映画「生きてるだけで、愛。」の一場面 (C)2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

 女優の趣里さん主演の映画「生きてるだけで、愛。」(関根光才監督)が、9日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開される。趣里さん演じる、うつで引きこもりのヒロインが、菅田将暉さん演じる同棲(どうせい)相手の元カノが現れたことで、外の世界と関わらざるを得なくなる姿を描いていく。自分自身をコントロールできず、時に過激な行動に出るヒロインを、趣里さんが好演している。

 寧子(やすこ=趣里さん)が、週刊誌記者の津奈木(菅田さん)と同棲して3年になる。元々精神的に不安定な寧子は、うつ状態に突入。働きもせず、うつの招く過眠症のせいで惰眠をむさぼる日々を送っていた。そんな寧子を否定せず、優しく接する津奈木。彼もまた、書きたくもないゴシップ記事を書きながら毎日をやり過ごしていた。そんな中、寧子の前に津奈木の元カノの安堂(仲里依紗さん)が現れる……。ほかに、田中哲司さん、西田尚美さん、松重豊さん、石橋静河さん、織田梨沙さんが出演する。

 作家、本谷有希子さんの同名小説が原作。小説では存在感の薄かった津奈木が、彼もまた問題を抱える血の通った人間として描かれている。それによって、人間関係の重要性がより色濃く浮かび上がるラブストーリーになっている。

 自動販売機に頭突きをくらわせたり、津奈木が買ってきたコンビニ弁当をかすめ取ったり、せっかく始めたアルバイト先での、感情の針が一気に振り切れたときの突発的な行動……寧子の奇行の数々は、肯定はできないが理解はできる。

 一方の津奈木は、包容力のある男性に見えて、その実、居心地の良さを求め、現実から目を背けているだけとも映る。ストレス社会、孤立社会といわれる今を生きる誰もが、寧子や津奈木のようになる危険性をはらんでいる。映画を見ながら、現在のような他者とのつながり方で大丈夫か、と問われている気がした。

 希望と絶望の間をふらふらと往来する寧子を演じた趣里さん。今年4月期に放送されたドラマ「ブラックペアン」での看護師の猫田役は鮮烈だったが、今回の寧子役もそれに引けを取らないほど鮮烈。その寧子の生活をかき乱す安堂役・仲さんの、すご味ある演技も見どころの一つだ。(りんたいこ/フリーライター)