皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、「マネープランクリニック」。今回の相談者は、教育資金や住宅ローンに悩む30代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆毎月赤字で、住宅ローンも心配。長期的アドバイスを
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、教育資金や住宅ローンに悩む30代の主婦の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
プリッツさん(仮名)
女性/専業主婦/38歳
関東地方/持ち家・一戸建て

◇家族構成
夫(会社員/40歳)、子ども3人(5歳・3歳・0歳)

◇相談内容
・毎月赤字で貯蓄できない。ボーナスは帰省費用15万円、夏休み等のレジャー費10万~20万円、貯金30万円程度のほかは生活費に回っている。
・子供達が3人とも私立高校に進学すると仮定すると、どのようなペースで学費を貯めていけばよいか。自宅から通える国公立であれば学費を出してあげたいが、私立大学に進学の場合は、奨学金利用を考えている。
・住宅ローンは夫が71歳まであり、老後資金が心配。
・小遣いはすべて夫の飲食費に消えているが、意識が変わらずなかなか削減できない。

以上、恥ずかしながら、住宅購入や教育方針も行き当たりばったりで来てしまいましたが、長期的な視点でプロの方のアドバイスをいただけるとありがたく思っております。よろしくお願いいたします。

◇家計収支データ
「プリッツ」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)住宅ローンについて
・購入時の自己資金(諸費用に充てた資金も含めて)500万円
・金融機関からの当初の借入額 4500万円
・ローン開始年 2013年

(2)加入保険の保険料の内訳
・上の子/学資保険(22歳満期、満期金400万円)=保険料1万7000円
・妻/個人年金保険(加入期間35年、60歳から10年確定、年金額50万円)=保険料1万円
・その他、夫の職場の団体保険に夫と妻名義で加入しているが保障内容は不明。保険料は合算で1万円ほど

(3)子どもの進路
地元中学の評判が悪ければ私立中学(もしくは公立中高一貫校)に通わせたいが、塾の費用を捻出できるか不安とのこと。

(4)妻の仕事について
働くつもりはなかったが、冷静に考えると働かざるをえないと考え直しているところ。一番早くて3年後前職を活かしたパート勤務が現実的と考えている。

(5)ご主人の小遣いについて
小遣いはもともと5万円(昼食費込み)だが、平均して3万円ほどオーバーしている。原因は夜の飲食費で後輩におごることが多いという。

◇FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 教育資金は400万~500万円が不足
アドバイス2 「付き合い」と「教育費」に優先順位をつける
アドバイス3 無理のない繰上返済は妻の収入がカギ

◆アドバイス1 教育資金は400万~500万円が不足
まず教育資金から考えてみます。お子さん3人が私立高校に進学するとなると、1人300万円×3人=900万円がまず高校にかかる費用として、1つの目安となります。また、大学については、私立文系なら平均390万円、私立理系なら520万円が大学にかかる平均額ですが、まだ進路は決められません。とりあえず、高めの1人500万円とすると3人分で計1500万円。したがって、現時点では2400万円が教育資金として必要だと考えられます。対して、用意されている教育資金としては一番上のお子さんの学資保険があります。満期金は400万円と大きいのですが、22歳満期ですから、実質大学費用として使えるのは一番下のお子さんでしょう。

また、現在の貯蓄ペースですが、毎月3万5000円貯蓄していますから(毎月の収支は赤字なので実質ボーナスからの貯蓄)、年間42万円。これにボーナスからの30万円を加算して年間貯蓄額は72万円となります。仮にこのペースを18年間(一番下のお子さんが高校卒業するまでの期間)維持できれば貯蓄額は約1300万円。現在ある貯蓄、投資商品を途中取り崩さなければ、それを加算して約1800万円が金融資産ということになります。

結果、先の学資保険と合算して2200万円。教育資金2400万円とすれば、200万円が不足となります。また、貯蓄を全額、教育資金に充てることはできません。手持ち資金として、生活費半年分程度は残しておきたいところ。また、全員私立理系に進むとは限りませんが、一方で進学塾や習い事等の費用は考慮していません。そう考えると、実際には400万~500万円は不足と考えていいでしょう。

