ベリタステクノロジーズはこのほど、人工知能(AI)と機械学習(ML)を用いて、プロアクティブなサポートを提供するサービス「Veritas Predictive Insights」の提供を開始した。

新サービスはユーザーにどのようなメリットをもたらすのだろうか。米Veritasでデータ保護製品担当開発総責任者を担うJane Zhu(ジェーン・ツー)氏に話を聞いた。

  • 米Veritas データ保護製品担当開発総責任者 Jane Zhu氏

予測分析でダウンタイムを最小化し、生産性を向上

「Veritas Predictive Insights」は、同社の顧客の環境に設置されているアプライアンスから収集して匿名化・暗号化したイベントデータを、クラウドベースのAI/MLエンジンで解析して潜在的な問題を検出し、問題が発生する前に修復策を提供するものだ。

同サービスは、初めにバックアップアプライアンス「Veritas NetBackup」のユーザーを対象として提供を始め、今後、「Veritas Access」 「Veritas Flex」のユーザーに対しても提供していく。

具体的には、アプライアンスのキャパシティ、ファームウェア、パッチ、イベント、設定、環境、コンポーネントに関するデータを自動で収集し、AI/機械学習エンジンによって分析する。AI/機械学習エンジンのアルゴリズムは複数用意されており、状況に合わせて適用されるほか、自己学習機能を備えている。

「Veritas Predictive Insights」は、メンテナンス、ITリソース、サポートにまつわる予測分析を提供する。分析結果は、システムの可用性を示す「スコア」として表示される。これにより、アプライアンスが抱える問題を事前に対処してダウンタイムを削減することで、可用性を向上する

  • アプライアンスの状態がスコアとして可視化される。赤い表示は「リスクがある」、緑の表示は「問題がない」状態を示す

各アプライアンスに関しては、ストレージの利用状況をモニタリングして、キャパシティの予測と最適化を行う。これにより、必要以上のリソースを割り当てることを回避し、投資の最適化を実現する。

  • アプライアンスごとにストレージの利用状況をモニタリングし、予測を示す

強みはAI、機械学習利用に必須となるデータ量

Zhu氏は「管理ツールには数百万のイベント・アラートが上がり、それにすべて対応するとなると膨大な手間と時間がかかる。しかし、Veritas Predictive Insightsを利用すれば、具体的な対応策が提示されるので、クリティカルなアラートだけ対応すればよくなり、IT部門の生産性が向上する」と話す。

同サービスを提供するに至った理由について、Zhu氏は「ビジネスの要件が変わってきたから」と説明する。企業においてITやデータの重要性が高まるにつれ、「計画外のストレージの増加」「サポート切れのファームウェアの継続利用」「パッチの未適用」といった問題により、システムがダウンすることで、企業は膨大なコストを払っているという。

つまり、企業がITを利用する上でのリスクとコストを抑えるには、システムのダウンタイムを最小化する必要があるというわけだ。その結果、生産性の向上も見込める。

AIの利用がトレンドになっている今、同様のサービスを提供しているベンダーはいる。類似のサービスとベリタスのサービスは何が違うのか。Zhu氏に聞いてみたところ、「NetBackupをはじめ、われわれのアプライアンスは多くのユーザーに利用されており、競合の製品と比べて、データを収集できるポイントが多い。その結果、AI/機械学習エンジンで分析できるデータ量も多くなる。データ量に関してはどのベンダーにも負けていない」と話した。

AIや機械学習を利用するうえで、正確な分析を実現するカギがデータの量だ。ベリタスはAI利用のキモとなるデータ量において、強みを持っているというわけだ。

日本のユーザーのニーズに応えるVeritas Predictive Insights

Zhu氏は「セキュリティ、サポートの品質に厳しい日本のユーザーにこそ、ぜひVeritas Predictive Insightsを使ってもらいたい」と話す。先述したが、アプライアンスからデータを収集する際、データは暗号化されるため、セキュリティは担保される。Veritas Predictive Insightsを利用することで、これまでは障害が起きてから対応していたところ、事前に障害を回避して、システムのダウンを防ぐことが可能になる。

今後の展開としては、分析対象をアプライアンスとしているところ、NetBackupのソフトウェアにもモジュールを追加することで、対応していきたいという。ソフトウェアの場合、ハードウェアの故障は発生しないが、ストレージのキャパシティやパッチの未適用は関係ある。

また、アプライアンスの状態を示す「スコア」については、コンプライアンスも指標として加えていくことも視野に入れているという。例えば、データのコピーの数に関するポリシーを決めておくことで、これに反するコピーが行われた場合にアラートを発することで、ポリシー違反を知らせる。

今年はGDPR(EU一般データ保護規則)が施行されたが、世界中でデータ保護に関する規則が厳格になってきている。企業では、データ保護に対するさまざまな施策が必要となっている。

「360度データ管理」をミッションに掲げるベリタスにとって、顧客がデータ保護と活用を行う上で「Veritas Predictive Insights」は大きな役割を果たすことになるだろう。