アイ・オー・データ機器は1月29日に記者向けのセミナーを開催し、2019年の戦略を発表した。そのなかで、同社のeスポーツ市場への取り組みについても触れられたので、そちらを中心に紹介する。

2018年に売上が約2.5倍まで伸びたゲーム領域

同社はディスプレイやストレージ、ネットワークの商品を提供する精密機器メーカーだ。ゲームに特化したデバイスとしては「ゲームキャプチャー」と「ゲーミングモニター」の2つを展開している。

アイ・オー・データ機器が展開する2つのゲーミング製品

2017年に2.9億円だった同社のゲーミングモニター「GigaCrysta」の売上は、“eスポーツ元年”と言われた2018年に、12億円と4倍近くまで増加。キャプチャーデバイスを含めた売上では約2.5倍に成長した。2019年には、キャプチャーの売上が約7億円、モニターの売上が19億円まで伸びると予想している。

アイ・オー・データ機器のゲーム領域の売上推移

非常に成長している同社のゲーミング製品だが、おそらくゲーミングブランドとしての参入は業界でも後発組だ。なぜこの領域に力を入れるようになったのか。

アイ・オー・データ機器 執行役員 事業戦略本部 企画開発部 部長の加藤光兼氏は「キャプチャー製品は、もともとビデオの映像をデジタル保存する用途として販売していたのですが、実際は4割以上の方がゲームのプレイ映像を保存する目的で購入されていました」と、話す。

アイ・オー・データ機器 執行役員 事業戦略本部 企画開発部 部長の加藤光兼氏

HDMIで映像を録画する「GV-HDREC」では、「1フレーム単位のコマ送り機能」や「キャプチャー時の低遅延」などが評価され、ゲーム動画を保存する目的で購入するユーザーが増えていったのだという。

元々ゲーム用デバイスとして販売していたわけではないが、ユーザーの声を聴いていくうちに、自社製品がゲーミング領域に適していると気づき、今ではゲーム実況者やコアゲーマーをターゲットとして商品を展開するようになったわけだ。

「特に格闘ゲームの復習に最適だというフィードバックをいただくことが多かったですね。そのように、ユーザーのご意見から気づきを得られたという背景があるので、今後も引き続きゲーマーとコミュニケーションを繰り返していき、eスポーツに貢献できるような製品を手がけていきたいと考えています」と、加藤氏は引き続きeスポーツ領域に力を入れていく姿勢を示した。

また今後は、ゲームをするうえで必要なSSDやハードディスクといった、すでにゲーミング領域として提供しているディスプレイ、キャプチャー以外のカテゴリーの製品でも、ゲーム領域にマッチする形に進化させて、提供していく予定だ。

新たにゲーミングチーム「父ノ背中」とスポンサー契約も

ゲーミング市場へのプロモーションの一環として、セミナーでは、プロゲーミングチーム「父ノ背中」とスポンサー契約を締結したことも発表された。

アイ・オー・データ機器 代表取締役社長の濱田尚則氏(左)と、父ノ背中 リーダーのてるしゃん選手(右)

すでにアイ・オー・データ機器は、『Overwatch』などで活動するプロゲーミングチーム「Green Leaves」と、北陸初のプロゲーミングチーム「TSURUGI TOYAMA」のスポンサードをしている。今回「父ノ背中」のサポートを開始することで、同社のスポンサードするチームは3つになる。

アイ・オー・データ機器 事業戦略本部 販売促進部 販売促進課の西田谷直弘氏は「父ノ背中がゲーミングディスプレイを買い替える際に、当社の製品を採用していただいたことがご縁になり、今回スポンサードさせていただくことになりました。父ノ背中はストリーミング配信などによるファンへの発信力が高いので、ファンの皆さんに当社の商品を伝えていければと考えています」と、契約の背景を語った。

アイ・オー・データ機器 事業戦略本部 販売促進部 販売促進課の西田谷直弘氏

また、同社はスクウェア・エニックス『FINAL FANTASY XIV』のファンフェスティバルへの協賛をはじめ、セガゲームスが開催する「ぷよぷよチャンピオンシップ」や、茨城国体の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」の『ウイニングイレブン 2019』予選大会でのゲーミングモニター提供など、イベントにも積極的に参加している。

eスポーツの盛り上がりをチャンスととらえ、今後も本腰を入れて取り組んでいく姿勢だ。

プロ2名による解説の様子

ちなみに、セミナーの後には、参加者による「ぷよぷよ大会」が開催された。しかも、『ぷよぷよ』のプロである、くまちょむ選手とKuroro選手を招待して、ゲームのコツを紹介してもらったり、解説をしてもらったりするという贅沢なものだった。筆者も参加させてもらったが、結果は惨敗。ろくに連鎖できず、プロの人が解説しにくいような地味なプレイをしていたに違いない。紹介してもらった連鎖のコツは、何1つ実践できなかった。

PCの周辺機器を手がけるメーカーの場合、やはりeスポーツの影響は大きいだろう。それは、実際にアイ・オー・データの売上が2.5倍になったことが物語っている。

しかし、一見親和性がなさそうな業界でも、eスポーツが新たなスポンサー先の選択肢として検討されるようになってきたとも感じる。最近では、サプリメント事業を展開するわかさ生活が、日本eスポーツ連合(JeSU)のスポンサーに就任したと発表された。それ以外にも、すでに日清やサントリーといった大手企業が、積極的にeスポーツをサポートしているのだ。

もちろん、ターゲットや戦略にもよるだろうが、いくつ広告を投下してもなかなか売上に結びつかないと悩んでいる企業は、eスポーツスポンサーという手段を候補の1つとして検討してみるのもいいかもしれない。

(安川幸利)