SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は、2018年の半導体向けシリコンウェハの出荷面積が前年比8%増の127億3200平方インチとなり、過去最高を更新したと発表した。また、同年のウェハ販売額は、同31%増の113億8000万ドルと、2008年以降で初めて100億ドルの大台を突破した。

SEMIシリコン製造部会(Silicon Manufacturing Group: SMG)会長でSEH America 製品開発・アプリケーションエンジニアリング担当ディレクタであるニール・ウェーバー(Neil Weaver)氏によると「半導体用シリコンウェハの年間出荷面積は、5年連続で過去最高を記録した。2018年は旺盛な需要と素晴らしい販売額の伸びが見られたが、依然として2007年に記録された過去最高の金額水準には回復していない」と述べている。

  • ウェハの出荷面積推移

    半導体用シリコンウェハの年間出荷面積および販売額の推移(2007年~2018年)。ウェハメーカーよりエンドユーザーに出荷されたバージンテストウェハ、エピタキシャルウェハを含む鏡面ウェハ、およびノンポリッシュドウェハを集計 (出所: SEMI、2019年1月)

販売額が過去最高にならなかった理由

2018年の出荷面積が過去最高を記録し、販売額も同31%増と大きく伸ばしたものの、Weaver氏が指摘するように販売額の総額は2007年に記録した過去最高値(121億ドル)に達していない。これは、過去の動きを調べると、その理由が見えてくる。

実は2012年から2016年まで、ウェハの出荷面積が増えても販売額が上昇しない(あるいは下落する)という現象が続いてきた。言い換えれば、この間、半導体デバイスメーカーの要求でシリコンウェハサプライヤがウェハ1枚当たりの価格を下げてきたということである。

しかし、2017年から状況が一転。いわゆるメモリバブルが生じ、メモリを中心にウェハの供給能力以上の生産が進み、結果としてウェハの供給不足が生じることとなった。

このため、ウェハ購入に関して長期契約を結んでいた大口ユーザー以外は、ウェハの調達に苦労し、ファブの稼働率も下げざるを得なかったところもあったようだ。需給のバランスが崩れ、不足感が強まれば、必然的にウェハの価格も上昇する。結果として、出荷面積も販売額も急増することとなった。

とは言っても、2018年の値が、過去最高金額を記録した2007年当時の出荷面積を比べて5割増しとなった一方で、シリコンウェハサプライヤがデバイスメーカーからの値下げ要求を長年にわたって受け入れてきた結果、販売価格は2007年のレベルに達することができなかったと言える。単位面積(1億平方インチ)あたりの価格を単純計算すると、2007年は約1.4億ドルに対して2018年は約9000万ドルと、まだ2007年の単位面積当たり単価の8割にも達していない割安状態にある。

半導体材料市場の中でも、シリコンウェハはダントツで大きなシェアを占めている。2018年末にSEMIが発表した半導体材料統計によると、2018年の半導体材料全体の販売額に占めるシリコンウェハの割合は4割弱を占め、その市場規模は、2位のガス市場や3位のフォトマスク市場の約3倍ほどの規模を誇る材料業界をけん引する存在と言える。

なお、SEMIの予測では、2019年のシリコンウェハ市場は、前年比5%増の122億9000万ドルになるとしている(2018年12月時点の予測。なお、この予測で使っている数値と、SEMIが統計として発表した数値には微妙な差があるが、これは、統計結果にはSOIウェハが含まれないが、市場予測には含んでいるためである)。

しかし現状、米中貿易摩擦による世界経済の先行きが不透明となっているうえに、中国の国内景気も悪化傾向、スマートフォンの需要も減退傾向にあるほか、メモリバブルの終焉によるメモリメーカー各社の設備投資の減額ならびに凍結などが連鎖的に生じており、半導体市場も先読みがしにくい状況となっており、それにともなって材料市場の需要予測も立てにくい状態になりつつあるといえるだろう。