デビュー10周年を迎えたザ・ティン・ティンズ、オフィシャル・インタビューが到着

10月26日に、4年ぶりのニュー・アルバム『ザ・ブラック・ライト』をリリースしたザ・ティン・ティンズ。デビューから10周年の軌跡を追ったオフィシャル・インタビュー全文が公開となった。

新作『ザ・ブラック・ライト』では、これまでのカラフルでポップな印象とは全く異なり、アルバムのジャケット写真含めてビジュアルはすべてモノクロで統一。公開されたシングルのMVもミニマムでパンクな印象が強く、デビュー当時とはすべてが一変した印象だ。派手な色味を大胆に起用してきた彼らがデビュー10周年を迎えどのような心境の変化があったのか。また、青空が広がるアメリカ・ロサンゼルスでレコーディングされたアルバムがどうしてここまでモダンでパンクなサウンドに至ったのか。

ケイティ・ホワイトに行った以下のインタビューでは、毎回アプローチを変えながらも、自分たち独自のオリジナリティを忘れない「新生ザ・ティン・ティンズ」の全貌に迫っている。

―今年でデビュー10周年おめでとうございます。アルバムを完成させた今は、ライブへ向けて動いているのでしょうか?

ケイティ:今ちょうどリハーサルの最中で、このあと2週間くらいかけて、ニュー・アルバム『The Black Light』をライヴでうまく演奏できるように、リハーサルに専念する予定なの。説得力があるパフォーマンスができる、準備万端な状態にしないと! 実は今回は、アルバムを作っていた時からライヴでやりたかったことがあって、それは非常にミニマルなパフォーマンス。ドラムキットではなくて、エレクトロニックなドラムにして、ギターのペダルも最低限の数に絞って、ステージ上にはあまり楽器や機材がない状態にするの。それでいて、場合によってはすごくアグレッシヴで爆発的な表現をして、その一方ではすごく抑制を効かせる―という感じね。というのも今回のアルバムに向けて曲を書いた時、私たちは詩を書くようにアプローチしたの。先に歌詞を綴って、それを音楽に乗せるという形をとって。だから今回の私は、そういう風に生まれた言葉をステージで発することになるんだけど、だからこそ説得力を持たせるのは難しくないわ。自然に勢いが出て、今にも走り出しそうなノリになるだろうから(笑)。

―古い曲もそういうミニマルなアレンジに変えるんですか?

ケイティ:まだ分からないけど、両方のスタイルをミックスすることも考えているわ。ほら、スリーフォード・モッズというバンドがいるでしょ。

―知っています。最高ですよね。

ケイティ:そうなのよ。私たちも大好きで、徹底的にミニマルでパンクでモダンで、すごく面白くて、説得力満々だと思う。で、ふたりとも彼らにすごくインスパイアされて、ああいう強烈な熱度をキープしつつ、それを楽器で表現したらどうなるだろう?って考えたのよ(注:スリーフォード・モッズはエレクトロニックなオケとヴォーカルだけでライヴを行なう)。そんなわけで、エレクトロニックな音から始まって、そこに生楽器を乗せていくというアイデアを思い付いたの。だから、前作『スーパー・クリティカル』のディスコ系の曲には向いていないだろうけど、よりアグレッシヴでパンクな曲ならフィットするかもしれない。そんなことも考えているわ。

―ファースト・アルバム『ウィ・スターテッド・ナッシング』の収録曲なら、うまくアレンジできそうですね。

ケイティ:そうね。『The Black Light』がこれまでの私たちのアルバムのどれかと似ているとしたら、それは恐らくファーストだから。

―あなたたちは毎回レコーディングに長い時間を要します。どの部分に一番手間取るんでしょう?

