WOWOWのドラマ「連続ドラマW 絶叫」で主演を務める尾野真千子さん

 女優の尾野真千子さん主演のドラマ「連続ドラマW 絶叫」(水田成英監督)が、WOWOWで24日にスタートする。葉真中顕さんによる小説を映像化した今作は、ごく一般的な家庭に生まれた普通の女性が、自分の居場所を作るために、やがて保険金殺人に手を染めていく姿を描いたサスペンス作だ。主人公の鈴木陽子を演じる尾野さんに、陽子に対する思いや共演の安田顕さんについて聞いた。

 ◇切り替え上手は数少ない特技のうちの一つ

 尾野さんは、台本を読んだときの感想を「とにかく、心が痛かったんです。つらい台本だなあと思って。救われないというか……」と話し始めた。だが、陽子を演じながら心を「持っていかれることはなかった」という。それもこれも、「今までやってきた中にもつらい役はたくさんありましたから、いつの間にか(自分と役の)切り替え上手な役者になりまして。特技です。数少ない特技の中での(笑い)」と自身が“役を引きずるタイプ”ではないこと明かす。

 陽子は、決して愚かな女性ではない。むしろ頭のいい女性だ。しかし道を踏み外し、転落していく。そのきっかけを尾野さんは、陽子が小さいころ、どんなに努力をしても、「親に認めてもらえなかった」ことを挙げる。そして、「親が認めてあげなければいけなかったのにそうしなかった。そこからこの話は始まっているんです」と指摘する。

 ◇安田顕は「引き寄せるものを持っている」

 大人になった陽子は上京し、生命保険会社のセールスレディーの職につく。成績をあげようと必死になるが、そこでも努力は報われない。むしろ信じた人に裏切られ、一層心は冷え切っていく。そんな陽子の前に現れるのが、安田さん演じる神代武だ。神代は、NPO法人の代表とは名ばかりで、実はホームレスを囲い込み、生活保護費を奪う悪徳ビジネスを行っている腹黒い男だった。それでも陽子は、「自分が今まで掛けてもらいたかった言葉を掛けられ、信じたい人に言われたい言葉を言ってくれる」神代に引き寄せられていく。

 このインタビューが行われたのは1月下旬。撮影が始まってまだ間もないことから、神代役の安田さんについて尾野さんは、「今はまだ、それほど一緒にやっていないので、どんな人か分かりません。謎ばかりです(笑い)」と言いつつ、「でも、お芝居はとても面白いし、楽しい。提案もしてくれます。引き寄せるものを持っていらっしゃいますし、ついて行っていいかなと思っちゃう人です。なんかね、持ってますね。いやらしい人ですね(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに語る。

 ◇陽子の気持ちは「理解できる」

 尾野さんは陽子に対して、「共感できる部分と共感できない部分がある」という。「私がなぜ共感しないかというと、(人を)殺す気持ちが分からないからなんです。でも、この女性がこうなり得るかもしれないという気持ちは、多少分かるというか、理解できるところがあります」と説明する。その思いから導き出されたのは、次のような思いだ。

 「家族の中で普通にしゃべっているかもしれないけど、もしかしたらすごく追い詰められている人がいるかもしれない。友達の中でもそういう人がいるかもしれない。信頼してもらえず、もしかしたら違う道に行ってしまうかもしれない。だからこの作品で、普通の人がこんなことになってしまう、そういう気持ちを伝えたいと思います」と真摯(しんし)に語る。

 そして「自分だってそうなり得るかもしれなかったと考えると、(陽子のような人が)身近にいるかもしれないと思えるんです。何もしてあげられないかもしれないけれど、もしかしたら、『ありがとう』の一言でその人は救われるかもしれない。そう思うと、ちょっと、周りを見てみようかなという気持ちになるんです」と続け、「ですから、皆さんも一緒に周りを見てみませんか。それに気づいてみませんか」とメッセージを送った。

 ドラマは、葉真中顕さんによる同名小説。発端は、アパートの一室で見つかった女性の遺体だった。遺体は鈴木陽子、36歳のものと分かるが、現場に立ち会った刑事の奥貫綾乃は、部屋の状況に違和感を覚え、陽子の生い立ちを探り始める。すると、陽子の、父の失踪に始まり、借金、風俗嬢、保険金殺人と、壮絶な道のりが浮かび上がってくるというストーリー。綾乃を小西真奈美さんが演じるほか、安田さん、酒井若菜さん、要潤さん、麻生祐未さんらが出演する。24日からWOWOWプライムで毎週日曜午後10時に放送。全4話で、第1話は無料放送。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)