思いを実現するために努力するのが人生ですので、若くても「住まいを取得したい」という思いを実現して何も悪いことはありません。

  • 新社会人が住宅購入を考えるには

    新社会人が住宅購入を考えるには

ただし、住まいは住み手の生命と財産を守る大切な資産であり、選択はこれからの人生を考えて慎重な検討が必要です。また多大なローンを借り入れて手に入れるのであれば、そのリスクも考えなければなりません。社会経験が少ない分、どのように補って考えればよいでしょうか。

若くして住まいを取得するケースとは

若くして住まいを取得したいというケースはどのようなケースがあるか、経済的側面から考えてみましょう。下記の他にもいろいろあるとは思いますし、経済的側面以外にも「卒業と同時に結婚した」「子どもが生まれた」「介護が必要な家族がある」など、様々な理由が付加されることが多いと思います。

A: 学生時代に起業して、安定した収入が継続して確保できている
B: 学生時代にアルバイトや正業で、一定の貯蓄がある
C: ローンが借りられるのであれば、家賃の支出の無駄を避けて早めに住まいを取得したい
D: 遺産を相続した(現金)
E: 相続した遺産(田舎の不動産など)を売却して、勤務地に住まいを買いたい
F: 親などから非課税の住宅取得資金の贈与を受けられる
G: 親と親子リレーローンを借りて共同で家を取得する

上記の経済的ケースにはいくつかのグループに分けられると思います。第1はAやBのケースのように、若くても自力で住まいを取得しようとするグループです。第2はCのように考えるグループです。第3はGのように社会経験豊富な親との共同作業のケースです。第4はD・E・Fのように相続や贈与をうけ、住まいの取得に必要な資金を受け取ったケースです。

ここで検討したいのは第2のケースと第4のケースです。第1のケースは若くてもしっかりした人生設計があると考えられ、むしろ早くに住まいの取得する意義を熟知しているはずです。第3のケースのように親などとの共同作業のケースは親の経験が生かされます。

自動車保険なども21歳、26歳でラインが引かれ、事故率が高いという統計値があり、高めの保険料となっています。判断力が未熟であれば、住宅取得に関しても同様のことが言えると思います。若い時の住宅取得はメリットもありますので、しっかりした人生設計を立て、若くて住宅取得に臨むリスクを少なくする工夫が大切です。

若いときの住宅取得のメリット・デメリット

若い間の方がリスクは少なくできる一面もあります。例えば、「早くに完済できる」「若くて病気等のトラブルが少なく安定してローンの返済ができる」「何らかの理由で離職しても次の仕事が見つかりやすい」「子どももいないか小さいかで、教育費の負担がない」など有利な点が多くあります。

それでは不利な点はどのようなものがあるでしょうか。人生経験が少なくなることによる物件選択や資金計画などが未熟であるほかに、「勤続年数が少ないのでローンが借りられない」「収入が少なく貯蓄もまだ少ないので、買える物件がないか、条件が悪くなる」「新社会人なので、転勤などの見通しが不確定」「今いる業界や会社が自分に適していて長続きするか不透明」などいろいろ考えられます。

住宅は一般的な日本人にとって最大の資産であり、住み続けたり、買い替えたりと一生活用し続けるものです。今現在の住まいの選択が今後の人生に大きく影響するのです。

人生設計がしっかりできているか

若さのメリットを生かし、デメリットを克服するにはしっかりした人生設計を立てることが大切です。と言っても新社会人であれば、これからの人生には夢がいっぱいで、なんの障害も感じないかもしれません。ここでいう人生設計とは、自分が今後一生の間に何がしたいかを整理し、それを実現するためにはどのような手立てと資金計画が必要かをクリアにするものです。

ファイナンシャルプランニング的な手法としてはいくつかの方法があります。最初に「なぜ今住宅を取得したいか」「それに対する不安点・問題点は何か」をランダムに書き出す手法です。自分の本心をあぶりだす手法の一つです。A1の紙一枚に思いつくまま書いていきます。矛盾していることを書いても大丈夫です。行き詰まったら中断し、後日(1週間後、1カ月後でもOK)見直して、追記したり、不要と思い直したものを二重線で削除したりしていきます。必ず「これでよし」と思われるものが出来上がります。最初に考えていたのと違う展開になることも珍しくありません。

次には生涯収支表(ライフプランニングシート)を作成し、収入と支出と貯蓄高の推移を算出してみるとよいのですが、結婚もまだであればなかなか難しい作業となります。そのために実践的に頭金を用意し、ローンが借りられ、リスクを回避する手立てを考えてみましょう。

住まいの取得に向けての手順

とにかく住まいを取得しようと思ったら、徹底的に節約し少しでも多く資金を用意しましょう。実績を作るためにしっかり定期的に預金していくことが重要です。親や祖父母からの贈与が受けられるとしても、自分自身の努力の実績は重要です。

次に購入する物件を想定します。具体的な案件があればそれをもとに資金計画・返済計画を立てます。当面は小さな物件を購入し将来買い替える予定であれば、それも併せて計画します。

その計画をもとに、ローンが借りられるか、返済が可能かどうかを検討します。住宅金融支援機構のホームページでローンシミュレーションができます。銀行のホームページでも可能です。頭金の必要額や様々なガイドライン、貸出可能金額、諸費用のおおよその金額等もネットで調べられますので、それを目途に計画を修正していきます。

最後に、給与が少なくなったら、転勤になったら、病気になったら、結構してより広い住宅が必要になったらなどの考えられるトラブルが生じたときはどうするかを考えます。そうしたトラブルを切り抜けるには売却や賃貸できる立地の良い物件が必須となります。万一の場合は一時的に親などから借りたり贈与を受けたりできるか親と事前に確認しておきましょう。

ある程度自分の中で可能な計画と思われるものができたら、身近な銀行などで具体的に相談してみましょう。新入社員では無理と言われるかもしれませんが、見通しは立てることができます。

「新入社員」と言っても、その実態はさまざまです。学生時代から4年間その会社でアルバイトし、そのままその会社に就職して、学生時代のアルバイト代を堅実に貯蓄し、就職してからも毎月貯蓄額を増やして、一般的な頭金額を確保しているケースと学生時代はアルバイトをしても自分の楽しみのために消費し、就職してからもあまり貯蓄がないケースでは全く違います。

金融機関に住宅ローンの相談した段階では勤続一年未満であっても学生時代のアルバイトと貯蓄を評価してくれるかもしれません。それに加えて新入社員でありながら住宅取得する意義と学生時代からそのために準備してきたことを金融機関に説明できれば、新入社員で住宅取得も可能かもしれません。親や祖父母からの支援があれば、資金面でゆとりができるだけでなく、親の了承も得ていることになりますので、より可能性は高くなります。

トライして無理とわかれば計画を遅らせて、その間資金を着々プールしながら時期を待てばよいだけです。不用意に信用情報機関に登録されないように、支払いを遅延したりしないように、またむやみにローンで買い物をしたりせず、日常管理することも必要です。

■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。