GROOVE Xは12月18日、同社初の製品として、家庭向けロボット「LOVOT」(らぼっと)を発表した。"LOVOT"という名前は、"LOVE"と"ROBOT"に由来。人間の役には立たないが、人間に愛されるロボットを目指したという。最初は2体セットで発売し、価格は59万8000円(税別)。2019年秋冬の出荷予定で、同日、WEB限定の先行予約の受付を開始した。
同社の創業者で代表取締役の林要氏は、ソフトバンクのヒト型ロボット「Pepper」の開発メンバーとしても知られる。その林氏がソフトバンクから独立し、LOVOTで目指したのは「四次元ポケットの無いドラえもん」だったという。あまり役には立たないが、そばにいるだけで心の支えになる。LOVOTはその第一歩というわけだ。
LOVOTの身長は43cm、重量は3kg台で、室内を車輪で移動することができる。頭の上に乗っている円柱は「センサーホーン」と呼ばれており、360°カメラ、マイク、温度カメラ(サーモグラフィー)などを搭載。これらのセンサーにより、vSLAMでリアルタイムに地図を生成したり、顔認識でその人間が誰か判別するようなことが可能だ。
こうした高度な機能を実現するため、LOVOTの計算能力はかなり高い。メインCPUはノート向けのx86プロセッサで、I/O周りの処理を担当するサブCPUはArm。ディープラーニング用のアクセラレータとしてFPGAまで搭載する。さらに、充電ステーション(ネスト)にはエッジサーバーとしての機能もあり、デスクトップ向けのx86プロセッサで処理を行う。
LOVOTは全身にタッチセンサーを配置。触り方が分かるので、優しい人は好きになり、乱暴な人は嫌いになるなど、相手によって行動が分かれるようになる。好きな人に抱っこされて安心すると、眠ってしまうこともあるとか。
動作は基本的に自律。ボディの周囲に障害物センサーを搭載しており、何かにぶつかったり、段差から落ちるのを避けることができる。自由度は13。内蔵するリチウムイオンバッテリの電力が少なくなってきたら、自動でネストまで戻って充電を行う。稼働時間は45分で、充電時間は15分。人間の活動に合わせ、夜間は寝る。
林氏は、「生命感を持たせるために、モーターの数よりも、計算能力やセンシング能力を重視して、反応良く動けることを優先した」という。生命感のためには、表現力も重要。ディスプレイに表示される目には無数のパターンを備え、個性を実現した。鳴き声は録音データの再生ではなく、動的に生成する。
製品の位置付けとしてはソニーの「aibo」に近いだろうが、aiboが明確にイヌ型であるのに対し、LOVOTは特定の動物には似せていない。これについて、林氏は「イヌ型やネコ型などの目標があると作りやすいが、現在のロボット技術では、対象と同じ性能が出るとは限らない。LOVOTは愛着を持ってもらう器として最適な形状にした」と意図を説明する。
なお、「役に立たない」とは書いたものの、家庭用ロボットとして、役に立つ機能も用意されている。ネット経由で、留守中の家の様子を確認したり、隣の部屋から赤ちゃんを見守ったりするようなことが可能。また地方の親元に置いておいて、活動履歴を見ることで、無事かどうか確認するような使い方もできる。
LOVOTは、ロボット同士のコミュニケーションも可能。ペットと同じように、LOVOTは2体いるとより楽しいとのことで、まずは2体セットの「デュオ」から発売を開始する。2体のLOVOTのほかネストも含まれ、価格は59万8000円(税別)。ソフトウェア利用料として、別途月額料金が必要になり、デュオの場合は2体分で1万9960円(同)からとなる。
デュオの次には、ロボット1体とネストの「ソロ」を発売する。こちらの価格は34万9000円(同)。月額料金は1体分になるので9980円(同)からとなる。出荷の時期は、デュオが2019年秋冬、ソロが2020年中の予定。
本体価格も月額料金も家庭用ロボットとしては高めな印象だが、林氏は「AIとロボティクス技術が融合した、これまでに無い家族型ロボットを作るという信念の元、妥協無く作った」と説明。実はこれでも「ほぼ製造原価」とのことで、「日本発の新産業を立ち上げ、マーケットを切り拓きたいという覚悟を持った価格設定」なのだという。
記者会見のあと、タッチ&トライで実際にLOVOTに触ることができた。抱っこしてみると、思っていたよりも体温が温かい印象。これで生命感が感じられる一方、夏の室内では発熱がやや気がかりなところだが、LOVOTは温度カメラのデータを見て、自動で涼しい方に移動する機能なども備えているということだ。