現在放送中のフジテレビ系月9ドラマ『SUITS/スーツ』(毎週月曜21:00~)で、ひと際存在感を放っている俳優の小手伸也。前回月9で出演した『コンフィデンスマンJP』では、登場するたびに東出昌大から「いたのか五十嵐!」と驚かれていたが、今作では主演・織田裕二のライバル弁護士・蟹江貢として、堂々のメインキャストだ。
原作のアメリカ版に負けない身振り手振りや表情で、SNS上では「はまり役」「目を奪われる」、さらには「カッコいい」との声も。そんな小手に、撮影現場の裏話やブレイク後の変化、そして気になるアルバイトの現状まで、話を聞いた――。
念願のバラエティでの番宣も…
――『コンフィデンスマンJP』に続き、今年2回目の月9出演ですね。
まさかこんなに出させていただけるとは思ってもいなかったので、感慨深いです。『コンフィデンスマンJP』の放送が終わって、映画版の撮影に入るかどうかのところで今回のお話が決まったので、「また湾岸(スタジオ)に来るんだ。テレコムセンター駅までの定期を更新しといてよかったな」と思いました(笑)
――制作発表会見では「フジテレビさんは僕を食わせてくれるのかな(笑)」と期待されていました(笑)
はい。だから、どんどん使っていただけたらと思います(笑)。ただ、『コンフィデンスマンJP』でお世話になったプロデューサーの草ヶ谷(大輔)さんが、また来年1月期の月9『トレース~科捜研の男~』を担当されると聞き、あれだけ目をかけてくださったんだから当然声がかかるなと思ってたんですけど、「小手さんに合う役は今回ない」と言われました(笑)。まぁ、甘やかすつもりはないということは僕としてもむしろ本望なので、次の機会に向けて切磋琢磨するのみです。
――ドラマの制作発表に出席されるのは、今作が初めてだったんですか?
はい、初めてでした。『コンフィデンスマンJP』の五十嵐のときは完全にシークレットだったので、それまでの番宣活動も一切かかわらせてもらえなかったんです。僕自身は、初めての月9レギュラーだったので、みんなに言いふらしたいし、会見だの試写会だの番宣だの、とにかく露出したくてしょうがなかったんですけど、「あなたは2話が終わるまでSNSですら言っちゃダメ」と言われ…。それが今回に関しては、番組対抗の『秋の祭典スペシャル』にも出られると知り、「やった!番宣だ!」と思って俄然テンションが上ったんですけど、気持ちだけが先走って、元来自分がバラエティ苦手だというのが抜け落ちていたので、結果ものすごい緊張するハメに…。それに制作発表の時には、プロデューサー陣や広報の方が、「小手さん、(賑やかし役)お願いしますね」なんて変なプレッシャーかけるもんだから、冷や汗が止まりませんでした。むしろ月9初レギュラーがシークレットでホントよかった(笑)
初めて生で見た芸能人が織田裕二
――あらためまして、今回の役柄は“イヤなやつだけど愛嬌がある”というキャラクターでひと際存在感を出していますが、どのように役作りされているんですか?
基本的には原作のルイス・リットというキャラクターがあるので、偉大なお手本として参考にさせていただいたんですけど、なにぶん文化も人種もあらゆる背景がアメリカと違う中で、蟹江貢という1人の人間としての名前をいただいているので、ルイスはあくまでお手本ということにしています。原作を演じるリック・ホフマンさんのお芝居の癖とか表情のトレースから入ったんですけど、日本人がアメリカ人っぽいことをしているということの違和感を解消することこそが真のローカライズだと思ってるんです。元来、“ウザキャラ”という部分に関しては、あらゆる作品で「あいつなんなんだ!?」と違和感を持たれる、僕としてはわりとテッパンな部分なんですが、“愛嬌がある”という部分に関してはわりと意識して、イヤなやつでゲスなんだけど、どこかに気品みたいなものを残しておきたいと思って演じています。
――身振り手振りの部分も、蟹江は特にオーバーですよね。
監督の土方(政人)さんやプロデューサーの後藤(博幸)さんからは、「蟹江はできるだけ身振り手振りをアメリカンにして、ファームの中で一番際立ってる人であってほしい」とオーダーをいただいていたので、あれは演出の指示通りなんですよ?(笑) あとは出演者同士のバランスやチームワークがこの作品は一番大事なので、それを保ちつつ自分がアクセントとしてどういう役割を担えるか、一応すごく気を配ってるつもりです。
――織田さんとのやり取りも、今作の見どころの1つですが、共演しての印象はいかがですか?
実は最初の出会いは、『あの日の僕をさがして』(92年、TBS)という織田さんが主演のドラマに、僕がエキストラで参加したときなんですよ。そこで見た織田さんが初めて生で見た芸能人で、当時『東京ラブストーリー』(91年、フジ)の後で誰もが知ってる大スターなのに、撮影の休み時間に校庭でエキストラと一緒にサッカーをして遊んだりする、すごくフランクな方で印象に残っていました。そのことを今回織田さんに話したら、全然覚えてなかったですけど(笑)。それから20年以上たって、まさかライバル役として共演するなんて思っても見ませんでしたが、そういう前提の関係性があるし、僕自身ちょっと体育会系の気質もあるので、小手伸也としてお話するときはどうしても恐縮して接してしまいます。それに、織田さんもとても丁寧な方で、僕に対しても基本敬語で話してくれるんですよ。
――あの掛け合いは、事前にかなり練習されるんですか?
織田さんがセリフ合わせ好きな方なんで(笑)。撮影前には必ず確認してるんですが、かなりというほどの練習はしてないですね。普通は共演者との緊密性を深めるために、日常会話をどんどんしていくということを大切にすると思うんですけど、こと織田さんに関しては、芝居場以外でも役としての掛け合いを互いに自由演技で仕掛けていくことによって、距離感を縮めていくというやり方をしているんです。これは、他の人とはやったことがないので、面白い発明をしたなという思いですね。
――そうすると、本番ではかなりアドリブも飛び交うんですか?
そうですね。ああ言えばこう言うみたいなのが永遠に止まらないので、本番の後に2人で誰も見ていない、しかもカメラも回ってないところで、そのやり取りを延々続けてたりするんですよ。人間としての距離感を縮めていく作業よりも、すごく作品に即した関係性になれるので、あの織田裕二さんに対して「お前に言われたくない!」とか平気で言えるんですよね。役としてだから(笑)。結果とても仲良くさせていただいてます。