刻々と開催の時が迫る東京2020大会(オリンピック・パラリンピック)。56年ぶりに日本で開催される夏季オリンピックとあって、関係各所ではもろもろの準備が急ピッチで進行している。

その中で、最も関心の高い話題の1つは、総数1千万枚ともいわれる観戦チケットの入手方法だろう。申し込み時期や購入方法、転売対策など、気になる詳細を公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)が発表した。

東京2020大会オリンピック公式チケットの販売概要発表会には、過去大会の女子レスリング53キロ級で3連覇を達成した吉田沙保里さんが登場。「自国で開催される東京オリンピックなので、たくさんの方に生でスポーツの良さを知ってもらいたい。もう選手ではないので、私も登録してチケットを購入したいと思います」と話していた

抽選販売の申し込みは2019年春に受付開始

組織委員会の発表によれば、公式チケットの販売方法は2019年春に始まる「抽選申込」、2019年秋以降に実施する「先着順販売」、2020年春以降に都内の販売所にて行う「窓口販売」の3段階を予定している。その内、最も早く始まる「抽選申込」については、「一般チケット」「車いすユーザー向けチケット」「東京2020みんなで応援チケット」が対象となる。

3段階に分かれるチケット販売スケジュール。第1弾となる「抽選申込」が目前に迫っている

「一般チケット」は開閉会式と17日間全33競技(339種目)分を販売する。席の種類はA~E席の最大5種類に分類するそうだ。価格については、陸上男子100m決勝や水泳決勝など、人気が集中することが予想されるものについてはA席で10万円を超える設定もあるが、全体としては半数以上が8,000円(開閉会式は1万2,000円)以下の設定としている。

「一般チケット」が単券であるのに対し、「車いすユーザー向けチケット」と「東京2020みんなで応援チケット」は、申し込み条件はあるものの複数人分を想定。こちらも全セッションで用意する。

「車いすユーザー向けチケット」は、車いすユーザーと同伴者分がセットになったチケット。価格は座席位置が未確定のため検討中だ。「東京2020みんなで応援チケット」は、12歳未満の子ども、60歳以上のシニア、障がい者1名をふくむ家族やグループ向けのチケット。こちらは1枚2,020円で販売するが、予定枚数に達した場合は以降の販売を行わない。現在、予定販売枚数や対象となる人数制限についての検討を進めている。

「抽選申込」の対象チケット一覧。なお、2020年春以降は都内に設置予定のチケット販売所でも販売する予定だ

チケットの支払い方法は、手数料のかからないVisa決済(クレジット/プリペイド/デビット)か、手数料432円(1件あたり)の現金決済(コンビニエンスストア払い)から選択可能。チケット受け取り方法は、紙チケットの郵送とPCやスマートフォンなどの端末を用いる方法がある。郵送の場合、チケット1枚の発行に324円、配送に1件864円の手数料を設定。スマホなどの画面に表示するモバイルチケットや「プリント@ホーム」を使って自身で印刷する紙チケットの場合、手数料は不要となる。

チケット販売&不正転売防止策はすでにスタート

ここまでチケット販売の概要を説明してきたが、ここからは「抽選申込」の参加方法について見ていく。抽選販売に申し込むには、いくつかのステップを踏む必要がある。

まず必須となるのが、すでに公式サイトで登録が始まっている「TOKYO 2020 ID」の取得だ。IDの取得後、「抽選申込」開始前に開設される公式チケット販売サイトへアクセスし、観戦希望の競技や座席種類、枚数を選び、期限内に申し込むというフローになっている。

2019年1月28日時点で「TOKYO 2020 ID」の登録者数は125万人を突破。しかし、チケットの販売総数が1千万枚規模であることを考えれば、今後はさらに登録者数が増えると考えられる

抽選結果の発表は2019年6月中旬以降を予定。見事当選した場合は、支払い方法と受け取り手続きを選択する。購入期限内に支払い手続きを行えば、購入完了となる。

ここで1つポイントなるのが、抽選結果の発表が6月中旬以降に設定されている点だ。

2018年12月に“チケット不正転売禁止に関する法律”、いわゆるチケット不正転売禁止法(違反者に対して1年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方が科せられる)が成立した。この法律は2019年6月14日(金)に施行される予定だ。実は本法律、組織委員会が要望し、各所の協力のもと成立したという背景があり、不正転売防止策の1つでもある。抽選結果の公表が6月14日以降となるのはそのためだ。

