皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後資金で悩む60代女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆老後資金の運用、なかなか利益が出ません
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後資金で悩む60代女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
ロクさん(仮名)
女性/会社員/61歳
愛知県/持ち家・一戸建て

◇家族構成
一人暮らし

◇相談内容
若いころきちんと働いていなかったので、将来の年金は少額です(月額9万円程度)。1人なので、老後資金としてどのくらい用意したらよいのか、また、資金の運用先(金融機関の方の言うとおりにしていましたが、利益を生まず、損をする傾向にあるので)をどのように選択したらよいのかアドバイスをお願いします。

◇家計収支データ
「ロク」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)定年について
基本的に定年はないが、環境・状況を考えるとあと2年くらいと考えている。退職金は望めない。長く働いた方がいいことは理解しているが、「そうすると、退職時から自分の意思決定や体が動かなくなるまでの時間が短くなることであり、自由な時間がないことになるので、金銭的な面とバランスがどうなのか知りたい」とのこと。

(2)ボーナスの使いみちについて
基本的には全額貯蓄。

(3)加入保険の保険料の内訳について
1.医療保険=保険料49万4000円(年払い)
2.三大疾病保険=払い込み終了
3.介護保険=払い込み終了
4.終身保険=保険料4万8731円(年払い)
5.個人年金保険もその他にあり

(4)投資商品の評価額の増減について
国内債券 300万円(5万円増)
外国債券 810万円(50万円減)
投資信託 355万円(47万円減)
外貨系の金融商品 75万円
REIT 300万円(200万円減)

(5)金融資産について
両親から不動産と預貯金2000万円を相続。あとは自分で貯蓄。

◇FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 生活費を今の倍にしても問題なし
アドバイス2 これからは自分のために時間を使う
アドバイス3 これ以上、投資比率は上げない

◆アドバイス1 生活費を今の倍にしても問題なし
ご相談の老後資金については、基本的にはまったく心配の必要はありません。よほど大きな支出がない限り、十二分だと言えます。仮に、あと1年後に退職し、以後、働いて収入は得ない=完全リタイアするとします。その間、毎月約7万円にボーナスを全額貯蓄できるとすると、計159万円。退職金はないとして、あと、個人年金保険の総支給額が840万円(税引き前)。実際の支給は65歳と70歳からですが、手持ち資金に加算すると、ほぼ1000万円。今ある金融資産が8390万円ですから、投資商品の評価額が変わらないとすれば、総額9390万円が用意できる老後資金となります。

収入として退職後、公的年金の老齢厚生年金部分は年齢的にすぐ受給できると思いますが、受給額が不明ということと、少額であるため、便宜上、65歳から月額9万円とします。また、毎月の生活費が13万8000円ですが、数年先の生活費ですから、金額はほぼ同じと見ていいでしょう。ただ、不定期な支出を考慮し、余裕を見て月15万円とすれば、年間で180万円。65歳までの3年間で、まず540万円を老後資金から捻出することになります。

65歳からは保険料の支払いもなくなり、生活費は10万5000円に下がります。公的年金から税金と社会保険料を引いて、8万円が手取り額とすれば、不足額は2万5000円。90歳まで生きるとすれば、25年間で750万円。先の540万円と合算すると1290万円となり、90歳の時点で老後資金は、まだ8100万円も余ります。

もちろん今後、不定期あるいは不測の支出があるでしょう。自動車の買い替え、自宅のリフォーム、あるいは病気入院、介護費用など。それでも一般には、8100万円の半分も減らないはず。老後の生活費を想定の倍にしてもまったく問題ないでしょう。

◆アドバイス2 これからは自分のために時間を使う
相続で手にした資金もありますが、これだけ貯蓄が大きくなったのは、ご本人の努力があったからこそ。無駄遣いをせずしっかり家計管理をされていることは、支出内容を見ればわかります。ですから、老後は大いに楽しんでください。「自由な時間と金銭的な面とのバランス」を心配されていますが、長く働くことは老後資金が心許ない場合の有効策であり、ロクさんのように潤沢な資金があれば、無理に働く必要はありません。今まで頑張ってこられたのですから、ご自分のために自由に時間を使ってほしいと思います。

ただひとつ心配があるとすれば、時間の使い方です。今まで仕事に費やしていた時間が、すべて自由になります。具体的な老後のプランがあればそれで構いませんが、ただ何となく過ごして、知らず知らずに社会や地域と接点がなくなることは避けたいところ。もちろん、焦って何かをする必要はありませんが、もしプランがなければ、それまで少しアルバイトをしてもいいでしょう。お金のためではなく、あくまで社会と接点を持つため。週2、3日で十分です。

◆アドバイス3 これ以上、投資比率は上げない
あと、ロクさんは、保険加入の必要性がほとんどありません。これだけ貯蓄があれば、医療費も介護費用も貯蓄から捻出できるからです。しかし、医療保険、終身保険とも、もうすぐ払込みが終了しますので、加入は継続してもいいでしょう。その保険料ですが、もう残りの保険料は前納してしまってもいいと思います。

最後に老後資金の運用先について。老後生活に入ってからは、年齢が進むにつれ、投資比率を下げるというのが基本的な考え方です。大事な老後資金が減った場合、それを戻すまでにある程度時間が必要だからです。ただ、ロクさんの場合、投資比率は金融資産の2割程度ですから、これ以上増やさなければ、さほど心配する必要はないでしょう。

とは言え、投資をする上で、リスクを避けて通ることはできません。当然、さらに損失が膨らむ可能性もあります。損切りをしながら、売却して、投資比率を徐々に下げていっても構いません。あるいは、投資自体には興味があるなら、損切りをして得た資金で、ご自身で個別株を選び、買ってもいいと思います。少なくとも、金融機関に勧められて購入することは避けてください。

◆相談者「ロクさん」から寄せられた感想
ありがとうございました。安心しました。保険料は前納してもいいのですが、払い込んでしまうと保険会社と疎遠となり、いざというときに相談(保険適用となるかとか)しづらくなるのではないかと思い残してあります。「資金は潤沢」と評価していただいたのですが、手持ちが減少していくだけではつらいので、少しでも収入が得られる方法を無理をせずに考えたいと思います。のちに余ることがあれば、「志のある人」に使ってもらうように手続きをするつもりです。

教えてくれたのは……
深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部