西武鉄道が2月14日に新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」の内覧会・試乗会を実施。車両概要・運行概要の説明に加え、西武鉄道取締役会長の後藤高志氏も挨拶した。「ラビュー」は3月16日から、池袋線・西武秩父線の特急「ちちぶ」「むさし」で運行開始する。
後藤会長は挨拶の中で、新型車両の報道公開に立ち会うのは30000系(2008年)・40000系(2017年)に続き、今回が3回目と説明。「30000系では西武グループの再生を託しました。プロジェクトチームを作り、メーカーとも議論しつつ、女性の意見も取り入れた車両を製作しており、これが以後の車両新造におけるモデルケースとなっています」と話す。
「ラビュー」においても、デザイン監修を担当した建築家の妹島和世氏、西武鉄道およびグループ会社の若手社員を中心に構成されたプロジェクトチーム、車両を製作した日立製作所の3者間で議論が重ねられてきた。
「これからの西武鉄道、西武グループを象徴するフラッグシップトレイン。お客様に新たな感動を提供し、『でかける人を、ほほえむ人へ。』を実現する新型特急として、大いに期待しています」と後藤会長。通勤利用から観光利用まで幅広く活躍し、「単なる移動手段というだけでなく、『ラビューに乗ることが目的』と言われるように、積極的にアピールしたい」と語った。
30000系・40000系と同様、「ラビュー」でもパウダールームや女性専用トイレをはじめ、女性の意見を取り入れた設備があり、「女性のお客様も快適に乗車できる新型特急ができたのではないか」と後藤会長は言う。報道陣との質疑応答では、取材で来ていたというホリプロマネージャーの南田裕介氏から、「西武鉄道の新たな仲間に声をかけるとしたら?」と質問される場面があり、後藤会長は「『たのむぞ!』そのひと言です」と答えた。
■「ラビュー」の車両概要・運行概要は
今回の「ラビュー」内覧会・試乗会で使用された編成は、1号車から「001-A1」(Tc1)、「001-A2」(M1)、「001-A3」(M2)、「001-A4」(T1)、「001-A5」(T3)、「001-A6」(M5)、「001-A7」(M6)、「001-A8」(Tc2)の8両編成。日立製作所が開発したアルミ製標準型車両「A-train」コンセプトに沿って製作された。昨年10月に日立製作所笠戸事業所から小手指車両基地へ輸送された後、営業運転に向けた各種試験や試運転が行われてきた。
8両合計の座席数は422席。池袋駅発車時の先頭車となる1号車は26席あり、うち2席が車いす席。ハンドル形電動車いすにも対応している。エントランスにオストメイト対応型の多目的トイレも設置された。8号車の座席数は48席。中間車の2・3・4・6・7号車は1両あたり座席数60席。5号車は48席となっており、洋式の女性専用トイレと共用トイレ、男性用トイレに加え、化粧のしやすい拡大鏡や姿見、ハンドドライヤー、コンセントなどを用意したパウダールームを設置した。他にAED(自動体外式除細動器)も装備されている。
客室内の座席シートは黄色配色を基調としたソファのようなデザインに。手動式可動枕は背丈サイズに合わせて調節でき、肘掛けにインアームテーブルが収納され、その下に電源コンセント(AC100V)が設置されている。大型の背面テーブルもあり、各車両に「SEIBU FREE Wi-Fi」も導入。ビジネスシーンだけでなく、秩父などへのグループ観光にも適した機能面のバリューアップをめざしたという。客室正面の扉上に2画面一体型のLCD表示器が設けられ、4カ国語(日・英・中・韓)に対応した停車駅案内などを行う。
車内照明はシンプルなボールト(曲面)天井からの間接照明により、やわらかな光あふれる照明デザインに。時間帯によって光の色を変え、リビングにいるようなくつろぎの空間を演出する。放送装置は高音質仕様(自動放送装置付、BGM機能付)となった。エントランスは座席シートと同様、黄色配色を基調とし、一部の壁を曲面デザインとすることで、壁面に寄り掛かる余裕のある空間としている。床にはダークグレーの人造大理石を敷き詰めた。
車体はアルミ製で塗装が施され、写り込み具合もひと工夫するなど、「ラビュー」のコンセプトでもある「都市や自然の中で、やわらかく風景に溶け込む特急」のデザインを表現している。車体前面は緩いカーブのある形状とし、国内初という曲線半径1,500mmの大きな三次元の曲面ガラスを採用。「特急 ちちぶ」などの列車名は前面ガラスの下部に表示される。前面ガラスの上部に設置された前照灯・尾灯は通常モードだけでなく、笑顔に見える「スマイルモード」に変更することもできる。
車体側面の大型窓も特徴。縦1,350mm×横1,580mmの大型窓ガラスが等間隔に配置され、沿線風景を大パノラマで楽しめる。車両概要説明でも大型窓はアピールポイントのひとつに挙げられ、「夜の駅ホームから見ると、窓が額縁のように見える」とのコメントもあった。
車両の仕様に対する基本的な考え方も紹介された。現行の「ニューレッドアロー」は7両編成だが、「ラビュー」では朝夕の混雑時間帯や行楽シーズンなどの多客期にいま以上の需要を取り込みたいとの思いもあり、1両増やした8両編成として座席定員の増加を図ったという。外装・内装ともに居心地の良いデザインをめざすとともに、車内の快適性実現のために最新技術を取り入れ、スムーズな加減速と振動・騒音の低減をめざした。
「ラビュー」の設計最高速度は120km/h、加速度は3.3km/h/s、減速度は常用3.5km/h/s・非常時4.5km/h/s。車体寸法は、全長が先頭車20,470mm・中間車20,000mm、全幅が2,814mm、全高が4,040mm。自重は先頭車の1・8号車が32.2~32.8トン、中間車のうち電動車の2・3・6・7号車が38.3~39.0トン、付随車の4号車が31.5トン、同じく付随車の5号車が32.1トン。編成全体で283.2トンとなっている。
その他、主要諸元表によれば、台車は「空気ばね式 ボルスタレス 軸ハリ式軸箱支持(輪重調整機構付)」「動揺防止装置 両先頭車搭載(中間車は準備工事)」「固定軸距2,100mm M:KW-217M T:KW-218T」、主電動機は「全密閉型三相カゴ形誘導電動機 170kw 1,000V 125A 81Hz 5,070rpm」、制御装置は「電力回生ブレーキ付総括制御自動加減速VVVFインバータ装置」、補助電源装置は「電源装置:静止形インバータ(SIV)260kVA×2台 焼結式アルカリ蓄電池:DC100Ah」とのこと。
「ラビュー」はこれまでに2編成搬入されており、内覧会では小手指車両基地に2編成が並ぶ様子も見られた。ただし、デビュー後の運行概要については「B編成も入ってきていますが、実際に動かすのは1本だけ」と説明があり、当面は1編成のみで運行されるという。「多くのお客様にご利用いただくため、なるべく運行本数が多くなるように検討した」結果、「ラビュー」が営業運転を開始する3月16日以降、土休日に下り5本・上り5本、平日に下り5本・上り6本の「ちちぶ」「むさし」に使用されることになった。
池袋線・西武秩父線では今後も「ラビュー」が順次導入される。同車両を使用する列車は西武鉄道のウェブサイトで案内されるほか、駅の特急券券売機やチケットレスサービス「Smooz」でも「ラビュー」のアイコンが表示される。「ラビュー」は2019年度までに全7編成導入され、現行の特急車両10000系「ニューレッドアロー」をすべて置き換える予定。なお、新宿線の特急「小江戸」は引き続き「ニューレッドアロー」を使用する。