2018年も残すところあとわずか。スマートフォン業界でも、この2018年は大きなトピックが相次いで登場しました。本企画では、2018年に巻き起こったスマホ業界の大きなトピックを、Q&A形式で紹介。携帯電話に関連した幅広い分野で活躍するフリーライターの佐野正弘氏が、概要や背景をわかりやすく解説していきます。

それでは、2018年のスマートフォン業界を振り返っていきましょう。今回は「業界動向編」です。


トピック1:携帯料金の「分離プラン」とは?

大手キャリアの携帯料金はこれまで、データ通信量や基本料金といった回線にまつわる料金と、スマートフォン本体の端末料金が一体化されていた状態でした。この2018年は、携帯料金をそれぞれに分ける「分離プラン」が、総務省の提言で進みました。

携帯料金の「分離プラン」は、携帯電話の通信料金と、スマートフォンなどの端末代を、それぞれ分けて請求する仕組みです。KDDI(au)の「auピタットプラン」「auフラットプラン」、ソフトバンクの「ウルトラギガモンスター+」「ミニモンスター」などが分離プランの代表例となります。

  • au版iPhone XS Max 64GBの購入例

    au版iPhone XS Max 64GBの購入を、「auピタットプラン」で料金シミュレーションしてみた例。赤い四角で囲った端末料金と、利用料金部分が分かれ、それぞれに割引サービスがある

大手キャリアの料金は従来、通信料金と端末料金を一体で請求することで、毎月の通信料金に端末代金の値引き分を上乗せすることで、iPhoneのように非常に高額なスマートフォンを「実質0円」など、非常に安い価格で購入できるようにしていました。

ですがこの仕組みでは、端末を頻繁に買い替える人だと何度も大幅な値引きを受けられるので非常にお得なのですが、逆にほとんど買い替えない人は、他人の値引き分も負担しなければならないため損をしており、不公平だという意見が挙がっていました。また端末ごとに値引き額が異なる、端末代の分割払いと、2年間の長期契約を前提とした割引きが密接に絡み合うことで、解約のタイミングが分かりにくくなるなど複雑だという声も多く上がっていたのです。

そこで総務省が推し進めたのが分離プランの導入です。通信料金と端末代金を完全に分けてしまえば、端末代の値引きがなくなるぶん、通信料金は安く、シンプルで分かりやすくなります。ただし一方で、通信料金から端末代金を値引くことはできなくなるため、10万円を超えるスマートフォンもそのままの値段で購入しなければいけなくなる、という弱点もあります。

  • 9月12日(米国自時間)に発表された新iPhone「iPhone XS Max」(右)と、「iPhone 8 Plus」(左)。従来の”一体型プラン”は、iPhoneのような高額なスマートフォンが安くなるシステムだった

トピック2:携帯料金は本当に4割安くなるの?

菅官房長官による「4割値下げ」発言は大きな話題となりました。これを受けて、大手キャリアは決算発表のなかで、自社の料金プランのスタンスを表明。NTTドコモは、低廉な料金プランの構想があると明かしました。

2018年8月、菅義偉官房長官が「携帯電話の料金は4割値下げする余地がある」と発言したことが大きな話題となりました。実質的にその発言を受ける形で、総務省が「モバイル市場の競争環境に関する研究会」という有識者会議を実施。11月に「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」という緊急提言案を打ち出しています。

この提言案の大きな目玉といえるのは、トピック1で触れた「分離プラン」の導入です。大手キャリアが分離プランを導入することで、通信料金から端末代の値引き分をなくし、通信料金を引き下げようとしている訳です。

そうした行政の動きを反映してか、分離プランを導入していなかったNTTドコモも、2019年第1四半期に、分離プランを軸とした新しい料金プランを導入すると発表しています。同社の発表によると、利用者の使い方によって、通信料金が現在から2~4割程度安くなるとしています。

  • NTTドコモは2018年10月31日に行った、2019年3月期 第2四半期決算会見で、低料金プランの構想を明かした

既に分離プランを導入したauソフトバンクのケースを見ても、以前の料金プランと現在のプランを比べ、通信料金が必ずしも4割下がるという訳ではないようです。それゆえ分離プランを導入したからといって、全ての人の料金が4割下がるとは考えにくいのですが、ある程度下がる可能性があることは確かでしょう。ただしその代わりに、スマートフォンが安く買えなくなることも覚悟しておく必要があります。