「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」シリーズをはじめ、さまざまな映像作品を手がけている東映が、同社初の試みとして特撮番組のプロデューサーを募集する。

"特撮番組のプロフェッショナル"となる人材を探す今回の試みは、"特撮プロデューサー"というくくりが初であったこともあり、ファンを中心に大きな反響を呼んだ。ここでは、戦隊シリーズ、平成仮面ライダーシリーズを数多く手がけてきた東映の白倉伸一郎プロデューサーに、今回の募集の意図と、新しい人材に求めるもの、そして今後のシリーズへの思いについて訊いた。

  • 東映の白倉伸一郎プロデューサー 撮影:宮川朋久

――今回、"特撮プロデューサー"という形での募集が話題となっていますが、この意図はどんなところにあったのでしょうか。

本当はほかの職種の人も募集したいんですけれど、一番通りがいいこの形から始めようというところですね。

――特撮プロデューサーとは、具体的には何をする人なのでしょう。

具体的には、「仮面ライダー」と「スーパー戦隊」シリーズの2枠がありがたいことに今も継続しているので、そこを担当していただくことになります。

――白倉さんご自身は、かつてどのような理由で東映を志望されたのでしょうか。

私は東映オタク……スタッフミーハーだったんですよ。もともと東映の映画やテレビ番組が好きで、水が合うような気がしていました。"好き"というのはよくも悪くもで、悪いというかメチャクチャだった。当時の学生だったころの見立てなんですけれど、他社のようにきちんと真面目に作っていると思えない(笑)。

映画でも、『新宿純愛物語』(1987年)という作品があるんですけれど、これって非常に青春ムービーらしいタイトルでしょう。でも観に行くと、なんだ『ビーバップハイスクール』じゃないか、バトルものじゃないか! なんだこのタイトルは!と。そういう会社だと思っていました。

学生さんで、性根がねじ曲がった映画ファンというのは、キャストにいかなくてスタッフさんにいくんですよ。その中でも、監督と脚本ってわかりやすいですよね。でもどんどん、"プロデューサー"というものに目がいくようになりました。

作品を観ていくうちに、お気に入りの監督や脚本家というのができてくるんですけれど、"嫌いな監督と嫌いな脚本家"の組み合わせで名作ができあがったり、"好きな監督と好きな脚本家"の組み合わせでも大失敗することがある。あくまで学生から見てなんですけれどね。これはなんだと思ったんです。これは誰かがすごくうまくやっているか、下手を打っているんじゃないか……。

それで「さてはこの"プロデューサー"と書いてあるヤツの仕業だな」ということが見えてくる。あくまで"学生の立場として"ですよ。妙にここを強調するのは、当時は当たり前のことを知らなかったから。監督とか脚本家がクリエイターだと思っていたんですよ。こんなことを言っちゃいけないんですけれど。

実際に入ってみたら、脚本家や監督が自分の好きなものを自由奔放にやっているはずがなかった。当然、仕事としての命題があって、ある種いい意味での職人として、注文に見合うものを仕上げていくということをしていたんです。どこからともなく脚本家や監督が手を上げて、「こういう作品っていいんじゃないか」なんていう現象はこの世にはなかった。

そういう意味では、プロデューサーの重要性は会社に入ってからあらためて知ることになります。ただ、そんな学生の時分で夢見たのは、監督や脚本家にきちんとクリエイターとしての翼を広げてもらえるよう、様々な関係者の要求から彼らを守る、防波堤の役割を担うプロデューサーになる事でした。

東映の作品がよくも悪くも好きだったということと、一番下手を打っている率の高いこの会社なら、ひょっとしたら自分の役割もあるかもしれないな……という青くさ~い夢を抱いて、志した次第ですね。