ケイティ:私たちは常に音楽作りをしていて、常にクリエイティヴな状態に自分たちを置いていて、色んなことを体験し、旅をしたりしているんだけど、今回も4年かかったのは……ソングライティングはそんなに難しくなかったけど、自分たちが欲しているサウンドを形にするのに手こずったのよ。というか、そもそもどんなサウンドを欲しているのか見極めるのに時間がかかった。4枚目のアルバムであり、それだけの面白さを備えていて、以前より成熟した音にしたかった。もちろん、自分たちらしさを失うことなく。そういうサウンドを目指して、まず1年半ソングライティングとレコーディングに費やしたの。で、今回はマンチェスターのバンドたちからも、すごく影響を受けたわ。つまり私たちの故郷が生んだバンドたち。ザ・スミスやストーン・ローゼズやジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーといった面々ね。でも彼らを意識しながら曲を作っていて、ふと気付いたら、まるっきりこれらのバンドのスタイルをコピーしたような曲の数々が出来上がっていたの(笑)。それで「ああ、これじゃダメじゃない!」って反省したんだけど、曲そのものはどれも気に入っていたのね。それで気分転換も兼ねてロサンゼルスに行くことにしたのよ。そして改めてレコーディングをして、プロダクションを完全に刷新したわけ。いらない要素を全部はぎ取って、骨組みの状態に戻し、フレッシュで面白いサウンドになるまで、そして、生々しいエネルギーを感じさせるまで、アレンジし直した。棘があって、磨き上げ過ぎない感じに。もしかしたら最初のヴァージョンのほうが耳に馴染みやすくて、聴きやすかったかもしれないんだけど、とにかく今回は切実な説得力を与えることが一番重要だった。完璧さは求めていなかったのよ。スリーフォード・モッズを聴いた時にそれを感じたの。磨き上げたポップソングではないけど、彼らの曲は説得力満々で、ライヴ・パフォーマンスも然り。ふたりの男性が自分たちを表現している姿に、目が釘付けになってしまうのよ。

―確かに今回の曲には、どれも挑戦的なエッジがありますよね

ケイティ:そうね。何しろ1年半みっちり作業をして、自分たちを外の世界から切り離していたものだから、私はキャビンフィーバー(注:狭い場所で長い時間を過ごした時に生じる不安定な精神状態)になってしまったの(笑)。それで突然パニック発作に襲われるようになって、大変だったわ。思えばこれまで私たちはずっと常に移動していたわよね。私は22歳か23歳からの10年間、ずっとそんな生活を続けてきた。その間はただ慌ただしくて、立ち止まってあれこれ悩んだり、考え込んだりする余裕がなかった。そして、このアルバムを作るにあたって、初めてわりと長い時間一カ所に留まることになって、これまで溜め込んでいた葛藤やら問題やらが一気に表面に出てきたのよ。だからこそアルバムを『The Black Light』と命名したの。UVのブラックライトで何かを照らすと、普段は目に見えないものが全部さらけ出されるでしょ? それと同じ原理で、立ち止まってみたら色んなものが見えてきて、欠点だけじゃなくて、いい部分も見えるんだけど、どちらかというと自分たちの人生の色んな欠点や傷を突然突きつけられて、「うっ」って思っちゃったのよ(笑)。じゃあ、それを曲に綴ろうってことになった。ブラックライトがこのアルバムのメタファーなのよ。ブラックライトを自分たち自身に向けて、欠点をさらけ出すアルバムだから。そんなわけで、スーパー・ハッピーとは言えない作品になったわ(笑)。でもそれでいて、体を動かさずにはいられない音楽なのよね。アグレッシヴで攻撃的でありながらも、重くどんより沈み込む感じではなくて。

―ジャケットなどのヴィジュアルもブラック&ホワイトです。

ケイティ:ええ。全てイメージを統一したかったの。ステージの演出にもそれを反映させたくて、ミニマルでムーディーな雰囲気でまとめるつもり。ほかにも”shadow”っていう言葉が歌詞に出てきたりするし、シンプルなんだけど、そういう歌詞の内容に根差した、効果的な演出を考えたいと思っているわ。

―じゃあ、完成した時には一定のカタルシスを得られたんでしょうね。

ケイティ:ええ。でもこんなアルバムは二度と作りたいとは思わない。パニック発作に苦しんだあの頃を思い返すとゾっとするし、「オー・マイ・ゴッド! こんなにたくさんの問題を一気に突きつけられるなんて!」って圧倒されちゃったから。何しろ10年分の蓄積でしょ? でも結果的には、このアルバムをすごく誇りに感じているわ。やっぱり、誇りに感じられる作品を作りたかったのよね。4枚目ともなると、「適当にめっちゃキャッチーな曲でも書くか」なんてことにはならない。とにかくソングライターとして自分たちが手応えを得られる、いい曲を書きたかったの。

―そして今回もまた大きくサウンドが変わりました。マンチェスターのバンドの名前が出た通り、ポストパンク色が強いですね。毎回大胆に変わるのは、自然な成り行きなんでしょうか?

