を考えれば日本向けはまだ期待できないかもしれない。

Apple Card

今回の発表で最も意外だったのは「Apple Card」だろう。イシュアを担当するパートナーとしてゴールドマン・サックスと組み、アップルが自社ブランドのクレジットカードを発行する。

Apple Cardの特徴は利用開始までの手続きのシンプルさで、iPhoneからその場で発行でき、そのままApple Payに登録してすぐさま利用できる。もちろん、Apple Payが使えない店舗用などに物理的なクレジットカードも発行できる。

クレジットカードの「Apple Card」。シンプルな券面のチタンカード。高級感が凄いが年会費無料

物理的なカードの方も(特に見た目が)独特で、カードフェイスにデザインされているのはアップルの林檎マーク程度で、カード番号の表記すら無く、色もシルバー基調に揃えられたシンプルで高級感のあるものになっている。しかもプラスチックカードではなく、チタン素材のメタルカードになっていて、気分はまるでアメックス・センチュリオンだ。

チタンカードなのに年会費は無料、還元率は2%(Apple Storeでは3%、物理カード決済では1%)とかなり条件の良いクレジットカードだけに、欲しい人は世界中にいそうだが、残念なことに当初の提供は米国向けのみで、今年の夏に登場予定。

(笠原光)