東京医科歯科大学(TMDU)は、IKBKB遺伝子の機能獲得変異による新規複合免疫不全症を発見したと発表した。

同成果は、同大大学院 医歯学総合研究科小児地域成育医療学講座の金兼弘和 寄附講座特任教授と発生発達病態学分野の谷田けい 大学院生、森尾友宏 教授の研究グループと、オーストラリア国立大学、京都大学、岐阜大学などとの共同研究によるもの。詳細は、国際科学誌「Journal of Experimental Medicine」に掲載された。

  • 研究概要

    今回の研究の概要と成果 (出所:TMDU Webサイト)

複合免疫不全症は、T細胞とB細胞の機能異常により易感染性といった症状を呈する原発性免疫不全症の1つの病型とされる。原発性免疫不全症の原因遺伝子は300以上あるといわれる中、今回の研究では、原因不明であった複合免疫不全症の患者に対し、全エクソーム解析を行い、新たな原因遺伝子の解明を目指した。

その結果、IKBKB遺伝子の新奇ミスセンス変異を同定することができたとしている。これまでにも、IKBKB遺伝子の生殖機能における機能喪失型変異は、重症複合免疫不全症の原因遺伝子として報告されていたことから、この新奇変異が疾患の原因遺伝子であるかどうかの解析を要した。

IKBKB遺伝子のV203I変異が同定された日本人1名、オーストラリア人の1家系3名の細胞および、遺伝子導入した細胞株の解析の結果、V2031変異が機能獲得型変異であることが確認された。これにより、IKBKB遺伝子の生殖細胞における機能獲得型変異は新規原発性免疫不全症の原因であることが証明されたとしている。

また、現在までにもNF-κB経路は免疫応答において重要な働きをしているとされてきたが、この経路に存在する遺伝子の変異によるヒトの新たな疾患が発見されたことから、この経路の重要性が再認識されたとのことだ。