ケイティ:多分私たちがデュオだってことにも、関係していると思うのよね。5人組のロックバンドだったりしたら、その5人のメンバーが集まった時に自然に鳴らされるサウンドが、ひとつ定番として確立されるものでしょ? だからその定番のサウンドをキープし続けるのは不思議じゃない。でもザ・ティン・ティンズの場合は私とジュールズだけだし、ふたりとも熱狂的な音楽ファンで、あらゆるタイプの音楽を聴いている。だからこれまでもずっと、少々変わり種のバンドであり続けてきたんだと思う。「彼らは〇〇なインディ・バンドだから、こんな風にメディアに打ち出して、こんな風に宣伝して、こんな風に紹介する」みたいなことができないのよ。音楽業界のシステムの中にあって、いつも少しばかり居心地が悪かったわ。でもここにきて、そういう自分たちのポジションが気に入っているの。そしてふたりしかいないからこそ、大胆に変わるのも難しくない。例えば、「ザ・スミスとザ・キュアーにハマっているから、次はこんなアルバムを作りましょ」みたいな展開もあり得る。それが5人組バンドで、ある日ベース・プレイヤーがリハーサルにやって来て、「俺、ザ・キュアーにハマってるんだけど、あの手の音を試してみようぜ」と提案しても、ほかのメンバーの合意を得られなかったりするでしょ? もちろん変化し続けることには、いい面も悪い面もある。バンドとしてマイナスに作用する場合もあるわ。でも私たちはそういうバンドであり、どうにもできないのよ。

―マンチェスターのバンドに目を向けた理由は?

ケイティ:元々彼らの大ファンで、何しろマンチェスター出身だし、マンチェスターの人間はみんな、町の音楽の歴史にすごく誇りを感じているの。町を歩いていれば、バーやブティックを始めそこら中で、地元のバンドの曲を耳にするわ。で、私たちが今回こんなに惹かれたのは、正直言って、ずっと旅を続けていてホームシックになったからだと思うのよね。彼らの曲を聴くことで、故郷を思い出していたのよ。何年もマンチェスターには戻っていなかったから。

―じゃあ今の拠点はマンチェスターではないんですね。

ケイティ:ええ。ロンドンにいるわ。中心部から20分くらいの場所だけど。ただ、この先どれくらいここにいるか分からない。いつも移動し続けているから(笑)。それも私たちの特徴で、素晴らしいことなんだけど、10年間そういう生活を続けていると、しっぺ返しが待っているってわけ!



―そういえばセカンド・アルバム『サウンズ・フロム・ノーウェアズヴィル』はベルリンで、サード『スーパー・クリティカル』はイビザ島でレコーディングしましたね。アルバムごとにロケーションを変えることを重視している?

ケイティ:そうね。背景を変えることは重要だわ。アルバムを作るごとに、新しいバンドになった気分になれるし。だから、それが特段風変わりなことだとは思っていなかったの。ある日突如「オッケー、そろそろほかの町に行く?」と言い出して、別の国に移り住んだりしていた。26歳の頃はあまり深く考えなかったけど、34歳になった今ようやく「ああ、こういう人生ってちょっとヘンなのかも」って思い始めたわ(笑)。「なんでこんなことをしているんだろう?」って。それでブラックライトで照らしてみたところ、「うん、やっぱり問題アリだ」って気付いたのよ(笑)。でもほんと、一カ所に1年くらい留まっていると、移動したくてうずうずしてくるの。「ほかの町に行って、やり直さなくちゃ!」って。

―じゃあ今回はなぜロサンゼルスを選んだんですか?

ケイティ:以前から一度アメリカでアルバムを作りたいと思っていて、ニューヨークとロサンゼルス、どっちにしようかって考えていて……でもなぜ後者を選んだのか、よく理由は覚えていない。多分今回も、「ああもう、ここにずっといるのは耐えられないわ。別の町に行かなきゃ!どこにする?どこにする?」って、ほとんどパニックして、咄嗟に選んだような気がする。あと、ロサンゼルスのダウンタウンにアーティストたちが集まる地区があって、その雰囲気が気に入ったのよ。そこで暮らしたことがある友人を介して知ったんだけど、私たちがいた頃のベルリンみたいな感じなの。クリエイティヴな人たちが大勢住んでいて、そういう環境に身を置くとすごくインスパイアされるのよね。そんなわけで、今回はダウンタウンで生活しながらレコーディングしたわ。ハリウッドとは全く雰囲気が違って、言わばインダストリアルな趣で、多くのホームレスの人たちが暮らすスキッド・ロウ地区からもそんなに離れていない。だからすごく奇妙なミクスチュアが起きている。そして倉庫だった古い建物がたくさんあって、そこを借りて爆音を鳴らすことが可能なのよ。誰も文句を言う人なんかいないから。実際素晴らしい環境だった。私たちの決断は間違っていなかったわ。行ってから数日後に色んなアーティストたちと知り合って、すごく仲良くなった人もいる。日中は、スタジオにしていた建物に籠もって曲を書いて、レコーディングをして、夜は街に出かけたの。ほかのアーティストの仕事場を訪れて彼らの作品を見せてもらったり、アートについて話をしたり……。ほんと、すごくインスパイアされたわ。

