EUの著作権指令に対しYouTubeが強く非難、CEOが世界のクリエイターへレターを公表

YouTubeのCEOスーザン・ウォジスキは、EUの著作権指令第13条がクリエイティビティを制限し、”市民生活に対する脅威”になると主張し、同社の発行する季刊レターを利用して意見表明した。

「YouTubeは今、欧州議会に不満を抱いている」というのは少々控えめな言い方かもしれない。2018年9月、欧州議会が、デジタル時代に対応したクリエイティビティに関する権利保護を目指した著作権法改正案を承認し、物議を醸した。中でも第13条(Article 13)は、ユーザー主体のコンテンツを扱うウェブサービスからの反感を買った。第13条では、著作権保護されたマテリアルのフィルタリングや削除をウェブサービス側が行うべきとしている。このような政策の方向転換案は、著作権所有者(有名アーティストやソングライターら音楽業界の人々を含む)からは歓迎されている。一方でYouTubeやその支持者たちは、著作権法の強化によってインターネット・ミームやデジタル・クリエイティビティが阻害されるとして、反対してきた。

2018年10月22日、YouTubeのCEOスーザン・ウォジスキは、同社の発行する季刊レターを利用して意見表明した。クリエイター向けのメッセージの中で彼女は、2019年1月に議会で最終投票が行われる改正案に対して、強い非難の声を上げた。「同法案は市民生活を脅かすと同時に、世界へ意見を発信する能力にとっても脅威になる」というスーザン・ウォジスキは、YouTubeのクリエイターたちに向かって、ソーシャルメディアを通じて第13条に異議を申し立てるよう呼びかけた。第13条が適用されるとコンテンツ・ポリシーは制限され、YouTubeの「エコシステムが危機にさらされる」と、彼女は主張する。

以下は、スーザン・ウォジスキからのレター全文だ。

2018年におけるYouTubeの優先事項に関する最終情報

クリエイターの皆さん

2005年に設立されたYouTubeは、動物園で撮影したひとつの動画から、知識やクリエイティビティ、つながりを求めて数十億人がアクセスするグローバルな動画ライブラリーに成長しました。今日のYouTubeは、次世代のメディア企業を担い世界のあらゆる場所からファンを集める多様なクリエイターのコミュニティとなっています。皆さんが歴史を作っているのです。そして人々の動画の楽しみ方を変え、人と人とのつながり方や意見の共有方法を変えているのです。私は皆さまをサポートできることを光栄に思います。そしてこれからも私は、自分が目にするものにインスパイアされ続けるでしょう。

2017年の1年間で、100万サブスクライバー以上を抱えるチャンネル数が75%増加しました。毎月YouTubeには、音楽カルチャーの中で新たな曲やアーティストを見つけるために10億を超えるファンが訪れています。成長を続ける私たちはYouTube Musicを、英国、アイルランド、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシア、カナダ、デンマーク、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ブラジルへと拡大してきました。さらにこの数か月間で、YouTube Artist Spotlightシリーズに、ジャネール・モネイ、J・バルヴィン、ショーン・メンデスの新たなストーリーを追加しています。また前四半期には、YouTube Originalsへ13のオリジナルシリーズが加わりました。その内3本はドイツ、2本はフランスの作品です。


これらは全て、クリエイターの皆さまが支えるクリエイティヴ・エコノミーのおかげです。しかし今、成長を続けるクリエイティヴ・エコノミーが危機にさらされています。欧州議会が、第13条と呼ばれる、今日皆さんが利用しているインターネットの世界をドラスティックに変えてしまいかねない著作権に関わる法の改正案を可決したのです。

第13条が適用されると、クリエイターの皆さんから一般ユーザーまで実に多くの人たちが、YouTubeをはじめとするプラットフォームへコンテンツをアップロードできなくなる恐れがあります。第13条によりEU内のユーザーは、世界各国のクリエイターが作成した既存チャンネルのコンテンツを視聴することさえできなくなるかもしれません。語学レッスン、物理学の個人授業、さまざまなハウトゥー動画など、YouTube上の素晴らしい教育関連コンテンツの動画ライブラリーも規制の対象となるのです。

同法案は市民生活を脅かすと同時に、世界へ声を発信する能力にとっても脅威になります。もしも法案がそのまま通過すると、第13条は、欧州のクリエイターや企業、アーティスト、その他関連する全ての人々を含む何十万という職も脅威にさらします。YouTubeのようなプラットフォームは、数少ない大企業のコンテンツしか扱えなくなる可能性があるのです。法案では、プラットフォーム側が全てのコンテンツに責任を負うこととなるため、個人のオリジナル・コンテンツ・クリエイターのコンテンツをホストすることは、プラットフォームにとってリスクが高すぎます。私たちは、全ての権利所有者が公正に利益を得ることの重要性を認識しています。そのため私たちは、Content IDの仕組みに加え、あらゆるタイプのコンテンツ・オーナーへ支払うためのプラットフォームを用意しました。しかし第13条という予期せぬ法案が、このエコシステムを危険にさらそうとしています。私たちは業界と協力して、よりよい解決法を見出すため努力しています。2018年の年末までにこの言葉が実現できるはずです。そのためにも、今声を上げることが重要なのです。