チケット販売において悩みの種となる不正転売。組織委員会も対策に万全を期していく

ただし、法律だけで不正転売の全てを抑止することは不可能というのが組織委員会の考え。そのため、申し込みの際にどういった方法をとれば抑止効果が高いのかを検討し、来場者の利便性を勘案しながら最適な方法を模索していくという。

とはいえ、これだけの注目を集める一大イベントだけに、オークションサイトなどの非公式チャネルにチケットが出品されることは容易に想定できる。こうした非公式チャネルには、無効なチケットや偽チケットが出品される危険性もある。そのため組織委員会では、公式販売チャネル(公式チケット販売サイト、公式チケット販売所、公式販売事業者)以外からチケットを購入しないよう呼びかけている。

加えて、非公式チャネルから購入したチケットについては、仮に本物のチケットであっても会場に入場させないほか、警察への通報など厳しい処置も検討中とのことだ。どうしてもオリンピックを見たいという気持ちも理解できるが、仮に非公式チャネルから高額でチケットを購入したとしても、そのリスクは相当に高いものになる。

また、正規の手続きでチケットを購入したにも関わらず、会場に足を運べなくなってしまうケースも考えられる。その場合の救済措置として、組織委員会では公式リセールサービスを公式チケット販売サイト内に設置する方針。詳細はあらためて発表するそうだ。

老若男女に優しい平等なチケット販売方法を今後も模索

3段階に分かれたチケットの販売方法だが、購入する側からすれば、チケットの配分も大いに気になるところ。この点について、発表会に登壇した組織委員会マーケティング局でチケッティング部長を務める鈴木秀紀氏は以下のように話す。

東京2020大会オリンピック公式チケットの販売概要を説明する鈴木氏

「チケットについては、可能な限り早い時期から販売していきたいと考えており、そのために『抽選申込』から全競技全セクションのチケット販売を行います。販売枚数という観点でいえば、(抽選で販売する枚数が)最も多くなることを期待しています。しかし、会場準備が進み、詳細が決まっていくにつれて、販売できるチケットも増えていくと考えられますので、その分については適宜、追加販売を行っていきます」

早い段階で販売するチケットの割合を増やしたいというのは、空席対策も考えてのことだろう。ただ、第一弾となるインターネットを介した「抽選申込」は、パソコンやスマホを使い慣れない人たちにとっては高いハードルとなってしまう可能性がある。スポーツの祭典が狭き門になってしまっては問題だが、鈴木氏は以下のような考えを示す。

「高齢者や障がい者を含めて、幅広い方々にお求めいただきやすい環境を用意するという意味では、コールセンターを設置したり、購入方法についての動画を用意したりするなど、丁寧で分かりやすいご説明をすることでサポートしていきたいと思っています」

さて、気になるのはチケットの抽選倍率だが、組織委員会では過去大会の倍率を把握していないという。開会式や陸上男子100mなど、いわゆる花形種目や、日本のメダル獲得が期待される種目については高倍率が予想されるが、チケット枚数と申込数の兼ね合いで決まる倍率を現時点で予測するのは難しいとのことだ。

では、とにかく、何でもいいから東京オリンピックを見てみたいという人は、どうすればいいのだろうか。この点について鈴木氏は、「全競技のチケットに、たくさんの種類がございますし、その全てが高倍率ということはないと考えています。また適宜、適切な形で情報はご案内させていただきたいと思っておりますので、サイトでいろいろと見て選んでいただければ、幅広くご購入いただける機会を提供できるのではないでしょうか」との見解を述べた。

東京オリンピックは人生で二度目という方もいるだろうが、日本で同大会を次に見られるのはいつになるか分からない。より多くの人が安全・安心に観戦を楽しめるよう、組織委員会では今後も、公平で多くの人々に納得してもらえるようなチケット販売方法を模索していく考えだ。ネット経由の抽選販売が割合として多くなりそうな情勢なので、早めにチケット争奪戦に参加したいという方の中で、パソコンやスマホの使い方に自信がないという人は、これを機に向き合ってみるべきかもしれない。

(安藤康之)