―共同プロデューサーとしてクレジットされているジョン・フォスターも、アメリカ人なんですか?

ケイティ:ええ。さっきも言った通り、一旦曲を書き上げてみたものの、好きなバンドの真似をしているだけで、気に入らなくてやり直すことになった。その時に加わってもらったの。ジョンは以前アメリカをツアーした時に前座を務めてくれたバンド(注:Kaneholler)のメンバーなのよ。本当に素敵な人で、以来仲良くなって、イビザ島に滞在していた時とかに、何度か私たちを訪ねてきたりしていたのよ。で、アメリカに行く前に使っていたスタジオは、型通りのスタジオで、巨大なミキシング・デスクがあって、設備も素晴らしかった。でもそういう設備は必要じゃなかった。結局、暖炉の傍の椅子にギターを抱えて座って、言葉をつなぎながら、iPhoneに録音していたくらいだから(笑)。それで、セッティングも変えようと思って、大袈裟な機材は使わずにAbletonを使ったの。エレクトロニックなレコーディングに適したセッティングにするべく。その使い方を勉強しながら作業をすることになったのよ。でもなかなか使いこなせなくて、自分たちがやりたいことができずに、フラストレーションを感じていて、Abletonのエキスパートであるジョンが「一日そっちに行って手伝ってあげてもいいけど」と言ってくれたの。そうしたら、彼との作業が本当に楽しくて、すごくクリエイティヴで、結局6週間一緒に過ごしてアルバムを完成に導いてくれたってわけ。

―エレクトロニックと言えば、ドラムンベースも今回加わった新しい要素ですね。

ケイティ:そうね。なぜ取り入れたのか、はっきりしないんだけど。とにかく私たちは色んな音楽が好きだから、なんでも気になったものに手を出して、自分たちの音楽に取り入れられるか挑戦しちゃうのよ(笑)。ドラムンベースのファンがどう思うか不安なところもあるけど、試してみたかったの。今回のアルバムは歌詞に比重が置かれていて、ドラムンベースはそういうヴォーカルの切迫感と相性がいいと思うし。ものすごくテンポが速い音楽だから、エネルギーを与えてくれるのよ。

―その詩みたいな歌詞というアイデアはどう生まれたんですか?

ケイティ:スリーフォード・モッズの影響もあるんだけど、それ以前に、ザ・スミスに改めてハマったことに理由があるの。バンドが結成された当初、モリッシーはまず詩を書き上げて、ジョニー・マーのギターの音にほとんど無理やり押し込むようにして曲を作ったという話を読んで、それにインスパイアされたのよ。そういう成り立ちだから、ザ・スミスの曲は、ひとつの文がメロディに収まり切らなくて、こぼれ落ちて次のメロディに送られていくような、独特のノリがあるのよね。きれいにフレーズが区切られているんじゃなくて、どんどん溢れていく感じで。溢れているんだけど、自分が書いた詩が気に入っていて、縮めたくないから、全部なんとかして収めるっていう、そういうところが面白いの。文章が途中で切れて、残りが全然違う場所にぽつりと落ちていたりする。あんな風に書いたことがなかったから、すごく興味をそそられたのよ。

―そして結果的にあなたのヴォーカル・スタイルにも影響を及ぼしたわけですね。

ケイティ:ええ。今回は歌っているようで喋っているようなノリで、どういうわけか私の場合、そういうスタイルで表現するほうが説得力が増すみたい。フツウに可愛い感じに歌っても、耳に触れる感触は悪くないけど、自分ではあまり説得力が感じられないのよ。だとすると、聴いている人たちにとっても説得力がないんじゃないかと思ってしまうのよね(笑)。

―このアルバムのムードは今の政情にシンクロするところがありますが、特に意識したり、影響を受けたりしたんでしょうか?