皆さんのチャンネルにどのような影響があるかを今一度よく考えていただき、今すぐアクションを起こす必要があります。ソーシャルメディア(#SaveYourInternet)や皆さんのチャンネルを通じ、クリエイター・エコノミーの重要性や、法案の与える影響を世界へ訴えてください。


以下は、2018年におけるYouTubeの優先事項に関する最新情報です。ぜひ目を通してください。

1. コミュニケーションとトランスペアレンシー

以前書いた通り私たちは、ソーシャルメディアや動画など、皆さんが意見を交換する場で、より一層コミュニケーションを取れるよう意識的に努力してきました。皆さまからのフィードバックに基づき、私たちは数々の改善を重ねてきました。さらに、@TeamYouTubeアカウントやCreator Insiderチャンネルには、YouTubeの変更や不具合に関する”お叱り”のメッセージも多く寄せられています。YouTube Creatorsチャンネル(旧Creator Academyチャンネル)では引き続き、有用なチュートリアルや魅力的なクリエイターのストーリーを公開しています。私たちは、これらコンテンツを増やすべく努力を続けています。私は自分のチャンネルとCreator Insiderチャンネルへ多くの動画を投稿していますが、先ごろちょうど100本になりました!

クリエイターの皆さんが、私たちとのコミュニケーションをよりシンプルな方法で、かつ決められた中心的な場所で行うことを希望していると聞きました。そこで私たちは、プラットフォームのニュースやプロダクトの最新情報を提供するワンストップ・ショップとなるYouTube Studioを立ち上げました。最新の機能、クリエイター・アカデミーの動画、Creator Insiderウィークリーニュース等を提供する、YouTubeに関する情報発信基地です。簡単に視聴できるダッシュボードこそが最新ニュースを入手できる場所であり、2018年内に、全てのクリエイター向けの新たなホームページとなるでしょう。

YouTubeの幹部は、世界中のクリエイターたちと対面し、コミュニケーションを続けていきます。ロバート・キンセルとニール・モハンは、ベルリンで行われたCreator Summitの場で、欧州、中東、アフリカ等から集まったクリエイターたちを前に講演を行いました。さらにロバートはCreator Interviewsの一環としてベルリンでCaspar Leeと会い、YouTube APACでマネージング・ディレクターを務めるゴータム・アナンドは、ソウルで韓国人クリエイターのDottyと対話の機会を設けました。ソウルで開催されたCreator Summitにはアジア太平洋地域からクリエイターたちが集まり、私たちは大きな進展を実感しました。2018年のCreator Summitの締めくくりとして、11月に中南米で行われるサミットが今から楽しみです。


2. クリエイターの成功を支援

収益化は、クリエイターのビジネスの中核です。そのため2018年の第4四半期に、YouTubeでは収益化システムを改定しました。これにより収益化アイコンの精度が10%向上しています。

前回のレターで私は、新たな動画アップロード・フローの試験運用についてお話ししました。クリエイターの皆さんには、広告主にわかりやすいガイドラインを実現するため、動画内の特定情報を提供いただきました。試験運用に参加したクリエイターのほとんどは、動画内に想定通りのコンテンツを表示できました。クリエイターの皆さんには、トランスペアレンシーを増すことで、広告としてどのタイプのコンテンツが適しているかをお知らせしています。2018年内に、より多くのクリエイター向けに自己申告制度を提供し、2019年の早い内に対象をさらに拡大する計画です。

2018年夏、YouTubeはChannel Membershipsを公開しました。以降、数千のクリエイターに利用いただいています。例えば、マーブルマシンのクリエイターであるWintergatanは、チャンネルのメンバーシップへ登録して以降、収益が50%以上上昇しました。彼は収益を、次世代のマーブルマシンや世界ツアーへ投資しています。ゲーミング・クリエイターのMarkiplierは収益を20%伸ばし、コメディ・クリエイターのMike Falzoneは、YouTubeからの収入が3倍になりました。また、TriStar Gym(ブラジリアン柔術テクニック専門)やOla Englund(メンバー向けオンライン・ギターレッスン)のように、メンバーシップをクリエイティヴ活動に利用するクリエイターもいます。YouTubeはメンバーシップをより多くのチャンネルへ拡大し、サブスクライバーのハードルも10万人から5万人へと低く設定する予定です。より多くのクリエイターを対象としたメンバーシップの拡大は、今後数か月内に実施される計画です。

最近YouTubeではNextUpキャンプの一環として、将来有望な黒人、ラテン系、女性クリエイターを支援するための3つの特別キャンプを実施しましたが、これまでにない多くのクリエイターからの申し込みをいただきました。今回チャンスを逃した方も、次回はぜひご参加ください。さらにブラジルのリオデジャネイロやロシアのサンクトペテルブルグで行うほか、今後さらに多くのキャンプも予定しています。

