レッドハットにとって、2018年は大きな節目の1年になった。その理由の1つが、IT業界に大きなインパクトを与えた2018年10月のIBMによる買収だ。レッドハットの望月弘一社長は、「これからもレッドハットの独立性、中立性には変化がない」と前置きしながら、「買収によって、デジタルトランスフォーメーションの基盤として、オープンソースの影響力がさらに高まることになるだろう」と話す。

一方で、2018年は、レッドハットが取り組む「オープンハイブリッドクラウド」を具現化した事例も見逃せない。「2019年は、これらの成果を、さらに拡大したい」と意気込むレッドハットの望月社長に、2018年の成果と2019年の取り組みについて聞いた。

レッドハッド  代表取締役社長 望月弘一氏

--2018年は、どんなことに取り組んできましたか--

望月氏: オープンハイブリッドクラウドの実現に向けて3つの構成要素を示し、それらを提供することに取り組んできました。この取り組みにおいて、日本でも具体的な事例が出始め、その点でも、2018年は私たちが目指している方向が正しいことが証明された1年でもあり、手応えを感じることができた1年だったといえます。

オープンハイブリッドクラウドの実現においては、Red Hat OpenStack Platformによる「ハイブリッドクラウドインフラストラクャ」、その上で稼働するアプリケーションの可搬性などを実現するRed Hat OpenShift Container Platformによる「クラウドネイティブアプリケーション基盤」、そして、Red Hat Ansible Automationにより、ハイブリッドクラウド環境をシンプルに管理する「自動化と管理」という3つの要素から取り組みを行ってきました。さらに、Red Hat Open Innovation Labsを通じて、お客さまの意識を変え、プロセスを変えるお手伝いをすることにも取り組んできました。

--オープンハイブリッドクラウドの実現としては、どんな事例が出ていますか--

望月氏: NTTコムウェアでは、SmartCloud DevaaS 2.0のクラウド基盤に、Red Hat OpenStack Platformを導入し、3000を超えるバーチャルマシンを動作させる開発環境を提供しています。ここでは、NTTグループ企業だけでなく、グループ以外のお客さまに対してもビジネスイノベーションを促進するサービスの提供を実現しており、Red Hatソリューションの革新的な活用法のひとつであるともいえます。

また、富士通では、グローバル経営における意思決定支援システムにRed Hat OpenShift Container Platformを採用し、複数のクラウドサービスにわたりアプリケーションの可搬性などを実現しています。2019年3月には、社内で培ったノウハウを生かし、FUJITSU Cloud Service for OSS上で、OpenShiftのマネージドサービスの提供を開始する予定です。さらに、九電ビジネスソリューションズでは、Red Hat Ansible Automationの導入により、運用コストを3分の1に削減するといった実績も上がっています。

このように先進的な事例を紹介できるようになったことで、これらをベースにさまざまな業界でもオープンハイブリッドクラウドを活用する仕組みが出来上がった1年であったともいえます。

競争が激しい業界に身を置く企業であればあるほど、デジタル・トランスフォーメーションに対して高い意識を持っていることを感じます。例えば、コンテナは、アジリティとベロシティ、そして柔軟性を持った経営環境を作らなくてはならないという危機意識を持ったユーザーが率先して活用し、同時に、内製化していくといった動きが出ています。

中堅中小企業や、大手企業においても業種を超えた競争が顕著になってきている業界の経営者において、変化に対し、強い危機意識を持つケースが見られます。「既存の事業だけで生き残ることができるのか」「3年後や5年後にはどんな事業構造にならなくてはいけないのか」「そのためには、何をしなくてはならないのか」といったことを真剣に考えています。その危機感を、ビジネス部門とIT部門が共有し、二人三脚で取り組む企業こそが、デジタルトランスフォーメーションを成功させることができます。そして、IT部門がイネーブラーであるだけでなく、パートナーとしての役割を果たすような関係を構築している企業こそが、デジタル・トランスフォーメーションを成功させやすい企業といえます。

一方で、システムインテグレーターもこれまでのウォーターフォール型の重厚長大なシステム構築では生き残れないという危機意識を持ち始め、コンテナなどの新たな技術を活用するといった動きが加速しています。ここでは、ユーザーの意識改革が牽引役となり、それにシステムインテグレーターがしっかりと追随していくという流れの中で、レッドハットに対する注目が高まっているといえます。

このように、2018年を振り返ると、オープンハイブリッドクラウドを実現するためのそれぞれの領域において、確実な成果が上がっており、2019年はこれをいかに拡大するかが重要なテーマになると考えています。