2019年の自作パーツの動向を占う「PCテクノロジートレンド」。プロセス編、CPU編に続いては、GPU編をお届けする。NVIDIAとAMDの2大メーカーに加えて、2020年にディスクリートGPUの出荷を表明したIntelについて動向を紹介する。

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2018年9月にGeForce RTXシリーズ3製品を発表したNVIDIA。説明は繰り返さないが、確かに性能は出るが、ミドルレンジのGeForce RTX 2070ですら445平方mmという巨大なダイとなる。

とはいえ、そのビッグダイと出荷が始まったばかりで決して安くないGDDR6と組み合わせているにもかかわらず、499ドル(OverclockされたFounder Editionで599ドル)というお値段はかなり割安感がある。

もっとも日本だと、2018年末の段階で一番安値だった玄人志向でも67,070円(送料別)だからあんまり割安感はない。

ところでRTXシリーズのスペックを簡単にまとめたのが以下の表となる。

製品名 Quadro RTX 6000 GeForce RTX 2080 Ti Quadro RTX 5000 GeForce RTX 2080 GeForce RTX 2070
コア TU102 TU102 TU104 TU104 TU106
GPC 6 6 6 6 3
TPU 36 34 24 23 18
SM 72 68 48 46 36
CUDA Core 4608 4352 3072 2944 2304

TU102とTU104は、全SMをフルに有効にした製品(Quadro RTX 6000/Quadro RTX 5000)と、一部SMを無効化した製品(GeForce RTX 2080 Ti/GeForce RTX 2080)があるのに、TU106だけ全SMが有効の製品しかないというのはちょっと考えにくい。

もちろんTU102/104よりダイが小さいから、Yieldの悪化に影響を受けにくいといえばそれはそうだし、TSMC 12FFNのYieldがものすごく高いから大丈夫という可能性もないわけではないのだが、それでも445平方mmのダイともなれば、多少なりとも欠陥はあるはずで、これのフォローアップは必要だと思う。

そう考えると、同じTU106のダイを利用した下位モデルが出るのは必然と言える。海外では2018年末に、GeForce RTX 2060のニュースを報じている(例えばVIDEOCARDZ)。GeForce RTX 2060はGeForce RTX 2070と同じTU106を利用しつつ、一部のSMを無効化したモデルである。

さらに、GeForce RTX 2060のRT CoreとTensor Coreを無効化した廉価版として、GeForce GTX 1160なる製品が出現したというニュース(例えばTom's Hardware)も出てきている。

どちらも真偽のほどは不明(何しろ公式発表はない)だが、マーケティング的には極めてありそうな構成だ。ただRT CoreとTensor Coreを無効化する製品はあくまでGeForce GTX 1160までで、GeForce GTX 1170とか1180などは用意されないようだ。

必要があれば準備するのは簡単だと思うが、ダイは一緒だからRT CoreなりTensor Coreに欠陥があるダイの救済にしかならないし、NVIDIAとしてはDirectX Ray Tracing対応をアピールするとともに、広く普及させたいから、わざとこれを外して水を掛けるような真似はしたくないだろう。

エントリー向けにTU107コアベースの製品も予定する?

さて、これに続く製品である。GPU-Zでお馴染みTechPowerUpは、TU107なるコアの詳細を報じている

こちらはSM数が896、ROPが32、Tensor Coreが112、RT Coreが14というもので、これを搭載する製品がGeForce RTX 2050だという。ありかなしかで言えば「ありそう」というのが筆者の判断である。なぜなら、NVIDIAは2019年、プロセス微細化の恩恵に預かれないからだ。

プロセス編におけるSamsungのところで述べたように、NVIDIAはSamsungの7LPPを利用する予定だ。

これは理にかなった話で、恐らくダイサイズは半分以上に削減できるだろうし、動作周波数も更に引き上げられよう。コスト的にも、EUVだとウェハのコストはいくぶん安くなる(16/12nm世代の1.5倍程度)から、ダイサイズを半減できれば結局チップの原価も下げられる。

問題は、7nm EUVを使った製品は2019年中に出荷できないことだ。TSMCにしてもSamsungにしても、7nmのEUVのVolume Productionは早くて2019年第3四半期、普通に考えれば第4四半期あたりになるから、これを利用した製品が出荷されるのは早くて2020年の第1四半期、現実的には2020年のCOMPUTEX前後あたりではないかと予想される。

NVIDIAは、ダイサイズを半減させられるとはいえ、ウェハコストが倍増するDUVのマルチパターニングに興味がなかった。それはDUVのマルチパターニングに走ったAMDとは立場が異なるからだ。

AMDの場合、GPUに関してはマーケットシェアが壊滅的に低くなっており、これを巻き返すためには一刻も早く新製品を投入する必要がある。対してNVIDIAは圧倒的なシェアを獲得しており、ここで1年新製品を投入しなかったとしても、そうそうシェアが急速に落ちるわけではない。

まぁそうはいっても、定期的にラインナップの更新は必要である。それもあってTU107をラインナップするのは不思議ではない。エントリからハイエンドまでTuringで統合しておくのは、DirectX Ray Tracing対応のアプリケーションを増やすという意味でも重要だし、AMDは当面Ray Tracingの実装をしない予定なので、競合との差別化という意味でも重要である。

とりあえずNVIDIA的にはTU10Xシリーズで、AMDのNaviを迎え撃つには十分、と考えていると思われる。

ちなみに現状、2020年の7nm EUVを利用するラインナップについては全く情報がない。このあたりは2019年のGTCで何かヒントが出てくるといいのだが。