3. エンゲージ方法の拡張

YouTubeは2018年夏、新たにPremieresを公開しました。以降クリエイターの皆さんには、チャンネルの再生数、エンゲージメント、収入を増加させるためにPremieresを利用いただいています。例えばTwenty One Pilotsは、新しい動画『My Blood』の公開時に7万5000人以上のファンを集め、ライヴチャットやコメントでエンゲージメントを高めました。YouTubeのトップ・ゲーミング・クリエイターのひとりTheRadBradは、Premieresを使ってファンとライヴチャットする中で、「YouTubeを8年間やってきて、最もクールな経験だ」とコメントしています。また、Linus Tech Tipsによる最近のテック・レビューは、彼が公開してきた中で最もパフォーマンスの高い動画でした。現在、Premieresは全てのクリエイターが利用できるようになりました。

最近、YouTube Givingも公開しました。YouTube動画やライヴ配信を通じ、クリエイターやNPOの皆さんが貢献したいと思っている事柄に対して直接資金集めできる仕組みです。現時点ではベータ版ですが、利用しているクリエイターは魅力的なインパクトを生み出しています。Hope for Pawsは最初の10日間で10万ドル(約1130万円)以上を集め、12人のゲーミング・クリエイターたちが聖ジュード小児研究病院と共同でChildhood Cancer Awareness Monthを立ち上げ、12万5000ドル(約1400万円)以上の資金を集めました。YouTubeとしては、近い内にこの機能を拡張し、より多くのクリエイターの皆さんからの貢献を望む事柄に対する支援を可能にしたいと考えています。

さらにYouTube上に、より大規模なゲーミング・コミュニティを立ち上げる計画です。新たなゲーミング・デスティネーションであるGaming Creator on the Riseを公開し、関連ページには8万以上のゲームが登録されています。また2019年には、スタンドアロンのゲームアプリから撤退する予定です。多くの皆さんに影響があるかと思いますが、ゲーミング・クリエイターの皆さんには、ユニークなゲーミング・エクスペリエンスはそのままに、ファンとのより素晴らしいコミュニケーションの場を提供します。


4. ポリシーの強化と適用

最も優先度の高いポリシーに関する事項のひとつは、YouTube上でのニュース関連への投資と、誤情報対策でした。多くのニュース関連パートナーとの緊密なコラボレーションにより、これら取り組みに対する多くの改善を実施してきました。YouTubeではこれまでに、信頼の高いニュースソースへの容易なアクセスを実現し、23か国でニュース速報やトップニュースを提供してきました。また、初めてYouTube Newsワーキンググループ会議を本社で開催し、報道機関、研究者、クリエイターの皆さんより、YouTubeプラットフォーム上でのニュース改善に対する意見を伺いました。さらに、ニュース分野を成長させるため、テクノロジーを使ってジャーナリズムを支援しています。報道機関が動画作成能力を持続的に保有するためのイノベーション・ファンドもその一環です。誤情報に関しては、より多くの対策が必要であることを認識しています。私たちは、画期的な解決策のために引き続き努力しています。

私たちはまた、YouTube Community Guidelines(コミュニティ・ガイドライン)の最新適用レポートの公開も続けています。

5. ラーニングとエデュケーショナル

ラーニングも、YouTubeの中で重要なコンテンツのひとつです。最近BookTuberたちが年に1度のBookTubeAThonに集まり、クリエイターが読書しながらチャンネルを通じて意見交換し、世界中の人々に読書を促進しました。また、”一緒に学びましょう”的な動画が人気を集め、自己学習の意欲を高めている状況も見ています。

私たちは、世界に自分の知識を発信したいクリエイターと、物理の基礎や文法の自己学習をレベルアップさせたいと考えるユーザーの両方に力を与えることに集中しています。私たちはYouTube Learningに2000万ドル(約22億5200万円)を投資することを、ここにお知らせします。YouTube上でクオリティの高いラーニング・コンテンツを製作・キュレートしているクリエイターや専門家組織にフォーカスした教育支援の一環です。投資には、マルチセッションのラーニング・コンテンツを構築するクリエイターを支援するLearning Fundも含まれます。このプログラムに興味をお持ちの方は、ぜひ応募してください。

YouTubeで知識を発信するクリエイターを支援するため、新たなYouTube Learningチャンネルを公開しました。同チャンネルには、さまざまなクリエイターによる、DIY動画、スキルベースのプレイリスト、クオリティの高い教育コンテンツが集められています。私たちは、ロサンゼルス、メキシコシティ、リオデジャネイロの3か所でYouTube EduConを主催してきました。これらカンファレンスは、Edutuberたちにとって、ネットワークを広げ、新たなスキルを身につける良い機会です。2019年には、別の都市でさらに多くのカンファレンス開催を計画しています。

YouTubeを通じ、私たちは社会貢献をしていきたいと思っています。Lilly Singhと共同で、若い女性たちの教育や児童虐待防止に取り組んできました。また、Priyanka Chopra、BB Ki Vines、MostlySaneと協力し、世界中の若い女性の識字能力向上と教育を促進してきました。皆さんからのご協力もお願いします。

YouTubeを、クリエイティビティ、ナレッジ、インスピレーションの素晴らしいプラットフォームに育てていただいたことに感謝しています。皆さんからのフィードバックはいつでも歓迎します。

スーザン・ウォジスキ