「老後資金は3000万円」と言われますが、実際、60歳以上の世帯はどれくらい貯蓄があるのでしょうか。そして、老後資金はいったいいくら必要なのでしょう。統計をもとに算出していきましょう

◆老後資金は3001万円~5000万円が26.1%
2017年9月に株式会社クラウドポートが、20代から60歳以上の男女583 名(20代121名、30代120名、40代110名、50代112名、60代以上120名)を対象に行った「老後資金に関するアンケート調査」によると、87%の人が老後資金に不安を持ち、準備は30歳代から、と考えています。詳しく見ていきましょう。

◇老後資金に必要な金額のイメージは?
3001万円~5000万円が最も多く26%、次いで1001万円~3000万円が19%です。1億円以上という人も9%います。

・1000万円未満……4.8%
・1001万円~3000万円……18.9%
・3001万円~5000万円……26.1%
・5001万円~7000万円……13.6%
・7001万円~9000万円……2.1%
・1億円以上……8.7%
・わからない(イメージできない)……25.9%

◇老後資金は何歳くらいから準備しておく必要がある?
一般的には「できるだけ早く、少なくとも40歳になったら」と言われていますが、「30歳代で準備」と考える人が32%で最多です。「わからない」も17%います。

・30代……31.7%
・40代……21.3%
・50代……10.6%
・わからない……17.0%

◇老後資金は何歳くらいまでに用意しておく必要がある?
60歳定年が一般的なので「60歳までに用意」が50%です。「わからない」も約16%います。

・50歳……12.9%
・60歳……49.7%
・70歳……8.7%
・わからない(イメージできない)……15.8%

◇老後資金のために今準備していることは?
他のアンケート調査でも似たような結果が多いのですが、「準備していることはない」が66%です。

◇具体的にどんな準備をしている?
90%近くが貯蓄で準備し、年金44%、投資信託23%と続きます。今後は、優遇税制が設けられている個人型確定拠出年金(iDeCo)やNISAを利用する人が増えて、順位が変わる可能性があります。

・貯蓄……87.4%
・年金……43.9%
・投資信託……23.3%
・株……22.7%
・FX……3.5%
・その他……2.5%

◆65~90歳の必要額は約2200万円
では、退職後の生活費として公的年金以外に必要とする金額を、「家計調査報告(家計収支編)―平成29年平均速報結果の概況―」(総務省統計課)の高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の家計収支をもとに計算してみましょう。

・収入……20万91989円(うち社会保障給付は19万1880円)
・消費支出……23万5477円
・非消費支出……2万8240円
・収入-支出……▲5万4519円

社会保障給付=公的年金等とすると、毎月の公的年金では不足する金額は「社会保障給付-(消費支出+非消費支出)」=19万1880円-(23万5477円+2万8240円)=▲7万1837円です。65歳リタイア後の25年間に必要な生活費は約2200万円、30年では約2600万円になります。

■老後期間25年(65歳以降)
7万1837円×12カ月×25年=2155万1100円

■老後期間30年(65歳以降)
7万1837円×12カ月×30年=2586万1320円

◆60歳でリタイアする場合はいくら必要?
60歳でリタイアする場合、90歳までの30年間に必要とする老後資金はいくらになるでしょう。同じ家計調査の高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)と高齢無職世帯(2人以上の世帯で世帯主が60歳以上の無職世帯)の家計収支をもとに算出すると、高齢単身無職世帯は1700万円程度、高齢無職世帯は2200万円程度になりました。

◇単身者
・社会保障給付……10万7171円
・消費支出……14万2198円
・非消費支出……1万2544円
・不足分……▲4万7571円

→老後期間30年(60歳以降)……1712万5560円
→老後期間35年(60歳以降)……1997万9820円

◇高齢無職世帯
・社会保障給付……17万5799円
・消費支出……23万7682円
・非消費支出……2万7952円
・不足分……▲6万1046円

→老後期間30年(60歳以降)……2197万6560円
→老後期間35年(60歳以降)……2563万9320円

リタイアが60歳でも65歳でも、90歳まで生きるために必要な老後資金は2000万円程度になりました。一般的にいう「老後に必要な資金は3000万円」との差は1000万円程度です。その理由は?

◆老後資金3000万円と「改正高年齢者雇用安定法」
これまでの計算は、日常をつつがなく生活するための資金です。日常生活資金以外に、住宅のリフォームや医療・介護費用、子どもへの援助費用、葬儀費用などの資金も必要です。それらを含めた金額が「必要な老後資金は3000万円」なのです。

この一人歩きしている「老後資金3000万円」は「60歳で定年退職して平均余命まで生きる」を想定した数字です。前出の計算は、「65歳でリタイアし老後期間は『平均余命+5年』」と想定したものですが、それでも生活資金2000万円、予備資金1000万円、合計3000万円あればほぼOKです。

原則65歳までの継続雇用を企業に義務づけた「改正高年齢者雇用安定法」の施行からほぼ4年が経過した2017年6月1日、定年退職到達者の継続雇用は84.1%、継続雇用を希望しなかった人が15.8%。希望すればほとんどが雇用される状況です。

2016年の65歳以上の雇用者数は399万人。内訳は、65~69歳272万人、70~74歳90万人、75歳以上37万人です。2017年の65歳以上の雇用者は26万人増加して425万人になりました。「リタイアは70歳」という時代が近づいています。

リタイア年齢が遅くなるということは、「老後期間が短くなる=必要な老後資金額が減る」ということです。将来は一生涯現役となり、「老後資金」という言葉はなくなるのかも知れません。

文=大沼 恵美子(マネーガイド)