宮藤官九郎のオリジナル脚本によるNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)の第5回が、きょう3日に放送される。第1回では時代を横断し、オールスターキャストの魅力をダイジェスト的に紹介。ラストで中村勘九郎演じる主人公・金栗四三が血だらけ!?に見える顔で登場したことで話題騒然となったが、第5回でその理由が明かされる。

  • いだてん、中村勘九郎、金栗四三

    中村勘九郎演じる主人公・金栗四三(『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』第5回の場面写真)

『いだてん』は、日本が初参加した1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪までの知られざる歴史を、ユーモアを交えて描く意欲作。中村勘九郎が演じるのは、日本でオリンピックに初参加したマラソン選手・金栗四三役だ。

第4回でついにマラソンというスポーツを知った金栗。第5回で、ほろ酔いの志ん生(ビートたけし)の口から語られるのは、明治44年に開催された、オリンピックへの参加選手を決める羽田の予選会の内容。全国から来た健脚の学生たちに刺激を受け、審査員だったはずの三島弥彦(生田斗真)も急きょ短距離走に参戦する。

金栗は、10里およそ40kmという未体験の長さのマラソンに挑み、ライバルたちと激しいデットヒートを繰り広げながら、憧れの嘉納治五郎(役所広司)の待つゴールを目指す!

ドラマのチーフ演出を務めるのは、朝ドラ『あまちゃん』でも宮藤と組んだ井上剛。井上ディレクターに、第5回の見どころやマラソンシーンへのこだわり、宮藤脚本の妙味について話を聞いた。

――笑って泣ける、これまでにない大河ドラマを目指したという本作ですが、また宮藤官九郎さんと組んでみて、その魅力をどう感じていますか?

宮藤さんは、言葉を絶するほど頭がいい人で、毎回舌を巻きます。宮藤さんは膨大な資料を事前に読み、それを頭にたたきこんで、その2、3日後に『こんなお話はどうでしょう?』と提案してくださるんです。もちろん、そこからいろいろと直しは入れていきますが、その脚本を読むと、なんでこんなことを思いつくのだろうと本当に驚きます。

――近代が舞台なので、映像や資料も残っていますが、それらの要素を巧みに入れつつ、おもしろい物語を構築されていくということでしょうか?

資料と資料を創作でつないでいく感じです。たとえば映像がなく、写真や文献、資料を膨らませて作ったキャラクターもありますが、あとであながち間違っていなかったとなることも多くて。それらは、遺族までたどりついて話を聞いた時にわかったことですが、そこに一番びっくりしました。

僕は『トットてれび』(16)でも実在の人物の話を撮りましたが、あのドラマに出てくるのは(主人公・黒柳徹子をはじめ)有名人ばかり。その有名人を、今の役者さんが演じるとどんなエネルギーが出るのだろう? と思ってやった企画でした。今回はその真逆ですが、宮藤さんの筆があるから、役者さんはきっとやりやすいのではないかと思います。

  • 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』

――中村勘九郎さんのマラソン指導で、プロのランニングコーチである金哲彦氏が入られていますが。

2017年の初頭に指導をお願いしに行って、当時の勘九郎さんの体を見てもらい、食べ物の管理からやってもらいました。毎回勘九郎さんから金さんに「こんなものを食べました」という写メを送ってもらい、食事内容を改善してもらいながら、走りそうな体、すなわち魅力的なフォルムにしていってもらいました。

でも実は、勘九郎さんは運動が嫌いな方だということを、主演に決まったあとで知りました(苦笑)。運動神経は抜群な方ですから、大丈夫でしたが。

――毎週、走るシーンが欠かせないドラマですから、金さんの指導力は大きいですね。

金栗さんが走っている映像が残っているので、どのタイミングで金栗走りに近づけていくのかも相談しました。昔の人はあまり手を振らないし、前傾姿勢なんです。また、5話で、金栗さんが今、何km地点を走っているのか? どの地点でどういう表情になるのか? と、逐一シーンを撮りながら見てもらいました。

トレーナーチームは、ずっとベタづきですし、メディカルトレーナーもいらっしゃいます。故障までいかなくても、走ったあとはケアをしないといけないので。また、普通のランニングシューズで走るわけじゃないし、足袋にいくまでは裸足ですし。今回、裸足に見えるシューズも新たに開発しました。

――その第5話では、いよいよ第1話のラストにつながるオリンピックの参加選手を決める羽田の予選会のシーンが描かれます。

実は、1話と5話は併行して一緒に撮影しました。視線が違うので、ちょっと頭のなかで混乱しながら撮っていきました。1話は待っている嘉納さんしか見せていませんが、5話はその間に何があったのかというレース展開が明かされ、大団円となります。1話から観た人は、あるピークに行きつきます。3話くらいから少しずつ見えてきて、4話にいって、5話が帰結になりますのでお楽しみに。

  • 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
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■プロフィール
井上剛(いのうえつよし)
熊本県出身のテレビディレクター、演出家。2013年に連続テレビ小説『あまちゃん』でチーフ演出を務め、東京ドラマアウォード2013 演出賞を受賞。2017年、『トットてれび』で第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。大河ドラマの演出は『利家とまつ~加賀百万石物語~』に続いて2本目だが、チーフ演出は初となった。
■著者プロフィール
山崎伸子
フリーライター、時々編集者、毎日呑兵衛。エリア情報誌、映画雑誌、映画サイトの編集者を経てフリーに。映画やドラマのインタビューやコラムを中心に執筆。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』、好きな俳優はブラッド・ピット。好きな監督は、クリストファー・ノーラン、ウディ・アレン、岩井俊二、宮崎駿、黒沢清、中村義洋。ドラマは朝ドラと大河をマスト視聴。

(C)NHK