多分アルバムの底辺に流れている不安感みたいなものに、今の世の中の空気も影響を及ぼしたと思う。今を生きている人なら、誰でも感じているわけだから。世界には、ものすごいテンションが漂っているわよね。それは間違いないわ。私たちの生活にまつわるあらゆる要素が、アルバムには反映されているし。

―ラストの『Good Grief』には”Grey sky thinkings how we do it up north some might say that its moaning but its keeping us warm(グレーの空みたいな思考をするのが北部の流儀/愚痴をこぼしているだけじゃないかと言う人もいるけど、私たちはそうやってからだを温めているの)”という歌詞があります。マンチェスターの音楽にインスパイアされたアルバムにピッタリですが、ここには、イングランド北部出身者として、アイデンティティの再確認みたいな意味合いが込められているんですか?

ケイティ:そうね。イングランド北部の人間は愚痴をこぼすが好きなのよ(笑)。でもすごく不思議な風習で、うまく説明できない。生まれつき備わっている、すごく優しくて親しみのあるスタイルで、愚痴をこぼすの。誰かと会って、「こんにちは。元気?」って軽く声をかけると、「それが、聞いてくれる? 昨日はママがこんなことをやらかして、私の背中は痛いし……」みたいな答えが返ってくるのよ。ほら、元々天気が悪くて雨が多くてグレーな感じの場所だから、北部の人間はそういう不平を長々と言うのが珍しくないんだけど、その表現の仕方はすごく暖かいのよね。北部の人間は、英国のほかのどの地方の人よりも暖かいと、私は思っているわ。だからすごくヘンテコなミクスチュアなんだけど、このニュアンスをうまく説明するのが本当に難しいのよ。

―そういう風に歌っているダークな曲を、青空が広がるアメリカ西海岸でレコーディングしているというのが、また面白いですね。

ケイティ:そうなのよ! それって今回に限らず、ベルリンでレコーディングしたセカンド・アルバムも、音楽的には全然ベルリンぽくなかったし、サード・アルバムはせっかくイビザ島で作ったのに、ハウスとかの類とは全く関係がなかった。いつもレコーディング場所に反発するような音楽を作るのよね。なぜなのか分からないけど、そうなっちゃうのよ(笑)。

―先行シングルは表題曲ですが、アルバムを象徴する曲だと思っていいんでしょうか?

ケイティ:そうね。もちろん曲調で言えば『Earthquake』なんかは全然違うし、あの曲も大好きなんだけど、出発点として表題曲はすごく大きな役割を果たしたと思う。歌詞はアグレッシヴで、サウンドはミニマルで。だから最初に世に送り出すにはぴったりだったわ。

―PVはどんな風なものを制作予定ですか?

ケイティ:うーん、まあね……別に決まってないわけじゃないのよ(笑)。うまく説明できないだけで。というのも、私たちは何でも自分たちでやるのが好きで、リリック・ビデオもふたりで作ったし、ここにきてすごく自信も備わって、「もう監督なんか必要ないでしょ」って感じなの。数人の友達に手伝ってもらって、それで終わり。これまでずっと、プロに頼んで作るのがいいと言われ続けてきたけど、実際にやってみると納得のいかないことばかりだった。完成したビデオが送られてくると、ものすごくお金がかかっていて豪華なんだけど、全然想定していた作品とは違うのよ。私のヘアメイクはめちゃくちゃで、おばあちゃんみたいに見えるし、服もカッコ悪くて……そういう失敗から学んだの。そして、ヴィジュアルもシンプルがベストだという結論に至ったわ。例えば『Thats Not My Name』のPVは3本作ったんだけど、最初の1本は本当に大がかりな撮影をして、私たちの周りで色んなものが爆発したりしていたんだけど(笑)、仕上がってみると全然エネルギーが感じられなかった。だから却下したのよ。「こんなの誰にも見せたくない」と言って。それで次に自分たちで作ったの。予算なんかほとんどゼロで。私が赤いドレスを着ているヤツね。それも、撮影した時に私のスーツケースの中で、唯一きれいだった服があのドレスだったからという理由で(笑)。さすがにすごくシンプルで、チープな感じだったんだけど、私たちのアイデンティティがちゃんと伝わったわ。それに今でも、一番多くの人が記憶している映像なのよ。一番チープに作られた、一番シンプルな映像でありながら。私は映画に出ているみたいに演技する必要性は感じないし、「自分たちをこう見せたい」という意図に則って作りたいだけなの。



