宮藤官九郎のオリジナル脚本によるNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)の第2回「坊っちゃん」が13日に放送された。ナビゲーターとなる落語家・古今亭志ん生(ビートたけし)の口から語られたのは、中村勘九郎演じる主人公・金栗四三の知られざる少年時代の物語。ドラマのチーフ演出を手がけるディレクターの井上剛に、ナチュラルな熱演を見せた子役について聞いた。

  • いだてん、大河

    幼い四三(久野倫太郎) 第2回の場面写真

『いだてん』は、日本が初参加した1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪までの知られざる歴史を、ユーモアを交えて描く意欲作。前半で主演を務める中村勘九郎が、日本でオリンピックに初参加したマラソン選手・金栗四三役を、中盤から主演をバトンタッチする阿部サダヲが、1964年の東京オリンピック招致に活躍した田畑政治役を演じる。

熊本で生まれた四三は、子ども時代に虚弱体質だったため、体を鍛えようと、学校まで往復12キロを走る「いだてん通学」をする。無事にたくましく成長した四三は軍人に憧れ、海軍兵学校を受験するも不合格となってしまう。四三は幼なじみのスヤ(綾瀬はるか)に励まされ、嘉納治五郎(役所広司)が校長を務める東京高等師範学校へ進学することになる。

四三の父親・金栗信彦役に田口トモロヲ、幼少期の四三役には久野倫太郎、少年期の四三役に船元大馳朗という子役がキャスティングされた。なかでも久野が演技未経験ということで、一層熱い視線を浴びることに。

――第2回は、子役の熱演が光る回となりましたが、特に久野くんのナチュラルな演技に驚きました。

久野くんは地元・熊本の子です。今回、広い範囲で呼びかけてオーディションをしました。事務所に所属している子役さんを含め、1500人くらいに会ってお話を聞いたりしたんですが、なかなか見つからず。探していたのは、主人公がもっている独特の田舎者な感じ、素朴さや作ってない感じ、まだ何色にも染まってない感じの子役で、やっと最後の最後に決まったのが素人さんでした。どうしようかなとは思ったんですが、まあいいかと(笑)。

――どんなふうに久野くんを演出されたのですか?

台本は渡していません。幸いそんなに台詞がなかったので、なんとか本人をごまかしながら演出していきました。撮影当時、彼はまだ7歳で、台本なんて読んだことないし、ましてや漢字も読めなかった。「こんなお話だよ」としゃべりながら導きましたが、その分、すごく素の部分が出ています。

――熊本ロケで、久野くんは地元の子ですから、方言もそのまま使えたということですか?

ところが、今の若い子はそんなに方言をしゃべってくれないんです。ただ、感情が高ぶると出るので、そこまでもっていくのが大変でした。

  • 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』

――久野くんと共演された俳優さんたちのリアクションはいかがでしたか?

久野くんを見て「そんな新鮮な顔をするのか!」と、大人の俳優さんも刺激されていました。プロの役者さんにはない魅力があり、それは本人も理解してない魅力なんですが、すごく良かったです。山道を登らせて、わざと暗い道に誘っていったら本当に泣き出したりとか(苦笑)。そういうスタイルをとりました。

第2話は、金栗さん自身もオリンピックなんて何も知らない頃の話です。ただ、健康になりたくて、丈夫になりたくて走っていただけなのに、そのまま世界へ連れていかれるというお話。主役はあまり計算高くない感じの人がいいなと思ったので、子役を素人さんにしたのかもしれない。真っ直ぐに走っていく感じになってほしかったので。

――『いだてん』を演出する上でのこだわりを聞かせてください。

キャラクターが痛快であること。大河ドラマであることは間違いないけど、日曜の夜に楽しめるドラマであることです。躍動感のあるスポーツが題材なので、そこに生きた人たちの肉体表現を大事にしています。

また、自分たちなりに見たことのない時代を楽しみたいと思いました。いっぱい資料を読んだり調べたりして、自分たちが通ってきた道という地平を開きたいなと。全部創意工夫なので、これが正しいというだけでやってないところもあります。明治、大正、昭和がどういう時代だったのか、たった半世紀でこんなに激変したのかと、僕らの肌感覚で取り入れた楽しいドラマにしたいです。

  • 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
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■プロフィール
井上剛(いのうえつよし)
熊本県出身のテレビディレクター、演出家。2013年に連続テレビ小説『あまちゃん』でチーフ演出を務め、東京ドラマアウォード2013 演出賞を受賞。2017年、『トットてれび』で第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。大河ドラマの演出は『利家とまつ~加賀百万石物語~』に続いて2本目だが、チーフ演出は初となった。
■著者プロフィール
山崎伸子
フリーライター、時々編集者、毎日呑兵衛。エリア情報誌、映画雑誌、映画サイトの編集者を経てフリーに。映画やドラマのインタビューやコラムを中心に執筆。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』、好きな俳優はブラッド・ピット。好きな監督は、クリストファー・ノーラン、ウディ・アレン、岩井俊二、宮崎駿、黒沢清、中村義洋。ドラマは朝ドラと大河をマスト視聴。

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