◆アドバイス2 「付き合い」と「教育費」に優先順位をつける
ご相談文に「奨学金利用を考えている」とあります。おそらく教育資金が足りないことを想定されて記されたと思いますが、これについては安易に決めてほしくはありません。何であれ、社会に出る前から数百万円の借金を背負うのです。これはお子さんにとっては大きなハンディです。国が推進する支給型の奨学金であれば、もちろん利用したいところですが、一般的な返済型は慎重に考えてください。では、足りない教育資金をどう準備するか。1つは貯蓄ペースを上げるということ。

目標としては、毎月3万5000円の貯蓄をした上で、さらに家計も赤字にならないようにする。これには、ボーナス依存からの脱却という意味もあります。まとまった額のボーナスがあるため、結果的に年間ベースでは貯蓄ができていますが、仮に支給額が下がったら、場合によっては貯蓄を取り崩さなくてはなりません。

さて、そのためには、毎月の生活費を今より4万円抑える必要があります。見直す費目としては、やはり家族のこづかいと雑費でしょう。この合計が月12万5000円。年間にしたら150万円ものコストです。ご主人の職場での事情や立場もあるとは思います。しかし、お金の出所が同じである以上、最終的には、後輩の方におごることと、教育資金の用意とではどちらが優先順位は上=大事なのか、という判断をしなくてはなりません。その点をもう一度、話し合うってください。

雑費は奥様のプリッツさんが何とか工夫して1万円下げる。ご主人も頑張って小遣いを5万円に戻す。しかし、節約ばかりの生活は息が詰まります。ときに家族で楽しむこともしながら、とにかく継続して貯めること。そして、それはプリッツさん1人ではできません。家族の協力が不可欠なのです。

もしも、それができれば、ボーナスからの貯蓄額が少なくとも年間80万円程度は可能になります。毎月の貯蓄が年間42万円になりますから、計120万円貯蓄できるとすると、18年間で2160万円。現在の資産や学資保険の満期金も合わせれば、ざっと3000万円。お子さん3人、私立高校~私立大学〈大学は理系〉にかかる学費を差し引いても600万円が残ることになり、予備費としてもひとまず安心できる額が確保できます。

◆アドバイス3 無理のない繰上返済は妻の収入がカギ
プリッツさんの家計には、教育資金の他にもう1つ気になることがあります。ご本人も心配されている、住宅ローンです。完済は、ご主人が71歳のとき。しかも、一番下のお子さんが大学卒業のとき、ご主人は62歳です。老後資金を貯める期間がない中、定年(60歳)後さらに11年間も月額12万4000円ものローンを支払い続ける。その家計負担は、決して小さくはありません。

解決策は、繰上返済により完済を前倒しをすることが、もっとも現実的です。ご主人の定年時に500万円を期間短縮型による繰上返済に充てると、返済期間は3年8カ月ほど短縮され、支払い利息は約30万円節約できます。1000万円なら7年4カ月の短縮となります(変動金利に切り替わった後も現在と同じ金利が推移するとして試算)。

例えば、ご主人の退職金額が2000万円なら、1000万円を繰上返済に充て、残り1000万円を老後資金に回すということができます。ただし、退職金額が1000万円ならそれはできません。また、老後資金として1000万円が上乗せされたとして、それで十分なのかという問題もあります。

退職金も自分たちの老後生活も、まだずっと先の話です。不確定要素が多く、具体的にいくら必要かということも断定できません。そうなると、収入アップでさらに貯蓄をするしか、対応策はないということ。そのためには、プリッツさんが働くことが、もっとも有効となります。

パートであっても定期的に収入を得ることができ、例えばそれで月5万円貯蓄に回すことができれば、ご主人が定年となる20年後には1200万円貯められることになります。そして、さらに公的年金が支給される65歳までは夫婦とも元気に働く。これがもっとも効果的で確実な老後対策だと考えます。

◆相談者「プリッツ」さんから寄せられた感想
モヤモヤしていた教育資金について4~500万円足りない、とはっきり数字で示していただき、スッキリしました。正直なところ、私(妻)が働くことに前向きになれませんでしたが、子供のための教育資金作りと、主人の定年時まで住宅ローンを短縮する、という目標をもって働こうと腹が決まりました。ご指摘いただいたように雑費の削減と主人の意識改革に努め、乗り切っていきたいと思います。この度はありがとうございました。

教えてくれたのは……
深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部