国鉄時代から現在に至るまで、多くの旅人に支持されてきた「青春18きっぷ」。1回あたり2,000円強でJR全線の快速・普通列車に乗車できるため、さまざまな使い方が考えられる。今回は実際の旅程を通じて、お得な「青春18きっぷ」の魅力に迫りたい。

  • 「青春18きっぷ」でも乗車可能な新快速。速達性が高く、運行本数も多いため、「青春18きっぷ」ユーザーからの人気も高い

■前身のきっぷの名称は「青春18のびのびきっぷ」

最初に「青春18きっぷ」の概要を簡単に確認。1982(昭和57)年、前身となる「青春18のびのびきっぷ」が旧国鉄で販売され、現在の名称である「青春18きっぷ」になったのは1983年からだという。「青春18きっぷ」は1枚で5回まで利用でき、現在の発売額は1万1,850円(大人・こども同額)。1回分は2,370円という計算になる。

「青春18きっぷ」のルールを説明すると、まずJR全線の快速・普通列車とJR西日本宮島フェリー(宮島口~宮島間)が1日乗り放題となる。新幹線や在来線特急列車は原則として乗車できないが、一部区間において区間内相互発着の場合に限り、在来線特急列車の乗車が認められている。JR以外の他社線は乗車不可だが、新幹線開業にともなう並行在来線の経営分離などで「飛び地路線」と化した七尾線、城端線、氷見線、八戸線、大湊線などへの通過利用に限り、第三セクター鉄道の一部区間で乗車が認められている。

現在は「青春18きっぷ」とともに「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」も発売され、これを購入することで北海道新幹線奥津軽いまべつ~木古内間(奥津軽いまべつ駅との乗換駅は津軽線津軽二股駅)の普通車の空席と、道南いさりび鉄道の普通列車に片道のみ乗車可能となる。

ただし、「青春18きっぷ」は通年販売ではなく、春季・夏季・冬季に限定しての販売となる。2019年の販売期間・利用期間はJR各社サイトなどに掲載されている。

■2018~2019年冬季の鉄道旅行、乗車した区間は

「青春18きっぷ」は他の企画乗車券と比べて自由度が高い分、しっかりとした事前準備が必要になる。筆者は昨年冬に「青春18きっぷ」を購入し、12月30日から1月10日にかけて下記の区間に乗車した。

  • 12月30日 : JR神戸線(東海道・山陽本線) 摂津本山~姫路間を往復
  • 1月6日 : JR神戸線・JR京都線・琵琶湖線(東海道・山陽本線) 摂津本山~大阪間、大阪~米原間、米原~京都間、京都~摂津本山間
  • 1月9日 : JR神戸線・山陽本線 摂津本山~糸崎間、糸崎~三原間、新下関~下関間(※三原~新下関間は山陽新幹線500系「こだま」乗車)
  • 1月10日 : 山陽本線・JR神戸線 下関~摂津本山間

これらの区間の乗車記録は、本誌連載「JR西日本の新快速、乗車レポート」「山陽新幹線&山陽本線の旅」で紹介している。

  • 広島地区の山陽本線(三原~岩国間)は3月16日のダイヤ改正で快速・普通列車が227系に統一される

ただし、今冬の「青春18きっぷ」の旅は結果的に4回分となり、1回分余ってしまった。お得なきっぷを買ったはずが、結局損しているのではないかと少し不安になった。

■通常の運賃と比べていくら得したのか?

それでは、「青春18きっぷ」を使わなかった場合、今回乗車した区間の普通運賃はいくらになるだろうか。乗車区間別に計算してみた。

  • 12月30日 : 摂津本山駅→姫路駅(1,140円)・姫路駅→摂津本山駅(1,140円) 計2,280円
  • 1月6日 : 摂津本山駅→大阪駅(390円)・大阪駅→米原駅(1,940円)・米原駅→京都駅(1,140円)・京都駅→摂津本山駅(1,080円) 計4,550円
  • 1月9日 : 摂津本山駅→糸崎駅(4,000円)・糸崎駅→三原駅(140円)・新下関駅→下関駅(200円) 計4,340円
  • 1月10日 : 下関駅→摂津本山駅(8,210円) 計8,210円

計算の結果、普通運賃で乗車した場合の合計額は1万9,380円となった。「青春18きっぷ」の発売額は1万1,850円のため、7,530円も得していた。4回分しか利用できなかったものの、1月9~10日にかけての長距離移動で十分に元を取っていた。

ちなみに、1回分で考えると興味深い考察もできる。前述の通り、現在の「青春18きっぷ」は1回あたり2,370円という計算になる。そのことを踏まえると、12月30日の摂津本山~姫路間の往復では元が取れていない。

往復だけで「青春18きっぷ」1回分の元を取りたいなら、本州3社内の幹線だと営業キロ71~80km以上を乗る必要がある。東京駅から東海道線を利用した場合は二宮駅(営業キロ73.1km)、大阪駅からJR神戸線を利用した場合は加古川駅(営業キロ72.2km)がこれに該当する。

筆者が乗降した摂津本山駅は神戸市東灘区にある駅。姫路駅までは営業キロ65.8km・片道運賃1,140円だった。次の英賀保駅までだと営業キロ70.4km(端数は切上げ)・片道運賃1,320円となる。「青春18きっぷ」で往復する場合、1回分の元を取るなら英賀保駅より先まで乗車する必要があったようだ。

「青春18きっぷ」は2019年も春季・夏季・冬季に販売される。春季は3月31日まで販売され、4月10日まで利用可能だ。春休み期間を使って「青春18きっぷ」の旅を計画している人も多いのではないだろうか。今回の記事も参考に、元が取れなかったり、途中で急な予定変更を余儀なくされたりすることのないよう、事前にしっかりと計画を立てて旅に出てほしい。