2019年1月、アラブ首長国連邦(UAE)で開催されたアジアカップで、日本代表は決勝戦で敗れ惜しくも2位となりました。その大会に参加していた室屋成選手に、大会中のチームの様子や自身が感じたことを伺いました。

チームの内部から見た日本代表選手の様子はどうだったのでしょう? また先発で出場した試合でアシストを決めたときの心境や、大会を通じて考えた自分の将来はどういうものだったのでしょうか。丁寧に答えていただきました。

■自分のプレースタイルを出すと決めたことで試合出場へ

―― プロ入りした後に苦労したことは何ですか?

プロに入ったとき、違和感や大学生のときとの違いは感じませんでした。大学生のときU-23日本代表でプレーしていたので自信はありましたが、プロ1・2年目は自分で思っていたほど活躍できませんでした。もっとできると思っていた分、難しさを感じましたね。

Jリーグはスローテンポで足下のテクニックが上手い選手が多くて、自分のようなどんどん前に行く選手は馴染むのが難しいと思いました。今は周囲も自分の特長を理解してくれたと思うのですが、最初は自分という存在をどう表現するのか難しかったと思います。

チームの戦い方に合わせて自分のプレースタイルを変えるなど、いろいろトライしてみたのですがうまくいきませんでした。そこで開き直って、自分の特長を出してそれでも試合に出られなかったら移籍しようと思い、自分のやりたいプレーを選ぶようにしたらいい方向に進みました。

日本代表に入ったときもレベルは高いと思いましたが、今は自分自身のスタイルを確立しているので、自分のプレーを貫いて、それで監督に起用されなかったら仕方がないと思っています。


―― 日本代表を目指したタイミングはいつでしょう?

子どものころから日本代表に入りたいとは思っていました。でも、2019年1月のアジアカップに行ってからは、やはりスタメンで試合に出てピッチに立ちたいという思いが強くなりましたね。

■海外組の選手たちと1カ月一緒に過ごして考えたこと

―― アジアカップのときのチームの雰囲気は?

アジアカップのときのチームはみんなとても仲がよかったと思います。大会中は全員チームのことを考えて行動していました。先輩たちがみんな優しいので、ものすごく馴染みやすく感じましたね。長友佑都選手は変わり者ですが、優しくて。まぁみんな変わり者なのですが(笑)、日本代表にいる人たちは個性があって、変わり者じゃないとダメなのかなと思いました。

チームの雰囲気はよかったですし、グループリーグ第3戦のウズベキスタン戦は、それまでのスタメンをがらりと入れ替えて臨んだので、チームのほぼ全員が出場経験を積むことができました。出場した選手たちはその試合に「これに勝たなければヤバイ」という危機感を持っていました。負けていたら何を言われるか分かりませんでしたからね。勝ててホッとしました。

そのウズベキスタン戦でアシストを決めて、「やった」という気持ちでした。それでも記者の人たちの前では格好付けて落ち着いたふりをしていましたね(笑)。アシストという目に見える形として結果を残せたのがよかったと思います。


―― アジアカップの結果と今後の日本代表への思いについて聞かせてください

準優勝は残念でしたが、個人としては経験を得ることができたいい大会でした。ヨーロッパでプレーしている選手たちと1カ月一緒に生活して吸収するものもあったし、サッカーだけではなくてプライベートの部分でも考えなければいけないと思うことがたくさんありました。

今、酒井宏樹選手からポジションを奪わなければいけないという気持ちが強くあります。試合に出てない選手が出ている選手にどんどんプレッシャーを与えてチームを刺激したいとも思いますし、そうなったら日本代表はもっと強くなっていくのではないかと思っています。

■お客さんがスタジアムに足を運びたくなるようなサッカーがしたい

―― 海外でプレーする選手を見て自分も行きたいと思ったのではないですか?

海外でプレーしたいという思いはあります。何より住みたいです。国で言うと、将来的にはアメリカに住みたいですね。サッカーをするのであれば、ドイツ・フランス・イギリスなんか面白そうだと思いますし、そういう国のリーグでプレーしてみたいと思います。


―― では現在プレーしているFC東京で今季やりたいことを教えてください。

昨年は前半戦こそよかったのですが後半戦で少し失速してしまいました。今年はシーズンを通していいサッカーをして、お客さんがスタジアムに足を運びたくなるようなプレーをしたいと思います。そういうサッカーをしながら最後までタイトル争いに絡みたいです。

自分の目標はあまり立てないので具体的なものはないのですが、昨年よりも成長したいし、昨年よりもうまくなりたいと思っています。特にもっと攻撃のクオリティや守備の成長を考えています。1対1は得意ですが、もっと強い相手が来ても対応できる選手になりたいと思います。


世代交代が進んでいる日本代表の中にあって右サイドバックとして期待が寄せられている室屋成選手。アジアカップの日本代表全7試合のうちフル出場1試合、途中出場1試合というプレー時間に、先発に対する渇望が生まれていました。それでもウズベキスタン戦のアシストは本人としてもとてもうれしかった様子で、報道陣の前ではわざと平静を装っていたと明かしてくれました。シーズンが始まった今年のJリーグでは、これまで以上に元気なプレーを見せてくれることだと思います。


【取材協力】FC東京 室屋成選手

【取材】森雅史/日本蹴球合同会社
【撮影】浦正弘