高校選手権の応援歌『僕のこと』を手掛けるMrs. GREEN APPLE [写真]=野口岳彦

 30日に開幕する第97回全国高校サッカー選手権大会の応援歌は、10代をはじめ、幅広い音楽ファンから多くの支持を集める5人組バンドMrs. GREEN APPLEの『僕のこと』となった。

『サッカーキング』では、応援歌決定後、メンバーに曲へ込めた想いや競技としてのサッカー、スポーツの魅力、自身の高校生活などを聞いた。

インタビュー=小松春生
写真=野口岳彦

◆■全て綺麗事としてではなく、しっかり肯定できるような

―――今回、全国高校サッカー選手権大会の応援歌が1月9日リリースの『僕のこと』となり、インタビューをさせていただくことになりました。よろしくお願いします。特に若井さんは、サッカーをガッツリやられていたということで。

若井滉斗 サッカーキングさんの雑誌、名鑑とか買っていました!

―――ありがとうございます!(笑) いきなりサッカートークをしたいところではありますが、まずは、高校選手権の応援歌を担当してほしいとオファーが来た時の気持ちからお聞かせください。

山中綾華 初めてお話を聞いた時は、ものすごく嬉しかったです。また、多くの方に聞いていただけるということでプレッシャーも感じました。そしてなにより、サッカーをやっていた若井が喜ぶ姿を想像しましたね。

藤澤涼架 今までいろいろなアーティストの方が応援歌を担当されていたのを、小学生の時から見ていました。小さな頃からテレビで見ていた舞台ですし、応援歌を自分たちが担当させてもらえるという嬉しさが個人的にもありました。

若井滉斗 僕自身、小学校の頃から10年間サッカーをやっていました。全国高校サッカー選手権というのは、誰もが目指す場所ですし、今回は応援歌として携わることができて、聞いた時は、まず「えー!」と驚きがあり、そしてメチャメチャ純粋に嬉しかったです。毎年家族で見ていましたし、すぐ親に連絡しました(笑)。喜びと責任感、いいものにしたいという気持ちです。

―――これまで“勝ち負け”を描いた楽曲が無いということで、その難しさを感じたとのことでしたが、楽曲のテーマとしては、“人生賛歌”というスケールの大きなものとされました。今作の楽曲制作での難しさはどういった部分でしょうか?

大森元貴 若井が言った通り、責任を感じました。オファーを聞いた時は「やった!」というより「責任重大だな」と。今作は僕が作詞作曲をしていますが、これまでの作品では“勝ち負け”について、あえて触れてこなかったところがありました。それを、高校サッカーという大きなフィールドで描くことは、すごく難しそうだなと思ったんです。

 僕らが応援歌という形で何を言えるかを考えると、優勝できるのは1校で、負けてしまうチームが何千校もいるということを、全て綺麗事としてではなく、しっかり肯定できるような、大人になった時に「第97回の全国高校サッカー選手権大会の楽曲ってこんなのだったよね」と、改めて歌詞を読んで感じるものがあればいいな、と先々も考えて書いて楽曲ですね。

―――一日一日の大切さも、楽曲では描かれています。特に高校生活の3年間は、長い人生においては短い時間かもしれませんが、人生に大きな影響を与える時間でもあると思います。

大森元貴 今は3年間って結構あっという間だなと思いますけど、15歳から18歳までの3年間は大きなことだと思いますし、一瞬なんだけど何か打ち込むものがあることは素晴らしいことです。そういうものを持っている方たちに対して失礼がないように書きたいなと思ったのがスタートです。

―――他のメンバーの皆さんは『僕のこと』を最初に聞いた時の印象はいかがでしょう。

若井滉斗 すごくリアルについて歌っている曲だと思いました。「努力も孤独も報われないことがある」とか、「奇跡は死んでいる」というフレーズは、すごくヒリヒリする部分でもあるけど、それが現実でもあります。それに対して自分はどう歩んでいこうと考えさせたり、自分が歩んできたもの、自分が目指してやってきたものを肯定してあげるような曲だなと感じました。

◆■W杯の熱はすごかった。DNAの中に何かが絶対にある

―――ちなみに皆さんはスポーツのご経験はありますか?

