2019年に40周年を迎える人気アニメ「機動戦士ガンダムシリーズ」の最新作として、劇場作品『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』が、2018年11月30日より、いよいよ公開される。

『ガンダムNT』は、Blu-ray&DVD累計出荷数180万枚(全7巻)を達成した人気作『機動戦士ガンダムUC』の続編で、『UC』のストーリーを担当した福井晴敏氏が自ら脚本を手がける宇宙世紀サーガ最新作。さらには、宇宙世紀の100年を描く一大プロジェクト「UC NexT 0100」の嚆矢でもある。宇宙世紀0097年を舞台に、過去に暴走事故を起こしたフル・サイコフレーム仕様のモビルスーツ「ユニコーンガンダム3号機 フェネクス」をめぐり、「不死鳥狩り」作戦に参加する地球連邦宇宙軍のヨナ・バシュタ、ルオ商会特別顧問のミシェル・ルオ、フェネクスのパイロットであるリタ・ベルナルの3人を中心に物語が展開する。

ここでは、製作発表会見に続き、サンライズの小形尚弘プロデューサーをふたたび直撃。モビルスーツ戦もたっぷり詰まった冒頭映像が公開され、ますます期待が高まっている本作により深く迫った。

小形尚弘(おがたなおひろ)。1974年10月生まれ。神奈川県出身。サンライズ所属のプロデューサー。主な担当作品に『ガンダム Gのレコンギスタ』『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダム サンダーボルト』など。最新作『機動戦士ガンダムNT』でもプロデューサーを務める

――実際に劇場版を制作してみて、制作面でこれまでの作品との違いを感じられた点はありましたか?

『UC』はイベント上映とはいえ、通常の劇場版よりも大変だったので、大変という感覚は同じで、「これ以上はないかな」というところですね(笑)。

――キービジュアルの発表では思わぬところ(登場人物たちのポーズ)で「組体操」と、反響がありました。

まさかキービジュアルがあんなにバズるとは……と意外だったんですけれど、おかげ様で大きな反響がありました。あれは決め打ちで出されてきたものだったんですよ。今回キービジュアルは3つ作っていて、もし一発だけのキービジュアルだったら、もっと普通に見えるものにしていたと思うんです。でも今回は3つあるうちの、しかも2つめですから、ちょっと変化球でいいんじゃないかなと。それがなかなかの変化球だったわけなんですけれど、結果的にあんなバズり方をしてくれたので、あのビジュアルにしてよかったですね。

――今回登場するナラティブガンダムも、「νガンダムの試験機」で、かつ「換装」ということで、こちらも大きなトピックとなりました。

ナラティブは、「νガンダムの試験機」ではなく、「νガンダム以前に作られたサイコフレーム試験機」という立ち位置になっています。それも含めて、νガンダムが好きな人――僕もνガンダムが一番好きなんですけれど、そうしたファンの方からも反響をいただいたなという感覚はありました。

――ナラティブガンダムが換装タイプとなったことによって、ファンとしてはすごくうれしいんですけれど、制作陣は大変だなという印象を強くもちました。

そうですね(笑)。当初はCGで全部やる予定だったのですが、設定の問題もあり、作画さんから描きたいという要望があったこともあって、手描きでの表現も多く採り入れています。大型ビーム・サーベルのような巨大なものを振りかざすなど、そういったシーンは手描きじゃないと劇中のような効果は出せないんです。完成した作品を見ると、そういったところも非常にうまくいっているなという感触がありました。

――冒頭映像を拝見しただけでも、宇宙空間でも地上でも、力のこもったMS戦シーンが多い印象がありました。

そうなんですよ。実は冒頭映像のあと、コロニーの中での戦闘になっているのですが、みなさんお分かりの通り、ビルは入ってくるわ、人は入ってくるわで、制作側としてはそこがやばかったですね。作っている最中は、「果たして完成するのか」っていう(苦笑)。

――冒頭映像だけでも迫力がすごかったのに、さらになんですね。

『UC』や『機動戦士ガンダム サンダーボルト』もそうなのですけれど、『NT』でもA装備での戦闘シーンなんかは、本当はCGでないと動かせないところなのです。それを手描きでできてしまうクリエイターたちなので、頑張ってもらっているとしか言いようがないですね。あのあとも、もっとひどいことをさせていますから。

――カメラのアングルも、劇場であることを意識されていたのでしょうか。

吉沢俊一さんが今回は初監督なのですけれど、彼はずっと富野(由悠季)さんのそばで『ガンダム Gのレコンギスタ』の演出を担当してきた人。今までの富野さんのカメラワークというか、"テンポ感"をかなり意識してやっている人だと思うんです。富野さんが手がけた劇場版の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)とか『機動戦士ガンダムF91』(1991年)の"テンポ感"ってすごく独特で、編集を含めてそこをすごく意識してやっています。アニメーター出身の方が劇場版を作ると、もっと引いた画を使ったりするのですけれど、富野さんはどちらかというとカメラを"心情に寄せて動かす"というか。そういった方向性の見せ方を今回はしているのだと思います。

――ナラティブガンダムを換装タイプにするというのは、最初の段階からあった構想だったのでしょうか。

従来ですと、例えば『UC』であれば、初めはシンプルな「ユニコーンモード」から「デストロイモード」になって、最後は「フルアーマー」になる。段々パワーアップしていくのが"ロボットもののお約束"でした。ですが、今回は逆の方向を狙ってみようということになり、最初に重たくシルエットを見せて、それがだんだんシンプルになっていくというのはどうだというところから、デザインのコンセプトが立ち上がっています。脚本の福井さんとも話をして、デザインをシナリオに紐づけて、「フェネクスを捕まえるための装備」であり、そのための作戦を立てて組み合わせる。その結果生まれたのがA装備です。