米中貿易摩擦が世界のスマホ関連企業を脅かしている。

アップルは1月29日に2018年10〜12月決算を発表した。売上高は前年同期比5%減の843億1000万ドルだった。特に落ち込みがひどいのが主力商品であるiPhoneだ。今回から販売台数は明らかにしていないが、売上高は15%減の520億ドル。売上高全体に占めるiPhoneの比率は69.2%から62%にまで下がった。

中国変調はアップルだけの問題ではない

原因は、これまでアップルの成長を支えてた中国経済の急激な冷え込みだ。

アップルの地域別売り上げでは香港と台湾を含む中華圏が27%減の132億ドルとなった。アメリカやヨーロッパ、日本などは1%増の711億ドルであることから、いかに中国市場の落ち込みがアップルに悪影響を与えているかがわかる。

ただし、中国市場の影響に巻き込まれているのは何もアップルに限った話ではない。スマホ向けの液晶ディスプレイを得意とするシャープも「米中貿易摩擦によって売り上げに影響した」として、メーカー向けのディスプレイの売り上げが伸び悩んでいることを認めた。

また、韓国LGディスプレーも営業利益96%減という有様だ。オムロン、積水化学工業などスマホ関連メーカーも軒並み、決算での落ち込みが目立つ。

各社で共通しているのは、昨年11月以降、急速に中国方面からの発注が止まったという話だ。ファーウェイの幹部が、カナダで逮捕されるなど米中の関係に緊張が走る中、中国経済が一気に後退。中国メーカーが減産に走った。また、株安により、中国での可処分所得が減り、消費マインドも冷え込んだようだ。

ソニービデオ&サウンドプロダクツとソニービジュアルプロダクツの社長でもある高木一郎氏は「中国では現在、可処分所得が変化している。年初年末の株安が顕著で、3割も可処分所得が落ちている。幸いにもソニーは数量売ることを前提にした商売をしていないので、数が売れなくても価格をキープしていくことはできるのではないか」と語っている。

中国市場の影響はアップルのみならず、スマホや電機業界全体の問題なのだ。

アップル強固な日本市場も安泰ではない?

アップルの日本における売上高は昨年同期に比べて5%減となっている。年末には、QRコード決済サービス「PayPay」が100億円あげちゃうキャンペーンを。ビックカメラにはiPad Proなどのアップル製品を購入する人たちの行列ができたが、売上げを押し上げるほどの効果はなかったようだ。

アップルとしては、2019年の日本市場はまさに正念場と言える年になるだろう。

最も影響を受けるのは、総務省による「完全分離プラン」の導入だ。これにより、携帯電話各社は、端末に割引を適用しての販売ができなくなる。スマホの本体価格は、定価のままで販売せざるを得なくなる。KDDIやソフトバンクでは、端末を分割払いしても月々の負担が少なくなるよう、4年間の割賦払いなども提供しているが、こちらも総務省や公正取引委員会から待ったがかかりそうだ。

割引がなくなり、新品のiPhoneを買うというのが難しくなる中で、これまで使っている機種を長く使い続けるという傾向が加速していくだろう。特に最新バージョンのiOS12はiPhone 5sにも対応しており、古い機種が現役バリバリで使えるとなれば、わざわざ新機種を買う必要にも迫られない。

総務省は中古スマホの流通促進に躍起だが、仮に市場に中古のiPhoneが増え、人気が高まれば、さらに新品が売れなくなる可能性がある。

アップルにしてみれば、日本市場は、いま逆風しか吹いてないくらいだ。

ユーザーとすれば、iPhoneが大幅値下げし、手に取りやすい価格になってくれればありがたい。しかし、アップルの場合、ブランドのためもあり、大幅に値下げしてまで販売台数を稼ぐという考えは毛頭ない。

ただし、為替の変動を考慮したという建前をつけて、価格調整をしていくことになりそうだ。日本においても、すでにNTTドコモが8000円、ソフトバンクは1万円の割引をiPhoneに適用させている

本体を大幅値引きすることなく、キャリアに割引させることで、お得感を出し、機種変更を促したいのだろう。しかし、今後、こうした割引を強化すれば、総務省から指摘が入ることも考えられる。

日本市場での売上げをあげるためにも、いかにiPhoneをうまいこと総務省に怒られない程度に、割引を適用して売っていくかが、アップルとキャリアには求められそうだ。

(石川温)