例年、進学や進級、移動などで、部屋を探す人が増えるのは、1月〜3月といわれてきました。ところが、最近は12月中に賃貸契約をする人が増えているといいます。

いわば、繁忙期が「前倒し」になっている状態なのです。では、その際の注意点とはどこにあるのでしょうか。上手な住まい探しのコツをご紹介しましょう。

賃貸の繁忙期は年々、前倒しに? その理由とは

1月~3月といえば、進級や進学、就職など、「新しい部屋に住み替えようかな」という人が増える時期。いわゆる「繁忙期」で、多くの人がこの時期に新生活の住まいを探していました。メリットは賃貸の数が多く選択肢が豊富なことですが、デメリットもあり、競争相手が多いのですぐに決断を迫られる、不動産会社の担当が忙しくきちんと対応してもらえない、という点がありました。

ところが、ここ数年、賃貸の繁忙期が前倒しになっていて、年内、つまり12月に住まいを探し、契約するという人が増えているといいます。

その理由は、少子化と受験の多様化にあります。近年では指定校推薦やAO入試など、受験が多様化し、以前よりも合否が早めにわかることが増えています。専門学校や大学なども少子化の影響で、一人でも多くの学生を早めに確保したいと考えているのです。

また、少子化の影響を受けているのは、不動産を所有している大家さんも同じです。以前は、春になれば新入生が入居してくれましたが、近年では空室も増え、「このままでは、来春の新しい借り手が見つからないかも…?」と不安を抱えているといいます。

そこで増えているのが、年内に契約して部屋は確保するものの、実際の家賃が発生するのは、2月または3月から、という「フリーレント契約」です。もしくは交渉によって、契約から1カ月以内に入居するのであれば、実際の入居日から家賃が発生するように調整してもらえるのです。これで部屋を借りたい人は、余計な負担をすることなく、早めに確保することができます。また、退去情報が入りはじめるので、いち早く募集している部屋を見学できることもあります。

一方で、不動産会社の担当者も12月であれば時間に余裕があるため、ていねいに案内してもらえます。さらに、大家さんからみれば、早めに借り手が見つかるのであれば大歓迎で、多少の交渉(家賃発生日、フリーレント、設備のグレードアップなど)には応じたいという状況なのです。つまり、借り手、不動産会社、大家さん3者にとって「いいことづくめ」のため、広まっているのが賃貸の「年内契約」なのです。

「年内契約」の注意点は? 落とし穴はあるの?

もちろん、年内中にお部屋探しをするうえでの注意点もあります。

ひとつは、12月中の不動産会社はあまり忙しくないものの、1月〜3月に入ってしまうと忙しくなってしまうという点です。「どうしようかな〜」と何週間も迷ったり、何回も現地に足を運んだりすることはできません。あらかじめ相場や自分の優先順位付けを明確にしておき、「短期決戦」で決断する必要があります。

2つ目は、年末が近づくにしたがって慌ただしくなる点です。契約には住民票をはじめ、各種書類が必要になります。ただでさえ忙しい年末年始、各種書類を集めてまわるとなると、よりいっそう忙しくなることでしょう。

3つ目は、借りたい人の多い人気エリアだと、家賃無料の「フリーレント」交渉などはしにくい点です。基本的には契約した時点で、家賃発生日を決めますが、家賃発生日を1カ月も遅くすることは難しいもの。お部屋がいくら気に入ったからといって数カ月分も二重家賃が発生してしまっては、負担になりますので、注意してください。

4つ目は、「フリーレント契約」は、ある一定期間住み続けるという特約がついていて、その期間前に退去すると、無料にしていた分の家賃が請求されることもある点です。転勤などで突然退去する予定がある人は、契約時に確認が必要です。

5つ目は、契約更新月です。12月に契約すると、多くの場合その2年後に契約更新を行います。そのまま住み続ける場合はいいのですが、進級や就職などで状況が変わり、「翌春には転居したいけど、契約更新は12月!どうしよう」と迷うことになりかねません。

これらの注意点もありますが、家を探そうと考えている人は、「契約」とまでいかなくとも、年内中に動き出すのがオススメです。特に「家探しが初めて」「初めての一人暮らし」になるのであれば、なおのこと早めに動き出し、家賃の相場、設備、治安など、不動産会社の担当者から繁忙期になる前にいろいろと教えてもらいましょう。話を聞いてもらっているうちに不安も解決し、自分の理想の部屋に近づくことができるはずです。

嘉屋恭子

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得