山形大学ならびに同大発ベンチャーのディライトマターは、2019年1月30日から2月1日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「nano tech 2019」において、ハイドロゲルのようなやわらかい素材を用いた造形を可能とする3Dゲルプリンタのデモを、内閣府が推進する 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題の1つである「革新的設計生産技術」のブースにて行っている。

研究チームでは、吐出方式、バスタブ方式、マイクロ光造形方式の3種類の造形方法の研究開発を行っており、このうち、吐出型(ディスペンサ式)3Dゲルプリンタ「SWEL MAN」が実際に稼動している様子を会場では見ることができる。

吐出型は、パラフィンの型を作り、そこにゲルなどのやわらかい素材を流し込み、お湯につけることでパラフィンを取り除いて造形を実現するという方式となる。

  • 3Dゲルプリンタ

    相互架橋網目構造(Inter-Crosslinking Network structure:ICN)ゲルを用いて作られた足のモデル。骨はFDM方式の3Dプリンタで作製したとのこと

また、バスタブ式は、バスタブ容器の中に詰められた液体状のやわらかい素材に対し、成型したい形状にレーザーを照射、硬化させていき、出来上がったら引き上げる、というもの。積層ではないため、中空構造や格子構造といった中身がないモデルなども容易に作ることができるのが特徴となっている。そしてマイクロ光造形は、詳細はいろいろな技術的観点から話を聞くことができなかったが、線幅20μmのやわらかい素材による線を引いたりすることを可能とするものとなっており、その造形精度も5μmほどと、ほかの2つの方式と比べて2桁ほど高い精度を実現できるという。

  • バスタブ式3Dゲルプリンタ

    バスタブ式ゲル3Dプリンタを用いて作製されたモデルも展示されている

ハイドロゲルのほか、シリコーンなどの複数種類のやわらかい素材で造形ができることを確認済みとのこと。また、ディライトマターのビジネスモデルだが、装置そのものも需要があれば提供は可能(1台あたりの価格は数千万ほどとのこと)としているが、出力サービスも提供しているとのこと。細胞培養の培地や人工血管、ロボットの指先などの用途が想定されているが、それ以外、こうしたことができないか、といったニーズの開拓や、実際に同社と提携して、新たな用途開発をしてみたい、という企業の発掘の意味合いもあり、今回、出展を決めたという。

  • 3Dゲルプリンタ

    さまざまな形状を作ることができる。実際に触れてみると、ゲルだけあって、ブヨブヨとした触感を感じることができる。そのインパクトについては、会場にて実際に触れてみて感じてもらえればと思う

なお、同プリンタは、同社オフィス(山形県米沢市)に設置されており、実際に試しに使用することも可能(有償の場合あり)とのことであるので、ゲルやシリコーンなど、やわらかい素材を使って、何かできるのでは、と思っている企業担当者などが居れば、気軽に声をかけてもらいたいとのことであった。

  • ディスペンサ式3Dゲルプリンタ

    会場で実際に稼動しているディスペンサ式3Dゲルプリンタの様子