日本マイクロソフトの代表取締役社長を務める平野拓也氏は、以下の年頭所感(抜粋)を発表した。

テクノロジの力で、日本の社会変革への貢献を目指す

昨年は、世界的に経済の安定性が混迷を極め、見通しが一層不透明性を増しました。ハイテク業界においては、AIやIoTなどによる技術革新が進み、産業や社会のあり方自体の変化にも大きく影響を与え、デジタル変革が加速しました。一方でプライバシーやセキュリティでの課題も多く話題になりました。日本においては年間を通して、大雪や豪雨、台風、地震など自然災害が多発し、甚大な被害を各地にもたらし、行政による政策面、一般生活、企業や組織においても災害対策や環境への目配りもより一層重要になっています。

Tech Intensityの加速

世界や社会が大きく変化し、不確実性が高まる一方で、あらゆる変化をリスクとしてだけ捉えるのではなく、機会(チャンス)と考えることで、より良い社会の実現につながることは明らかです。そして、チャンスを活かし、競争力を高め、変化に先駆けてアクションを取るためには、イノベーションが不可欠です。変化をきっかけに、ビジネスプロセスや社員のマインドセットも変わり、イノベーションが連鎖していくことで、大きな変革が生まれます。

当社では、このイノベーションの連鎖を支える基盤を「Tech Intensity」と呼んでいます。Tech Intensityの実現には、どれだけテクノロジを経営の柱と認識し導入しているか、それを組織文化として有効活用し、どれだけ他社と差別化できているかが重要です。我々はすでにデジタルによって繋がった世界においてビジネスや生活を営んでおり、ビジネスや生活の質をより良くするためには、Tech Intensityを重視したデジタルトランスフォーメーション(変革)が求められます。

当社の企業ミッション「地球上のすべての個人と、すべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」は、まさにこのTech Intensityを基礎として成り立っています。本社CEOサティア ナデラは、このミッションに基づき「マイクロソフトは、より多くの人々が、より多くのテクノロジを生み出すためのテクノロジを提供する」と述べ、IT企業であるかないかに関わらず、当社のテクノロジがTech Intensity実現に貢献できると提唱しています。

日本においても、Tech Intensityを礎にデジタル変革を推し進める企業が出始めています。テクノロジの導入にあたっては、様々な業種業態のお客様が、変革を進めるためのテクノロジパートナーとして当社を信頼いただき、ビジョン作りから一緒に議論させていただくケースも増えてきました。クラウドやAI(人工知能)、Mixed Reality(複合現実)、IoTなどのインテリジェントテクノロジを活用したビジネス変革、デジタル変革によるお客様の成功が、当社のミッションの実現であり、すなわち当社の成功につながります。

Society 5.0の実現に向けて貢献

当社は、デジタル変革により課題解決と価値創造を支援することで、日本政府が提唱する「Society 5.0」にも貢献できるものと考えています。当社では、あらゆる産業・業種業態でのデジタルテクノロジの活用や、より高い価値を生み出すことができる新しい働き方の提案、そして新しいライフスタイルの創造といった、「インダストリーイノベーション」「ワークスタイルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」という「3つのイノベーション」を軸に、「Society 5.0の実現」や、「日本の社会変革」へ貢献することを目指します。

さらに未来を担う子供たちや若者を対象としたコンピューターサイエンス教育によるAI人材の育成や、NPO、関連団体、大学などと協力して様々な社会的な課題の解決に取り組む「AI for Good」も推進します。各方面との連携により、AIが災害対策やサステナビリティ、障碍者への支援にもポジティブな効用をもたらすことで、あらゆる人が孤立したり、排除されたりしない社会的な包摂の実現にテクノロジが貢献することを期待しています。結果として、日本の国際競争力強化や、労働力の強化にもつながっていくと考えています。

Tech Intensity やSociety 5.0を推進するうえで、古いIT環境のままでは効果的ではありません。そのため、クラウド利用の裾野を広げる活動も一層推進します。Windows 7、Windows Server 2008 (2020年1月14日)、Office 2010およびSQL Server 2008(2019年7月9日)のサポート終了を好機と捉え、パートナー企業各社と連携し、古いプラットフォームで稼働するシステムからMicrosoft Azure やMicrosoft 365など最新クラウド環境への移行を加速します。ITシステムを最新環境にすることで、安心・安全で、より高い生産性や業務効率の実現を図ります。

TRUST(信頼)への取り組みを拡大

チャンスを活かす一方で、当社はテクノロジ企業としての責任も十分に果たすべきだと考えています。2020年東京オリンピック/パラリンピックの開催などに向けて、ますますサイバーセキュリティ対策の重要性は増していきますし、昨年世界的に話題になったデータのプライバシーについても、デジタル上のプライバシーを保護することは今や基本的な「人権」となっています。

日本においても、法規制を遵守し、適切に取り扱っていきます。今後AIは凄まじい勢いで普及し、その重要性が増す中で「倫理の伴ったAI」を実現することは必須です。ため、社内の取り組みに加えて、業界各社やアカデミック分野とも連携し、普遍的なAIの設計原則に向けた働きかけを行っていきます。

最後に、本年は「平成」から新しい時代に移っていきます。1986年設立の日本マイクロソフトは、まさに「平成」という時代に会社として成長しました。

この30年を振り返ると、仕事や一般生活シーンにおけるPCやインターネットの普及、法人におけるIT基盤の整備、様々なデジタルテクノロジを組み合わせたデジタルワーク&ライフの環境づくりを、パートナー様やお客様と連携して推進し、日本社会において少なからずお役に立てたのでは考えています。

本年5月には新元号に変わり、幅広いITシステムでの対応が必要となります。当社は責任ある企業として、新元号への対応を重要課題として位置付け、パートナー様やお客様と連携しながら、米国本社を含め全社を挙げて準備を進めていきます。

引き続き、お客様のデジタル変革の推進に向けて全力で取り組み、日本の社会変革に貢献していくことを目指します。

本年も変わらぬご指導ご鞭撻のほど よろしくお願い申し上げます。