スマホ決済サービスPayPayの「100億円還元」キャンペーンが終了した。来年3月末までの予定で12月4日に始まったばかりにも関わらず、わずか10日間で終わってしまったことも大きな話題を呼んだ

PayPayの100億円キャンペーンはわずか10日間で終了

空前の盛り上がりを見せた一方で、メンテナンスによるサービス停止やクレジットカードの不正利用などトラブルが続出し、大きくイメージダウンしたPayPay。今後の展開はどうなるのだろうか。

盛況のうちにキャンペーンは終了、トラブルも発生

PayPayの100億円キャンペーンが12月13日23時59分に終わると発表されたのは、同日の22時。この時刻にはビックカメラの店舗も閉店しており、キャンペーンの終了自体はつつがなく行われた。

キャンペーン終了後のビックカメラに掲示された案内

一方、PayPayはトラブルの多さも目立った。終了日の夕方には噂を聞きつけた客が殺到したせいか、緊急メンテナンスで1時間以上に渡ってサービスが停止。その後は他人のPayPayアカウントにクレジットカードが登録され、身に覚えのない買い物に使われたとの報告が相次ぎ、セキュリティの不備が指摘された。

問題とされたPayPayアプリのクレジットカード登録画面では、セキュリティコードの入力試行回数を制限していなかったという。つまり、セキュリティコードを総当たりで破ることもできたという状態だ。これを受け、PayPayは12月18日にはアプリを修正。12月19日のソフトバンクによる上場会見では、PayPayに共同出資する親会社の社長として宮内謙氏が謝罪する事態になった。

PayPayの不正利用問題を受け、ソフトバンクの上場会見で宮内社長が謝罪

PayPayに不正に登録されたクレジットカード情報の入手経路は明らかになっていないが、クレジットカードはその仕組み上、常に不正利用のリスクに晒されている。PayPayを使っているかどうかに関わらず、利用者は定期的にカードの利用明細を確認しなければならないのが現状だ。

これに対して、NTTドコモの「d払い」ではクレジットカードの登録時に本人認証(3Dセキュア)を求めている。アップルの「Apple Pay」では他人のクレジットカードを勝手に登録できることが2015年頃に問題になり、本人確認の仕組みが導入された経緯がある。

Apple Payにクレジットカードを登録するには本人確認が必要。当初はこうした仕組みがなく、問題になった

PayPayは残念ながら、ローンチまでのスピードや利便性を優先するあまり、セキュリティを疎かにした印象を与えてしまった。

認知度はNo.1に 「次の100億円」はあるか

一方、12月19日のソフトバンクによる上場会見では、PayPayがキャンペーン開始後に大きく認知度を向上させ、ライバルの決済サービスを追い抜いたことをアピールした。

認知度やサービス理解、利用意向がNo.1に(12月19日の上場会見にて、ソフトバンク調べ)

一連のトラブルが報じられたこともあり、必ずしもポジティブな評価だけではないとみられるものの認知度は伸びており、利用意向も大きく伸びている。スマホ決済を使ってみたいと思う人が増えたのは成功といえそうだ。これをチャンスと見たのか、後を追うようにライバルのLINE PayやOrigami Payも相次いでキャンペーンを打ち出している。

次の展開として注目したいのは、来年1月10日のポイント付与だ。100億円還元のキャンペーンにより、100億円相当のポイントがユーザーのアカウントに付与される。加盟店にとっては大きなチャンスになるだろう。

気になるのは今後の展開だ。今回の100億円だけでなく、PayPayは新たなキャンペーンを予定しているという。業界内ではPayPayの用意した予算は100億円にとどまらず、追加で費用を投じる余力を残しているという見方が多い。一連のトラブルによるイメージダウンを払拭する必要も出てきており、新年早々、再びの「PayPay祭り」が期待できるかもしれない。

(山口健太)