―ちなみに、さっきキャビンフィーバーの話が出ましたが、そういう意味で『Basement』という曲はすごく納得が行く内容ですね。まるでザ・ティン・ティンズのテーマ曲みたいに聴こえます。

ケイティ:(笑)そうね。まさにそうなんだと思う。実際に私たちは人生の多くの時間を、世の中から切り離された場所で過ごしているわ。あの曲の設定通りに。そういう場所で、自分たちの世界に没入して、何カ月もずっと籠もっているのよ。また繰り返しになるけど、それって必ずしも健全な生活とは呼べないんだけど、それが私たちのやり方なの(笑)。

―毎回アルバムが短いのもひとつの特徴ですよね。アナログ盤を意識しているんですか?

ケイティ:どうなんだろう、とにかく短いアルバムが好きなんだと思う。私たちが好きなアーティストたちの作品、好きな作品は、短いものが多いのよね。20曲入りとかって、ベスト盤でもない限り聴きたいとは思わないし。しかも私はわりとシャウト気味に歌うから、こんな調子で長々と続けられたら、みんな閉口すると思うのよ(笑)。ぎゅっと短い尺に凝縮するのが、私たちには合っているのかもしれないわ。

―さて、今年はファースト・アルバムが登場してからちょうど10年になります。10年間を振り返って一番誇りに感じることと言えば何でしょう?

ケイティ:4枚目のアルバムを発表できるという事実そのものに、誇りを感じるわ(笑)。ふたりとも、相手に辟易して憎み合うことなくここまで一緒にやって来れたことが、素晴らしいと思う。そしてその間変化し続けたことにも、誇りに感じている。変わり続けるってことはマイナスになる面もあるわけだけど、私は好き。そういうバンドだってことを人々に理解してもらうまでに時間はかかったわ。セカンド・アルバムが登場した時は「ファースト・アルバムみたいな曲がもっと聴きたい!」と言う人が大勢いたし。でも10年経った今では、毎回変わるバンドなんだってことをみんな心得ていて、そこが面白いと思ってくれている。だから変わり続けて良かったなと思うし、変わるのが楽しい。例えば、2年ごとにファースト・アルバムみたいな作品を延々と作り続けるなんて、想像し得る限り最悪よね。しかもだんだん質が低下したとしたら、すぐにキャリアは終わってしまったはず。私たちは90歳になるまで曲を作り続けたいから!

―そういう意味で、あなたとジュールズがこれまで仲良くパートナーであり続けられた理由はどこにあると思いますか?

ケイティ:う~ん、ほかの生き方を知らないから、なんだと思う。ジュールズも私も若い頃からミュージシャン活動をしていて、本当に、ほかに何もできないのよ。クリエイティヴな活動をして生きるというのは、すごく奇妙な人生なんだけど、同時にすごく美しい人生だわ。そしてフラストレーションがつきまとう人生でもある。なぜって全てが、何か素晴らしいものをクリエイトできるか否かという点にかかっているわけだから。それだけに、「これだ」と思うものが生まれる瞬間は本当にマジカルで、最高の気分が味わえる。それが起きることは滅多にないんだけど、あの気分を味わいたくてやり続けるのよ。つまり中毒性がある。だから私たちは言わば中毒者なのよ(笑)。

―最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

ケイティ:次に行ける機会を楽しみにしているわ! 真剣な話、ツアーをする時は世界のどこよりも日本に行くのが楽しみなの。素晴らしい国だし、興味が尽きないし、食べ物もファッションも人々も最高だから。スタッフも「次にいつ日本に行けるの?」っていつも言っているくらいよ(笑)。だからアルバムを気に入ってくれるよう願っているわ。そうしたら私たちも日本に行けるし!

(インタビュアー:新谷洋子)


<リリース情報>

ザ・ティン・ティンズ 『ザ・ブラック・ライト』

ザ・ティン・ティンズ
『ザ・ブラック・ライト』
発売中
品番:SICX-107
価格:スペシャル・プライス Y2,200(+税)
※国内盤のみボーナス・トラック1曲収録

1. イストレインジド
2. ベイスメント
3. A&E
4. ブラックライト
5. アースクェイク
6. ファイン・アンド・ダンディー
7. ワード・フォー・ディス
8. グッド・グリーフ
9. スーヴェニア(※国内盤ボーナス・トラック)