損害保険ジャパン日本興亜は3月25日、米シリコンバレーの防災スタートアップ企業であるOne Concern、ウェザーニューズと防災・減災システムの共同開発に関する業務提携を締結した。なお、損保ジャパン日本興亜と熊本市は昨年8月に「地域防災力向上のための相互協力に関する協定」を締結しており、今回の実証は本防災協定に基づいた取組みとなる。

近年、国内では大規模な自然災害が多発しており、これまで蓄積してきた経験則や予測手法が通用しなくなるなど、新たな対応策検討の必要性が高まっており、損保ジャパン日本興亜は地域防災力の向上に貢献するため、One Concernと業務提携し、AI技術を活用した防災・減災システムの共同開発に着手した。

One Concernは、AIなどのテクノロジーを活用した災害予測と防災・減災システムを提供しており、すでに米国ではロサンゼルス市、サンフランシスコ市、シアトル市などの自治体が同システムを導入している。今回、3社は日本における地域防災力の向上の第1弾プロジェクトとして、熊本市において3月から独自の防災・減災システム開発に向けた実証を開始。

同システムでは、地域防災に関わる気象や建物などの各種データとAIを活用し、洪水・地震などの災害の発生前・発生時・発生後における正確な被害予測サービスとリアルタイムな被害状況の把握がブロック(区画)単位で可能になるという。

  • システムの概要

    システムの概要

災害発生前はAI技術の活用により、災害危険性と地域の脆弱性を評価し、動的シミュレーションを用いた正確な被害予測シミュレーションができる。ユーザーは、これらのシミュレーションに基づき、効果的なBCPプランや防災計画の策定・見直し、自衛消防団・地域住民が参加するリアルな防災訓練の実施、災害時における避難場所や避難方法の見直しなど、災害発生前における防災・減災対策の強化を可能としている。

また、災害発生時は災害直後に提供される被災地域の被害予測サービスにより、リアルタイムで被害状況の把握が可能となり、地域全体が受ける損害のインパクトが明らかになるため、ユーザーはこれらの情報をもとに災害の被害地域・被害規模を正確に把握し、高齢者や子供を優先的に救助するなど、災害発生時における効率的・効果的で迅速な初動対応の実現が可能となり、被害を極小化することができるという。

さらに、災害発生後は被害状況の詳細を収集し、実際の被害データとして被害予測サービスに組み入れることで、地域の実情に合ったリアルタイムで正確な被害状況の把握が可能となり、ユーザーはこれらの情報をもとに災害からの早期回復へ向けた適切で効果的な復興対策を検討することができ、災害発生後の地域レジリエンス(復元)力の向上につながるとしている。

  • 洪水と自身による被害予測画面のイメージ

    洪水と自身による被害予測画面のイメージ

熊本市では3月からの実証を経て、9月から日本独自の防災・減災システムの利用開始を予定し、3社は熊本市と連携することで、同システムを活用した「防災・減災のまちづくり」実現の貢献に向け、取組みを強化していく。今後、同システムと保険商品とを連動させたサービスや、SOMPOホールディングスグループでリスクコンサルティング事業を展開するSOMPOリスクマネジメントのノウハウも活用したBCPコンサルティングサービスを進化・充実を図る考えだ。