NTTデータ経営研究所は11月14日、事務局を務める「空港保安の将来像研究会」を通じ、新たな研究成果として、6000万人が観光で日本を訪れる12年後の未来にふさわしい空港保安体制の新構想を取りまとめ、提言として公表した。

政府が2016年3月に公表した観光戦略では、2030年の訪日外国人観光客数の目標を6000万人、このうち5250万人が空路からとしている。この戦略を受け、航空ネットワーク拡充や出入国管理体制の充実などの政策が進められており、中でも空港機能の強化については、首都圏空港が処理できる離発着回数の拡大や、拠点空港のハード整備、地方空港の民営化、訪日誘客支援空港への支援といったへの取組が始まっている。

その一方で、同社は、空港保安業務(ソフト)の運用が拠点空港のハード整備に追いつかない、民営化においても十分に設計されない、地方空港の業務底上げも進まない場合には、6000万人という数値目標の達成が困難だと問題提起する。

同研究会では、この課題を克服するための方策について研究を行っており、その結果、現在の体制や制度の延長線上では有効なソフト対策を見出すことが難しいとの結論に至ったという。そこで、既成の枠組みにとらわれることなく、地方空港の空港保安の望ましい理想像を構想して提言するに至った。

提言では、6000万人来日時代に対応できる空港保安体制の構築を目指し、「全く新しい統合的な業務運用(ソフト)の枠組み」「ブロックチェーン、空港IoT、AI等の最先端のIT技術の適用方法」「新しい発想による専門人材の活用方法」「異常時対応とBCPを俯瞰する能力を確保する方法」「空港を巡る幅広いステークホルダーに事業・収益・旅客サービス向上の機会を提供する方法」について、具体的な方針を提示している。

<提言の内容>
旅客: 常に時間に矛盾のない、きめ細かなサービスを確実に提供
空港: 空港保安業務の効率化・高度化、緊急初動対応の強化、重要インフラセキュリティの地域一体的推進、計画的なエアポートオペレーションの実現
エアライン: 空港業務の負担軽減、十分なコンピュータ・システムを持たなくても便の乗り入れが可能
旅行代理店: ツアー客のスムーズな動線を実現
ターミナルビル内店舗: 旅客の来訪を予測した商品の品揃え・展示の実現
物流: タイムリーで待ちがない配送の実現
地上交通: 旅客サービス(フライト到着時刻との接続、適時の増発、タイムリーな情報提供等)の向上を実現

  • 統合運用管理センター(IAOCC)を中心とした新しい空港保安体制のイメージ

同社は今後、提言が段階的に実現されていくことを目指し啓発活動を行うとともに、各ステークホルダーや機器・装置サプライヤーとの議論や協力、環境整備、構想のさらなる具体化等に取り組んでいく考えだ。