半導体市場調査会社の仏Yole Développementは、CMOSイメージセンサを搭載したカメラモジュール(CCM)業界の市場調査を発表した。その結果、2018年に271億ドル規模だった同業界は、今後、年平均成長率9.1%で成長し、2024年には457億ドルに達すると予測している。また、数量ベースでは、年率7.8%で成長すると予測している。

AI活用や5G対応によるカメラモジュールの高付加価値化で平均単価が上がり、金額ベースの成長率のほうが数量ベースよりも高くなる見込みである。市場規模の拡大は、主にスマートフォンや自動車に搭載されるカメラ数が今後継続的に増加するためとしている。特に車載向けカメラモジュールの市場シェア(金額ベース)は11%と2桁台に入ってきた。

  • CMOSカメラモジュール業界の市場規とそのセグメント別内訳

    CMOSカメラモジュール業界の市場規とそのセグメント別内訳(2018年および2024年の比較) (出所:Yole Développement)

カメラモジュールは、CMOSイメージセンサ、レンズ、ボイスコイルモーター(VC)、イルミネーションサブシステム、そしてこれらのアセンブリ(組み立て)などで構成されており、使用されている材料もシリコン、ガラス、ポリマー、プラスティック、金属、基板材料と多岐にわたる。

同業界内で最大のセグメントはCMOSイメージセンサ(半導体チップ)であり、2018年の市場規模は123億ドルだが、今後も年平均成長率9.2%で成長し、2024年には208億ドルに達する。2番目に大きな市場がカメラモジュール・アセンブリで85億ドル(2018年)、レンズセット(41億ドル)、ボイスコイルモーター(23億ドル)、イルミネーション・サブモジュール(0.7億ドル)と続いている。なお、3Dセンシングの照明に関連するイルミネーション・サブモジュール市場は年率42.6%という驚異的な成長を遂げる見込みで、5年後の2024年には現在の9倍の61億ドルに達するとYoleは予測している。これはスマートフォン、コンピュータ、タブレットおよびデジタルカメラの出荷量の減少を補うという。

  • CMOSカメラモジュール業界のサプライチェーン

    2018年時点におけるCMOSカメラモジュール業界のサプライチェーン。上から材料、部品、組立ておよび検査(KGD=Known Good Dieは良品であることが分かっている実装前のベアチップの意味) (出所:Yole Développement)

CMOSカメラモジュール業界(イメージセンサ、モジュールアセンブリ、レンズセット、ボイスコイルモーターのアセンブリを含む)の企業売上高ランキング(2017年および2018年)を見ると、年間売上高が10億ドル以上(2018年)のトップグループ企業が12社存在し、イメージセンサとレンズセットのトップサプライヤ、およびモジュールアセンブリのトップ企業群が顔をそろえる格好となっている。その下に、2.5億ドル以上10億ドル未満の企業が12社存在し、すべてのカテゴリーの中堅企業が顔をそろえている。さらに年間売上高が2.5億ドルに満たない企業群は、レンズセットあるいはボイスコイルモータ―のサプライヤである。

業界トップは、ダントツの売上高を誇るイメージセンサメーカーのソニーで、2~4位には、カメラモジュールアセンブリを担当する韓LG Innotek(LGグループ)、韓Samco(Samsungグループ)、中Foxconn/シャープ(台湾の鴻海精密工業グループ)が肩をならべている。5位(イメージセンサとしては2位)は韓Samsungであるが、ソニーのイメージセンサ売上高の半分にも達しないうえ、売上高が減少気味である。イメージセンサのセグメントでは、3位に中Omnivision、4位にSTMicroelectronics、5位にON Semiconductorがそれぞれ位置づけている。車載イメージセンサに限れば、ON Semiconductorが過去からの車載向け実績で圧倒的なシェアを握っているが、イメージセンサ全体では5位に甘んじている。

  • CMOSカメラモジュール関連企業の売上高ランキング

    CMOSカメラモジュール関連企業の売上高ランキング。4種類のカテゴリー別に色分けされている (出所:Yole Développement)

  • 2018年のモバイル向けCMOSイメージセンサメーカーの市場シェア

    2018年のモバイル(スマートフォン、携帯電話)向けCMOSイメージセンサメーカーの市場シェア、カメラ種類別の市場シェア、および主要なカメラ搭載スマートフォンサプライヤ (出所:SystemPlus Consulting/ Yole Développement)

なお、カメラモジュールの中で、現在の市場規模は小さいが、今後、最も成長が著しく期待されているセグメントは、前述のイルミネータと並んでウェハレベルオプティックス(WLO)だとYoleは予測している。

WLOは従来の伝統的な光学コンポーネント製造技術とは異なり、半導体プロセスを使用してガラス製ウェハ全体を使ってレンズを一括バッチ処理によりウェハレベルで製造する方法である。光学レンズ間の位置精度をシリコンデバイス並みのナノレベルに保て、微小レンズの均一性も向上でき、将来の標準化された光学レンズの組み合わせにとって最適な選択となる可能性が高いという。WLOは今後、年平均成長率55%という驚異的な成長により、、2024年には市場規模は18億ドルを超えると予想されている。2024年時点のWLOの用途別売上高内訳は、モバイル向けが9割、コンシューマ向けが1割弱、車載、医用、産業用が合わせて数%程度で、スマートフォンなどのモバイル向けのレンズ製造法ということができよう。

  • WLO市場

    ウェハレベルオプティックス市場規模の変遷および今後の急成長予測 (出所:Yole Développement)