定年後は生命保険や医療保険といった保険契約を見直してみましょう。会社の団体保険から外れることもありますし、保険が満期になるケースもあるためです。定年後の保険見直しのポイントをまとめました

◆老後の生命保険は現役時代と同じだけ備えておくべき?
定年後はライフスタイルや収入形態が変わるため、お金の使い方も変わってきます。生命保険や医療保険も同様で、必要保障額はライフステージごとに変わっていきます。

一般的には子どもの独立、時間の経過などで必要保障額は減っていきますから、保障を少なくしていくのは正しい考え方です。しかし、健康状態に不安が出てくる年齢でもあります。平均寿命が延びているいま、こうした視点も必要です。

定年後の生命保険や医療保険の備え方、見直し方を考えてみましょう。

◆保険を見直す前に、定年後の健康保険を確認
民間の生命保険を見直す前に、そもそも定年後の社会保障(健康保険や年金など)でどこまで保障されているのかを知る必要があります。健康保険などで医療費負担がどのようにカバーされているかを確認しましょう。

◇健康保険の自己負担割合
現役時代は国民健康保険や勤務先の健康保険に加入していたため、医療費は3割の自己負担で済んでいました。定年後は国民健康保険、任意継続被保険者、あるいは同居している家族の被扶養者などになります。

高齢になると医療費負担が心配になるでしょうが、69歳までは現役のときと同様に3割負担です。70~74歳までは2割負担、75歳以上になると1割負担となります。

ただし現在では、70歳以上でも現役世代並みに所得があれば、3割負担に変わっています。以前のように、定年退職すれば収入に関わらず医療費負担は軽減される時代ではなくなっています。

◇高額療養費制度
病気やケガをして手術や入通院で医療費がかかったとしても、高額療養費制度があるため、実際の医療費負担は思ったよりも少なく済みます。ただし、その高齢者の高額療養費制度は2017年8月に改正、続けて2018年8月に再度改正されています。

改正内容を簡単にお伝えすると、高齢者でも収入の高い人は負担が増えるということです。健康保険の自己負担割合と同じく、収入のある人は現役の人と同じような負担に変わりました。

◆定年後の家族の状況を確認
定年後の自分と家族を取り巻く状況・環境についても考えてみましょう。最近はライフスタイルも様々です。

例えば、晩婚で定年後も子どもが独立している年齢になっていないケースもあります。他にも、所有している資産、就業の状況、将来に受け取る年金額なども含めて、総合的に判断することが必要です。

一般的に保障は減らしていってよいのですが、子どもの独立、住宅ローンの返済といったライフイベントが定年後に重なる人は、それらも考慮しなければなりません。裏を返せば、すでに子どもが独立していて所有資産が多いなら、必ずしも生命保険・医療保険で備えなくてもよいといえます。

◆定年後に必要な保障額の計算方法
老後に備えておくべき保障は次の2つをもとに計算します。

●1.今後の生活費(=支出)

遺族の生活資金+別途必要資金(※)

●2.今後の生活資金(=収入)
遺族年金などの社会保障+資産+就業収入・その他収入など

(※)葬儀費用など他に必要なものがあれば上乗せ

1から2を差し引いて不足があれば、それが必要保障額となります。見直しの結果、生命保険を減額してもよいとわかれば、その分は解約と同じ扱いですから、保険料負担は軽くなります。

一般的に年齢を重ねていくほど必要保障額は減っていきますので、保障を減額していくのも1つの方法です。また死亡保障の保険でも定期保険のように掛け捨てなのか、終身保険のように貯蓄性があるのかによって、できる対応は異なります。

例えば、定期保険なら保障の減額や解約、終身保険は貯まったお金を使って年金保険や介護保険に振り替える、一部解約などして解約返戻金を受け取ることもできます。その上で、配偶者などにいくら遺す必要があるのか、あらためて考えてください。

なお、2018年4月より掛け捨ての定期保険などは標準生命表の改定(死亡率が下がった)で保険料が安くなりました。

◆勤務先の団体保険は継続できるなら選択肢
勤めの人は勤務先の団体扱いの生命保険に加入していた場合、定年退職にともなってその加入から脱退することもあります。その企業によって取扱いは様々で、定年退職したら脱退する、OB・OGといった扱いで違うかたちで保障が続けられるなどがあります。

継続できるなら保険料負担は安いので、必要なところだけ利用できないか考えておきましょう。

◆すでに加入している保険の取扱いのポイント
高齢になってからの生命保険・医療保険などの加入は課題が2つあります。具体的には次の2点です。

・健康上の問題
・経済上の問題

1つは健康上の問題で保険に加入できない、あるいは条件がつくことがあることです。もう1つは高齢になると保険料が高いため家計負担が重くなることです。

すでに加入済みの保険がある場合、不要なら無理に続ける必要はないので解約すればいいでしょうが、安易に解約すると、加入し直すときに少々ハードルが高くなります。

いまは引受基準緩和型といって、高齢者でも告知が緩く加入しやすい保険もあります。保険料は普通のものより割高に設定されていますので注意してください。

◆定年後の生命保険を見直すポイントまとめ
以上をふまえ、現在加入している生命保険や医療保険、家庭と家計の現状を確認してください。

●保険料の払い方
終身払いか、有期払い(一定期間で払い込みが終わる)か

●貯蓄性の有無
積み立て(貯蓄性あり)か、掛け捨て(貯蓄性なし)か。

●保障期間

終身型(保障が一生涯続く)か、定期型(一定期間で保障が終わる)か

細かい内容は専門家に見てもらわないと分からないことも多いでしょうが、これらのポイントは最低限押さえておきましょう。貯蓄性の保険については年齢を問わず、低金利の影響であまり優位性はありません。

多くの生保が外貨などにシフトしていますが、加入については優先順位が高いというものではないでしょう。検討している場合は、かかるコストや為替等をよくチェックしてください。

定年後に死亡保障や医療保障などが不足するケースがあるなら、新規に生命保険等に加入することも1つの方法ではあります。しかし定年後の年齢で新たに加入しようとすると、保険料がかなり高いうえに、そもそも健康状態を理由に加入を断られる可能性もあります。

必ずしも生命保険や医療保険の加入にこだわる必要はありません。社会保障のおかげで老後の医療費は考えているほど負担はありませんから、保険ありきで考える必要はありません。

もちろん、今後数十年先の公的医療保険制がどう変わるか分かりませんから、定年を迎えて何年も経っている人、もうすぐ定年の人、定年までずっと先の人で考えること・すべきことは異なります。

定年後の生命保険についても、個々の状況で考え方や対応方法は色々変わってきます。既存契約の保険があるなら、それをなるべく活かしつつ、自分の場合はどうかと考えて実行することが、損が少なくなる一番の方法です。

文=平野 敦之(マネーガイド)