最近、アニメ配信で存在感を増しているNetflixが、2019年のアニメ作品ラインアップの発表会を開催した。

SVOD(月額制定額オンラインストリーミングサービス)としては初めて「新世紀エヴァンゲリオン」(2019年春)を全世界独占配信する他、Netflixオリジナルシリーズとして女優・多部未華子さんを声優に起用したストップモーションアニメ「リラックマとカオルさん」(2019年4月19日配信)、3DCGでリメイクされた「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」(2019年夏配信)、満を持してのアニメ化となる「7SEEDS」(2019年4月配信)、月刊ヒーローズで連載中のコミックを3DCGでアニメ化する「ULTRAMAN」(2019年4月1日配信)といった作品がラインアップされている。

今回発表されたタイトル
発表会の司会はアニメ好きで知られるニッポン放送アナウンサー、吉田尚記さん

発表会に登壇したNetflixコンテンツアクイジション部門ディレクターのジョン・ダーデリアン氏は、「2018年はNetflixアニメにとって特別な年。多くのワクワクする作品を世界中のファンに届けることができた。2019年はアニメの夢をもっと大きく見たい」と挨拶した。

Netflixコンテンツアクイジション部門ディレクター ジョン・ダーデリアン氏

ダーデリアン氏が述べたように、ここ数年のNetflixは積極的にアニメ制作と配信に取り組んでいる。2018年は「デビルマン crybaby」や「バキ」、「アグレッシブ烈子」、「B: The Beginning」など話題作も目白押し。新宿地下通路をジャックしたり、AnimeJapan2018に出展したりと「Netflixアニメ」を強く打ち出してきた。

その流れがさらに加速する2019年ラインアップは次の通りだ。

「エヴァ」TVシリーズが配信開始

まずはNetflixのようなSVOD(月額制定額オンラインストリーミングサービス)では初となる、「新世紀エヴァンゲリオン」の配信が2019年春よりスタートする。放送から20年以上たっても絶大な人気を誇るアニメ作品だが、改めて見ようとすると意外に選択肢は限られている。

「新世紀エヴァンゲリオン」

若年層の中には「有名なので概要は知っているけれど、実はTVアニメシリーズを見たことがなかった」という人も多いのでは。NetflixのようなSVODで配信されることで再びファン層を拡大することだろう。なお、劇場版である「EVANGELION: DEATH (TRUE)2」と「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」も同時に配信される。

懐かしの作品という点でもう一つ注目なのは、往年の名作「聖闘士星矢」を3DCGでリメイクする「聖闘士星矢:Knight of the Zodiac」。すでに制作は発表されていたが、この日は初めて星矢のビジュアルが公開された。

「聖闘士星矢 Knights of the Zodiac」第2弾ティザーアート

本シリーズでは「銀河戦争(ギャラクシアンウォーズ)篇」から「白銀聖闘士(シルバーセイント)篇」が描かれる予定で、監督は芦野芳晴氏が務める。脚本にはハリウッド映画を手がけるライターも参加するとのことで、国内外からの注目度も高い。2019年夏 全世界独占配信となる。

「リラックマ」脚本は「かもめ食堂」の荻上氏

そしてキーアートや特報映像が公開されたストップモーションアニメの「リラックマとカオルさん」。カオルさんの家に住み着いたリラックマと仲間たちの12ヶ月を描く優しくほろ苦い物語だ。

「リラックマとカオルさん」キーアート

脚本は「かもめ食堂」で知られる荻上直子氏、監督は小林雅仁氏。今回は声優情報が解禁となり、カオルさんの声を女優・多部未華子さんが演じることが明らかになった。映像は4Kで2019年4月19日より全世界独占配信される。

このほか、新規タイトルとして制作決定が発表されたのが「7SEEDS」。2001年から2016年まで長期連載されたコミック作品で、ストーリーが高く評価されている近未来サバイバルSFである。アニメ制作はGONZOが手がけ、監督は高橋幸雄氏が務める。2019年4月全世界独占配信となる。

「7SEEDS」キーアート

また今回、同作に登場する「夏のBチーム」の声優が発表となった。

東山奈央(岩清水 ナツ役)、福山潤(青田 嵐役)、小西克幸(麻井 蝉丸役)、沢海陽子(早乙女 牡丹役)、阿澄佳奈(天道 まつり役)、石田彰(守宮 ちまき役)、悠木碧(草刈 螢役)、井上和彦(百舌戸 要役)(敬称略)

「夏のBチーム」キャスト一覧

フルCGのウルトラマン新作、神山監督が意気込み語る

最後に言わずと知れた特撮ヒーロー「ウルトラマン」のその後をフル3DCGで描く「ULTRAMAN」のティザー映像とキービジュアルが公開された。月刊ヒーローズで連載中の同名コミックをアニメ化した作品で、かつてウルトラマンだった早田進の息子・早田進次郎が新世代のウルトラマンとなるべく奮闘する新たな物語となっている。

「ULTRAMAN」第2弾ティザーアート

アニメ制作はProduction I.GとSOLA DIGITAL ARTS、監督は神山健治氏と荒牧伸志氏が手がける。発表会では両監督からのメッセージも届けられた。

神山監督は「アクションシーンを長くたっぷりやれるのはセルではできなかったこと。原作ファン、特撮のウルトラマンファンに喜んでもらえることを目指している」とコメントし、荒牧監督は「ウルトラマンってなんだろうともう一度考えてつくった作品。アニメの気持ちよさを加味した動きが実現できている」と完成度に自信をのぞかせた。

日本アニメを「理解」したNetflix

2018年に続き、2019年も充実のラインアップをそろえてきたNetflix。発表会で司会を務めた吉田尚記アナウンサーも述べていたが、「ULTRAMAN」に神山健治監督と荒牧伸志監督を起用したり、「7SEEDS」をGONZOが手がけたりと、Netflixは非常に日本のアニメを“わかっている”感がある。

また、世界中にファンを持つ「聖闘士星矢」をリメイクしたり、2020年の「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」を見越して「新世紀エヴァンゲリオン」を“SVOD初”という話題性で打ち出してきたりと、すべての国と世代にリーチできる隙のない作品群だ。

2018年にはオリジナルコンテンツ制作に9,000億円を投じたとも言われているNetflix。日本のアニメ市場への影響は来年以降もさらに増していきそうだ。

(山田井ユウキ)