マグロ養殖基地化を実現するIoTシステムの実証実験に成功

長崎大学大学院工学研究科、システムファイブ、KDDI、長崎県五島市は1月22日、五島市における「マグロ養殖の基地化」の実現を目的とした、IoTシステムの実証実験に成功したと発表した。

実証実験の成功により、海水の採水から赤潮検知、漁業者への通知までの時間を約98%削減することを実現したという。五島市では「マグロ養殖の基地化」を目指し、クロマグロの養殖に取り組んでいる。

クロマグロはほかの魚種に比べて赤潮に対する脆弱性が約10倍高く、クロマグロの死滅を防ぐため、赤潮の早期検知が重要だが、赤潮を検知する既存の計測方法では簡易的な計測しかできず、精度や時間的観点から迅速な赤潮への対応が困難という課題だという。

今回、広域を飛行するドローンを活用し、養殖地全体の海水の着色具合を検知することで赤潮発生のリスクがある個所を特定。採水ドローンにより、赤潮発生のリスクがある個所から多深度(1m、3m、5m)の海水を採取し、AI分析を実施した。

海水採水の試験場
海水サンプリング画像収集ロボットシステム「AKABOT II」

また、赤潮の原因となる有害プランクトンの識別を画像解析により判別し、プランクトン数を集計。AI分析の結果、赤潮発生の危険性ありと判断された場合、リアルタイムで養殖事業者へ通知し、直感的に危険度を把握できるインタフェースにより通知した。

画像解析による有害プランクトンの識別および計数
リアルタイム通知システム

これにより、海水の採水から赤潮検知、漁業者への通知までの所要時間をIoTシステムにより、約15分に短縮(作業時間を約98%削減)したという。

IoTシステム構成図

各社の役割として、長崎大学はプロジェクトの統括・管理、サービスの全体構成を設計・開発・調達を、システムファイブは佐世保工業高等専門学校が開発した画像解析技術をもとにした解析ソフトの制作を、KDDIは通信および情報を漁業者に提供するまでのシステム全般の構想設計、システム開発後の販路検討を、五島市は五島市内における実証実験場所の手配・調整をそれぞれ担当。

なお、実証実験は2018年度総務省IoTサービス創出支援事業の一環として実施しており、今後も4者は五島市における「マグロ養殖の基地化」の実現を目指すとともに、漁業者の負担軽減、作業の効率化に取り組む。さらに、2019年度以降にはAIを活用した「赤潮予報」の提供を目指す。