日本国内において、投資用マンション向けにAIホームサービス「CASPAR」を提供している企業がアクセルラボ。すでに日本国内で52部屋に導入しています。CASPARを開発しているのは、米シリコンバレーのBrain of Things社です。

CES 2019の開催期間中、ラスベガス郊外の集合住宅において、プレス向けにCASPARの体験デモが開催されました。そこでは、Brain of ThingsのCEOであり、2018年にはMITから35歳未満のイノベーター・35人に選出されたアシュトシュ・サクセナ博士が自ら、CASPARを解説してくれました。

  • ラスベガス郊外の高級レジデンス。全390室にCASPARが入っているとか。入居者からの評判が高く、入居者の募集にも役立っているそうです。部屋に設けるセンサー類は。居住者が選べるようになっています

  • Brain of ThingsのCEO、アシュトシュ・サクセナ博士。2015年に、スミソニアン協会によってトップイノベーター(8人中の1人)に選出された経歴も

「Brain of Thingsが開発しているCASPARは、いわばスマートホームのOSです。いくつかの簡単なルールと、スーパーセンサーが取得した情報を元にした機械学習によって判断を行い、様々なコントロールをしています」(アシュトシュ博士)

CASPARは、音声・照度・紫外線・動作・ビジュアル・振動・温度・湿度という8種類のセンサーを組み合わせたスーパーセンサーを採用した、スマートホーム用のAIシステムです。

スマートスピーカーのように音声で話しかけて操作できるのはもちろん、CASPAR AIが毎秒12,000ものデータを収集し、それをクラウド上で約100種類の行動パターンに落とし込みます。さらに、天候や気温などの状況データ、機械学習によって取得した居住者の意向などを組み合わせて、行動を認識します。

  • 8つのセンサーを内蔵したCASPARのスーパーセンサー。部屋の大きさにもよりますが、だいたい50個のセンサーを配置しています

「スマートホーム用のOSは今後、広く普及していくと思います。そのOS上に、シニアを見守るようなアプリケーションや、ジェスチャーでコントロールできるようなアプリケーションを開発しています」(アシュトシュ博士)

例えば、帰宅するとCASPARが居住者を確認し、その人が好む部屋の明るさや音楽で迎え入れてくれる。室内のデモでは、居住者がキッチンに入って電子レンジやコンロを使うと、その行動をCASPARが認識。デモ用のパソコン画面に、電子レンジを使っていることを示す「use_microwave」がしっかり表示されました。

  • CASPARのカメラが居住者の顔を認識して、部屋のライト(色や明るさ)や流れる音楽などを、好みに合わせて調整してくれます

  • CASPARの認識状態を表示するデモ。電子レンジを開けると、パソコンの画面上に「use_microwave」の文字がリアルタイムで表示されました。これらはプライバシーを守った上でクラウドに送信されます

面白かったのは安全対策のデモ。居住者がIHコンロにお湯をかけて、ソファーに座ってそのまま寝入ってしまうと、CASPARが「IHコンロをつけたままで寝た」と認識。アラームを鳴らしたのだ。これなら、コンロのつけっぱなしによる火事を未然に防げそう。

  • コンロをつけた状態で寝てしまったときのデモ。アラームの前に、寝たことを認識して部屋のライトが落ちるなど、とても細かな制御です

CASPARで最大の特徴といえるのは、機械学習によって居住者の好みを覚えてくれること。寝室のデモでは、アラームで目覚めたあと、寝室のカーテンが自動的に開くのですが、音声で半分だけ開くように修正したところ、次回の起床時にはカーテンは半分開いたところで自動的に止まりました。これもCASPARによる学習効果です。

  • 朝の目覚めをより快適な状態にできるように、CASPARが制御してくれます。学習機能によって、自分が好む快適さに近づいていきます

ところで、普及が広がっているスマートスピーカーやコネクテッド家電との関係性はどうなのでしょう。現在、スマート家電製品の多くは、Amazon AlexaやGoogleアシスタントとの連携が当たり前になっています。

「GoogleアシスタントやAmazon Alexa、スマートスピーカーとの共存も可能です。ただ、それらは『居住者がどこにいる』といったことは分からないので、そのレベルでの連携にはなると思います。将来的にはソフトウエアとしてAmazon Alexaなどを搭載して、ボイスコントロール部分にAlexaを使うといった可能性はあるでしょう」(アシュトシュ博士)

積水ハウスの話題でも触れましたが、スマートホームのこれからは、様々なセンサーによる自動制御や、家族の健康と家の安全対策といった、目に見えない部分で住む人を助ける機能が進んでいくでしょう(機能というのは何となくしっくりきませんが)。今回のCES 2019で、すぐそこまで来ているスマートホームの姿が見えてきたように感じました。