髙野清宗 僕は少年野球をやっていて、中学の時は陸上をやりました。スポーツはチームワークやお互いに高め合うことが必ずあるので、そこがすごく楽しみで続けていました。

山中綾華 私は中学でソフトボール部に在籍していました。センターで、守備専門だったんですけど、走り回っていましたね(笑)。そこまで強いチームではなかったんですけど、チームワークがいいところでした。

大森元貴 僕は母親からの影響もあって、5年間くらいバレーボールをやっていました。今も休みがあるとみんなでやっています。時間があれば、体は動かしていますね。

―――皆さん、体を動かすことはお好きなんですね。

大森元貴 学生の頃は好きじゃなかったんですけど、体を動かす機会がなくなってから、大事だなって気づきました。

藤澤涼架 そう。僕は10代の頃、スポーツとか全然やっていなかったんですけど、20歳を過ぎてからランニングがすごく好きになりました。いつでもできますし、体をすぐに動かせるので、走り込みをするようになりましたね。

大森元貴 大事だなって思うよね。

―――その中で若井さんはサッカーを10年間プレーされていたということで、競技の魅力は何だと感じますか?

若井滉斗 ルールを知らなくても楽しめることですね。例えば日本代表の試合で、ルールを知らない女の子も点が入ったら喜んだり、盛り上がったりできる。そういう一体感が生まれる魅力があるスポーツだと思います。

―――ちなみに小中学校時代のポジションは?

若井滉斗 FWでした。得点獲ってなんぼという感じで、ゴリゴリです(笑)。

―――「ボールは全部俺によこせ!」というタイプの?

若井滉斗 そうですね(笑)。

藤澤涼架 いや、何キャラ(笑)。

一同 (笑)。

―――プロ選手は目指していましたか?

若井滉斗 小学校の頃に始めて、「これからサッカーでやっていく」という気持ちを持っていました。

―――その気持ちがあったものの、サッカーは中学までで、その後は音楽の道へ進むことになります。すぐ切り替えることはできましたか?

若井滉斗 中学で同じクラスだった大森と出会って、中学2年生でサッカー部に在籍しながら、ギターを始めました。そこから音楽の魅力に取りつかれて、大森とバンドを組んで、高校で本格的に音楽へ、という感じでした。サッカーは中学最後の大会で、「これで一区切りつくのか」と感じていたので、自然にスパッと切り替えられました。

―――若井さん以外の皆さんはサッカーの経験はいかがでしょう。

大森元貴 幼稚園の時にサッカークラブに一瞬だけ入っていました。今はプレーする時、どうやって動けばいいか、わかりますけど、当時は自分がボールを持っていないときに何をしたらいいのかわからず、怖かったということを覚えています。あと、去年はW杯を見に行きました。生の熱とかがすごかったですね。

若井滉斗 2人で日本対セネガルを見に行きました。めちゃめちゃ感動しましたね。本田選手のゴールで涙が出ました。

大森元貴 あの熱はすごかったです。DNAの中に何かが絶対にある感じがします。サッカーを詳しく知らなくてもゾワってしましたから。

若井滉斗 知らない人とも抱き合ったりして。

大森元貴 (笑)。

―――日本に残った組の皆さんはいかがでしょう?

藤澤涼架 テレビを見て、メチャメチャ応援していましたね。サッカーはチームワーク感がすごいです。例えばパスがなぜつながったのか、素人目には理解できない場面があるんですけど、でもそれはきっと声の掛け合いとかをしているだろうし、練習過程でチームの話し合いがあってこその連携なんだなと、日本もそうですし、W杯で他の国を見ていても思いました。

―――山中さんはサッカーの経験はありますか?

