――大学受験などにはまったく興味を示さず、王様になりたいという大きな夢を抱く常磐ソウゴは、仮面ライダージオウに変身したことによって「魔王」への道を歩んでいくことになりました。ソウゴの人物像を作る際に気をつけられた部分と、ソウゴを演じる奥野壮さんの印象を教えてください。

ソウゴは「普通の高校生」なんて言われていますが、普通じゃないですよね(笑)。ナレーションなどで"普通の"と言っているのは、皮肉みたいなものです。「王様」というキーワードを設定したのはよかったなと思っています。まず王様って何だろう?という議論から始まるのですが、王様=仮面ライダーという考えには、なかなかならないんです。

仮面ライダーを説明するには、あれこれディテールを語っていけばどうにかできるかもしれないけれど、王様と言われたら「どういうことだ?」と思うじゃないですか。結局、いかに未知数なキャラクターを作ることができるか、という作業を行っているんです。第1話からいきなり、ソウゴが魔王になるんだという事実を突きつけて、どうあがいてもソウゴがオーマジオウになる運命から抜け出せないという状況を構築していきました。そこから抜け出す、抜け出さないという話になるとあまり面白くないですので、それを踏まえながら、どのような未来をソウゴが創り出していくのか、が今後のテーマになっていくのかなと思っています。

ソウゴの「未知数」「可能性」という部分を、奥野さんは非常によく表現していますね。でも、どんな状況をもポジティブにとらえて、ニコニコ笑いながら少し上から目線で対応すればソウゴという役が成立してしまうところがあるので、芝居が単調になってしまう。そこは、奥野さん自身もだんだん悩み始めているかもしれません。今までのソウゴのキャラクターを崩さずに、もう一歩、二歩成長していけるかどうか、人間としてきちんと"深み"を出していけるかどうか、これからの奥野さんに期待するところです。

――一方、ソウゴが魔王として力を身につける前に倒そうと、50年後からやってきた仮面ライダーゲイツ/明光院ゲイツを演じる押田岳さんも、実にいいキャラクターを持っていますね。現在のソウゴは倒すべき敵だと思いつつ、ソウゴの純粋さを見て相棒的なポジションになっていくという。

押田さんの存在は大きいですね。芝居が本当に上手で、ソウゴに対してもツンだったりデレだったり、複雑な感情をうまく表現しています。クールにふるまいながらも、子どもっぽさや純粋さを持ち合わしているゲイツにピッタリです。作り手からすれば、芝居の上手さに頼りきってツンデレとしてソウゴの周りを回らせるだけではない、ゲイツのキャラクターをより魅力的に見せるのが、今後のわれわれの使命でしょうね。

――映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、これまでの「平成ジェネレーションズ」シリーズと同じく現役のライダーと先輩ライダーとのクロスオーバーをベースにしながら、20作記念ならではというべき「歴代平成仮面ライダー総登場」といった大仕掛けが話題を集めて、見事大ヒットとなりました。この映画の企画の「狙い」を教えてください。

従来の「冬の仮面ライダー映画」と同じく、『ジオウ』と『ビルド』の共演にポイントを置いた作品ではあります。ファンのみなさまには『ビルド』の最後の映画であるし、『ジオウ』の最初の映画でもあるので、このクロスオーバーをまず大切にしました。その上で、「平成」という時代が終わりを迎えるにあたり、「平成仮面ライダーが生きていた時代」というものを作品の中に落とし込まなければいけない、と思ったんです。

――それが「仮面ライダーがフィクション(虚構)の存在だと知らされるソウゴと戦兎」という、映画のショッキングな展開につながるのですね。

「現実には仮面ライダーは存在しない。しかし仮面ライダーを愛する人々の記憶の中に仮面ライダーは存在する」というのが今回の映画のテーマです。現実の世界で大規模な災害が起きて、子どもたちが大変な目に遭ったとしても、仮面ライダーは何もしてくれない。世界が違うということで、現実を切り捨ててきたのが「平成仮面ライダー」の歴史なんです。そんな中でついに「平成」という時代が終わるというときに、平成仮面ライダーが現実に背中を向けたままでいいのだろうか。「自分たちの世界観はこうで、時間軸はこうですから現実とは違います」とそっぽを向いたままでは、これまで平成仮面ライダーを愛してくれたファンの人たちに対しての「裏切り」になるんじゃないか。フィクションの世界でお高くとまっているのではなく、これまで応援してくれたファンのみなさんと同じフィールドにきちんと降りていかないと、「平成仮面ライダー」なんて名乗ってはいけないと考え始めました。

同じ時代を生きてきた平成ライダーと、ファンのみなさんが同じ地平に立ったとき、そこから何が生まれるのか、ということを描いてみたかったのです。そこには、20作にもわたって作られてきた「平成仮面ライダー」という"虚構"に対しての「感謝」と、これまで仮面ライダーを愛してくださったみなさんへの「感謝」の気持ちが大きく存在しています。

映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー 平成ジェネレーションズ FOREVER』は現在大ヒット公開中。なお、マイナビニュースでは平成仮面ライダー20作を記念した『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』大特集を展開している。

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