THREE(スリー)ブランドを展開するACROは2月19日、男性用総合コスメブランド「FIVEISM × THREE」(ファイブイズムバイスリー)の新商品発表会を開催した。同ブランドは、性別や年齢などの既成概念にとらわれない新しい時代の自己表現を提案することをコンセプトに、昨年9月にローンチされたもの。

今回は3月15日に発売となる春の新商品が発表された他、ランウェイショーも開催された。会場では新商品のタッチ&トライコーナーも設けられ、実際にメイクを体験することができた。

「FIVEISM × THREE」製品群。パッケージはシックな色合いに統一されている

既存商品とは一線を画したコスメブランド

男性用コスメというと、多くの人が真っ先に思い浮かぶのはドラッグストアなどに並んでいるメンズ向け化粧水や乳液といった商品だろう。だが、それらはどちらかといえば「スキンケア」商品であり、女性が日々使用するメイク用品とは異なっている。

「FIVEISM × THREE」はそういった従来のスキンケア商品とは一線を画すコンセプトで登場したコスメブランドだ。ラインナップされているのは、アイライナーやアイシャドウ、ファンデーション、コンシーラーなど、同ブランドの製品だけでフルメイクが可能だ。

もちろん、女性のメイク用品をそのまま男性向けとして提供するのは無理がある。そこで「FIVEISM × THREE」は、製品のデザインをよりシンプルかつスタイリッシュなものにすることで、男性でも手に取りやすいものにした。

また、女性がメイクする際の「白粉をはたくようなイメージ」(ファンデーションなどを塗る動作)は、男性にとって抵抗があると分析。スティック状にすることで心理的なハードルを下げている。

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今回の新作お披露目会で発表されたのは、ガイライナー(アイライナー)の新商品2色とアイシェードトランス新4色、そしてコバートブラシの新商品3種類

ランウェイショーも開催され、性別、国籍、年齢に縛られない多種多様なモデルが登場。テーマでもある「Individuality(個性)」を十分に体現したイベントとなった。

性別や年齢、国籍、ファッションのテイストも様々なモデルたちがランウェイを闊歩。同ブランドのコンセプトを体現したショーとなっていた

また、会場には「FIVEISM × THREE」体験ブースが設けられ、実際にプロのメイクアップアーティストの手で“変身”することができた。

メイク中の一幕

どう変わったのか。さっそくビフォー・アフターをご覧いただこう。

写真を見て「あれ、あまり変わっていないのでは?」と感じた人が多いのではないだろうか。だとしたら、このメイクは“成功”しているということだ。

というのも、筆者のようなメイクに慣れていない一般的な男性にとって「明らかにメイクしているとわかる状態」は避けたいからだ。

今回はフルメイクということで、下地、ファンデーション、アイシャドウ、アイライン、アイブロウ、コンシーラー(目元のクマなど肌の気になる部分をカバーする化粧品)、シェーディング・ハイライト(顔の陰影を演出)まですべて施してもらったが、想像していたよりもずっと自然な仕上がりで、よほどのことがなければメイクしていることはわからないだろうと思えた。

今回使った化粧品一覧。アイシャドウやリップ、アイライナーなど、女性の化粧と遜色ないアイテムが並ぶ。特徴的なのはやはりバータイプのアイテムが多いこと

実際、同ブランドで売れ筋なのは、あくまでもナチュラルに肌を整えて見せることができる商品なのだという。

それを踏まえた上でビフォー・アフターをご覧いただくと、そうはいってもメイクの前後で多少顔の雰囲気が違っていることがわかるだろう。写真で撮るとわかりにくいのだが、肌のキメが整えられ、ひげの剃り跡が薄くなっており、唇もツヤが増している。眉毛もラインが整えられ、眉尻や眉根の濃さが均一だ。輪郭も少しシャープに感じる。

微々たる違いかもしれないが、そもそも顔の手入れとはそういうものである。他人は絶対に気づかないような前髪の微妙な跳ね具合でも、毎日鏡と向き合っている自分自身は気になって仕方なかったりするのだ。

すでに変わりつつある、男性の美意識

今回のビフォー・アフター、個人的には「けっこう変わるな」と思った。しかし、それと同時に「変わったこと(メイクしたということ)をあまり他の人には知られたくない」とも思った。それはやはり、筆者が男性のメイクがまだ一般的なカルチャーとして浸透しきっていない2019年を生きているからだろう。

とはいえ、昨年末あたりから男性用コスメ市場は急激に盛り上がりを見せており、「FIVEISM × THREE」はリーディングブランドとして注目を集めているという。若い世代の男性にはメイクに抵抗のない人も増えているとのことで、今後はさらに市場が拡大していくのかもしれない。

こうしたムーブメントについて、信じられないと感じる人もいるだろう。特に上の世代はそうかもしれない。

しかし、考えてみればここ数十年で男性の美意識はずいぶん様変わりした。たとえば眉毛を整える男性は今や珍しくないし、メンズネイルも少しずつ浸透してきている。

具体的な数字で言えば、冒頭で述べた男性用のスキンケア市場は2018年時点で1175億円まで拡大しているのだ。こうした美意識の高まりのさらなる延長線上に、「FIVEISM × THREE」のようなコスメがあるのではないだろうか。

(山田井ユウキ)