フジテレビのドキュメンタリー枠『ザ・ノンフィクション』で、ガンで闘病中の女優・古村比呂の長男・拳人(けんと)さん(26)を追った「母さんがガンになって 僕が考えたこと」が、あす11月25日(13:40~ ※関東ローカル)に放送される。

古村は2011年、拳人さんが20歳のときに子宮頸ガンを発症し、完治かと思われた17年3月に再発、さらに、同年11月には再々発が認められた。番組では、20代を母親の闘病と共存してきた拳人さんが迎えた人生の岐路を軸に、知られざる古村の家族の姿を映し出している。

今回、そのナレーターを担当するのも拳人さん。女優の息子であるものの、あくまで一般人の彼のナレーションは決して上手いとは言えないが、どんなプロにも出せない当事者だからこその気持ちを乗せた語り口で、このドキュメンタリーの重要な要素になった。そんな大役を終えたばかりの拳人さんに、話を聞いた――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーション収録を終えた古村拳人さん

ナレーター起用、母の反応は…

――今回はもちろんナレーション初挑戦だということですが、読み終えての感想はいかがですか?

もう、読むのに必死で…。滑舌が良くなくて声も小さいし、普段から「何言ってるのか分からない」って周りに言われるくらいモゴモゴしちゃうんですけど、とにかく頑張ろうと思って今日は来ました。

――VTRを見て特に印象に残ったのはどのシーンでしょうか?

母が抗がん剤の治療に備えて髪を切るところですね。自分で撮影した場面ということもありますけど、バッサリいく感じは、やはり思うところが結構ありました。読みながらも、あのときのことをなんとなく思い出しましたね。

――終盤で、お母さんに対して謝るというナレーションもありましたが、少し読むのに苦労されていましたね。

ナレーションということで受け入れられましたけど、普段からお互いに気持ちを出し合う家族でもないので、やっぱり単純に息子から母に対してああいう言葉を言うのは恥ずかしかったんです(笑)

―― 一方で、普段言えないことを、ナレーションを通したからこそ言えたという部分もあったのではないでしょうか?

そうですね。特に最後のところのように、あんなに直接的な形で何か言うことは絶対にないので、いい機会だったなと今は思います。

――このナレーションをやると言ったとき、お母さんはどんな反応でしたか?

「そうなの?」って言うくらいでしたけどね(笑)。「やらないほうがいいんじゃない?」ってなんとなくボヤッと言われような気もしなくもないですけど(笑)

  • 『ザ・ノンフィクション「母さんがガンになって 僕が考えたこと」』(フジテレビ、11月25日13:40~ 14:35 ※関東ローカル)
    今回の主人公は、女優・古村比呂の長男・拳人さん。夢は映画監督で、これまで定職に就かず、アルバイトで家計を助けてきたが、もう26歳。人生の岐路に立たされていた。夢を諦め定職に就くのか、夢を見続けるのか。実家に居続け、ガン闘病の母を支えるのか、それとも独立するのか…。揺れ動く拳人さんと2人の弟、そして古村比呂の知られざる家族の姿を追う。
    (C)フジテレビ

今の境遇をどこかで母のせいにしていた

――今回はドキュメンタリーの密着対象でもありましたが、ご家庭の金銭事情を話し合う家族会議の場面なども映し出されています。なかなか取材を受け入れがたいシーンだと思うのですが、どのような気持ちだったんですか?

僕個人としては、本当に闘病する母を支える何か1つにでもなればという気持ちでやりました。正直な話、最初は嫌で、ところどころ押しきれない部分もありましたけど、自分がプライベートの母を撮影するというのも含めて、なにか協力できればという思いでしたね。

――しかし、スタッフからプライベートのお母さんの撮影を託された拳人さんが、当人とぶつかる場面もありました。お母さんを支えるためにやっていたことだけに、苦しかったのではないでしょうか。

そうですね。ただ、良かれと思ってやっていながらも、僕も僕で何か自分がやる意味を見出したかったので、視野が狭くなってしまったのがぶつかった原因だと思います。やっぱり難しかったですね。

――今回の密着やナレーション収録を終えて、お母さんに対する気持ちの変化はありましたか?

自分の今の境遇を、どこかで母のせいにしていたみたいなところがあったんです。でも、読み終えて、そういう気持ちを終わらせられそうだなという感じがしますね。

――少し前のご自身を、俯瞰(ふかん)で見ることができたんですかね。

そうですね。見ながら「俺、何言ってたんだろ」と思いました(笑)