山中綾華 体育の授業でやったことはあったんですけど、ボールを足でキープするのが全然できなくて、意味がわからない方向にボールが飛んでいくんですよ。それで諦めました(笑)。見る側の立場としても、恥ずかしい話、初めて一試合通してしっかりと見たのが今年のW杯で。学生の頃はクールで爽やかなスポーツというイメージを持っていたんですが、通して見たらものすごく熱くて。一瞬も目が離せないものなんだ、こんなに熱いスポーツがあったんだ、という感動がありました。

若井滉斗 そうなんですよ。全部通して見ないとわからないこともあるんですよね。

◆■いろいろなものへの感謝を忘れずにプレーしていただきたい

―――高校生が主役となる大会ですが、皆さんはどのような高校生でしたか?

大森元貴 当時から、髙野が一番変わった?

髙野清宗 (笑)。尖った感じの高校生でしたね。良く言えばムードメーカー、悪く言えば調子に乗ったやつ。

藤澤涼架 それ、周りが言って初めて成立するやつだから(笑)。僕らは年齢もバラバラだったりするので、10代の頃の素性って、割と知らないことが多いんです。僕と髙野は長野出身で、髙野の学生時代の後輩が僕の知り合いにいるんですけど、たまたま会った時に「髙野さんってすごく雰囲気変わったね」という話を聞いて。学生時代ヤバかったのかなと(笑)。

髙野清宗 バレた瞬間でしたね(笑)。しかもその後輩とは面識なくて。面識がないのに、学生時代のことを覚えられているのは、よっぽどなことをしていたんだろうなって(笑)。全然、笑い話ですよ!

藤澤涼架 みんな笑わないけど(笑)。

一同 (笑)。

―――決勝戦では会場で『僕のこと』を披露されます。大観衆の埼玉スタジアム2002で演奏することについてはいかがですか?

大森元貴 「お邪魔します」という感じですね。応援歌とはいえ、一番白熱する、観客も一番燃えているところに失礼して歌うということは、ドキドキではあります。でも大観衆の前で、というビビリはそんなにないかもしれないです。アレンジ自体はすごく開けている楽曲ですけど、歌っていることはすごく内面的であるので、そういう意味で1人に対して歌うことも、5万人に対して歌うことも、何か差があるような曲ではないですし、しっかり歌いたい一心です。

―――この楽曲を届ける選手、そして高校生たちにメッセ―ジをお願いします。

藤澤涼架 今しかない、かけがえのない時間を過ごされていると思うので、“頑張れ”という言葉を容易くは言えないんですが、心から楽しんでほしいなって思います。楽しいことだけじゃなく、いろいろな瞬間があると思いますが、それもひっくるめて、全力で向き合って楽しんでほしいです。

髙野清宗 高校生の時の経験や、その時に頑張っていたこと、ぶつかった壁だったりが、絶対に将来、自分の糧になります。その経験一つひとつがすごく大切なことなんだ、ということを心のどこかに思いながら日々過ごしてもらいたいです。

山中綾華 私は高校生時代、周りに合わせてしまうタイプで、自分に正直でいられなかったことが、今となっては悔しさを感じています。皆さんには正直にいてほしいですし、悔やむことがないように出し切ってほしいです。自分を偽って「頑張った」とか「出し切った」と思うと、絶対に後悔が残ると思うので。100%出した時、勝っても負けてもすごくいい経験になるので、出し切ってほしいと思います。

大森元貴 その人にしかない、素敵な人生だと思うので、そこに自信を持って何かいろいろなものに取り組んでほしいですね。

若井滉斗 部活とかサッカーとか、一つのことに夢中になると、どうしても自分のことばかりになって、視野が狭くなってしまう時もあると思います。僕もサッカー部時代、家族とかにもトゲトゲしていました。そういう時こそ周りを見たり、チームメイトや友人、家族を思い、いろいろなものへの感謝を忘れずにプレーしていただきたいです。

―――最後に、2019年は『僕のこと』からスタートします。Mrs. GREEN APPLEとして、どういった年にしていきたいですか?

大森元貴 2018年はすごく充実していたので、2019年は体に気をつけて、いい曲、活動ができたらなと思います。若井さんも言っていましたけど、感謝を忘れないような1年にしたいですね。