声優・アーティストとして活動を続ける田所あずさの7枚目のシングル「RESOLVE」は現在放送中のTVアニメ『バキ』の前期エンディングテーマ。『バキ』ヒロインである松本梢江の視点から愛を歌った本楽曲は、女性ならではのアプローチで『バキ』世界を表現している。

  • 田所あずさ(たどころあずさ)。1993年11月10日生まれ。茨城県出身。ホリプロ所属。主な出演は『アイドルマスター ミリオンライブ!』最上静香役、『アイカツフレンズ』神城カレン役、『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』クトリ・ノタ・セニオリス役、『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』瀬田薫役など

今回は田所に「RESOLVE」の魅力についてはもちろん、ラジオでパーソナリティを務める天津向との「決意」エピソードや、今後彼女が目指すパフォーマンスについてなどをじっくりと伺った。

好きなキャラクターはビスケット・オリバ

――7thシングル「RESOLVE」はTVアニメ『バキ』の前期エンディングテーマ。しかも作詞に唐沢美帆さん、作曲に神田ジョンさんと豪華布陣で。

今回はまず『バキ』のエンディングテーマを担当するということにびっくりしました。ジョンさんは『バキ』が大好きということなので期待していたんですけど、いただいた楽曲のデモを聴いたら、イントロから熱くてまさに『バキ』という感じの曲で、すごいなと。全然エンディングには聴こえないくらいの熱さですね。

――その一方、歌詞は愛を表現している。

私も最初は女として、「どう『バキ』の世界観を表現すればいいんだろう」と思っていたんですよ。そうしたら唐沢さんが、(松本)梢江ちゃん視点の愛の歌にしてくださった。私も共感しやすくて、女性ボーカルだからこその歌になりましたね。

――『バキ』での梢江は見守る愛とか寄り添う愛というよりも、力強い愛を表現したキャラクターです。その分歌いやすかった?

梢江ちゃんは包み込むよりも、一緒にぶつかって戦っていくという愛情表現をするキャラクターなので、原作のイメージそのままで歌いやすかったです。

――デモを聴くまではやっぱりプレッシャーもあったと思いますが。

不安でしたね。ものすごくパワーのある作品なので、私にその力強さが出せるのか。私程度のパワーで歌えるのかなって。それに、オープニングテーマはGRANRODEOさんが担当すると聴いていたので、「いやいやいや私で大丈夫ですか!?」って。女性視点の歌詞にしていただいたのが救いでした。でも、愛の歌と言いつつ、とにかく力を出して歌わなきゃいけなかったので、歌い終わったあとはゼーハーゼーハーとマラソンでも走ったのかってくらい(笑)。体力的に大変なレコーディングでした。

――その唐沢さんですが、前回のシングル「DEAREST DROP」のMVではコラボもしていましたよね(名義はTRUE)。

そうなんですよ。前回はコラボをしたんですけど、歌詞を書いてもらうのは初めてだったので、そこも含めてめちゃくちゃうれしかったです。

――いろんな縁がつながっていますね。『バキ』といえば、ファンの間では有名な「田所さんのお兄さん」が好きな漫画でもありますよね。

はい、お兄ちゃんの部屋に原作漫画がありました。でも、当時の私にはハードルの高い漫画だったので読んではいませんでした(笑)。人気がある作品ということは知っていたんですけど。

――今回エンディングテーマに決定したときにお兄さんには。

あえて言わなかったんですよ。ファンのみなさんと一緒のタイミングで知ってもらおうと思って。発表されてからLINEがきて「ウッソだろ~~~ッッ」って。だいぶ喜んでくれましたね。もう『バキ』が好きなので、アニメに関しての情報をずっとリサーチしていたみたいなんですよ。だからびっくりしていましたね。

――まさか『バキ』に関わるとはなかなか思わないですよね。本作は、1991年に連載をスタートして『グラップラー刃牙』から始まり『バキ』『範馬刃牙』『刃牙道』とタイトルを変え、続いている作品です。今回は第2シリーズの『バキ』がアニメ化ということですが、田所さんが読んだのも。

『バキ』の方ですね。これまで格闘漫画って全然読んだことがなかったので、最初は私に読めるのかなって思っていたんですよ。でも、読んだらめちゃくちゃ格好良かった! ツッコミどころがあるシーンもあるんですけど、人と話したくなる作品だなって思いました。

――そうそう。読んだあとに「バキトーク」を繰り広げたくなりますよね。ちなみに、田所さんが印象に残ったシーンは?

花山薫さんとスペックの戦いが一番熱かったですね。あと、好きなキャラクターはビスケット・オリバです。ガッツリ戦うシーンはそこまでないんですけど、ミステリアスで余裕しゃくしゃくで、ユーモアがあるじゃないですか。好きになっちゃいました。

根性で乗り切ったMV撮影

――MVでは田所さんが歌っている前で格闘技が繰り広げられたり、別カットでは水を浴びながら歌ったりと、勢いのある内容になりましたね。

撮影は廃墟で行ったんですけど、そこがかなり埃っぽかったんですよ。バンドシーンを撮影するときに、変なところに埃が入って咳が止まらなくなっちゃったんです。外の空気を吸いに中断して……と大変でした。

――ハードだ……。

水をかけられるシーンも、ほんとうは私にはかからないようにするはずだったんですよ。私は霧吹きで少し濡らすくらいで。でも、本番では真上から水がバーって降ってきて、「そんな濡らすー!?」って(笑)。

――ひえー。

一回水を天井にぶつけてから降ってきた水なので、天井の埃がだいぶ付着した水だから、めっちゃ目が痛くて! 撮影中なのでまばたきもできないし、だいぶ充血していたと思います。でも、それが逆に泣いているように見えるカットになったので。

――目も喉もやられて……。戦いでしたね。

根性で撮影したので、楽しんで観てください!

――歌っていて気持ちが良いとか、お気に入りのフレーズはありますか?

たくさんあるんですけど、音でいうとサビ最後の"繋がり合い 暴き出す力"のなかに「バキ」って入っているんですよ。そういう遊び心がいいですね。あと、バキと梢江ちゃんが恋人になったときのシーンが漫画では描かれているじゃないですか。そういったセクシーな表現もあって素敵ですよね。こんな強い覚悟を持った女性に歌ってもらえたら、いつでも戦いに行けるなって思います。

――カップリングの「SHAKA BOOM」についてもお聞きしたいです。

「SHAKA BOOM」は、Rafael Esparza-Ruizさんという海外のアーティストの方に作曲していただいた曲で、これまでとは違う曲調になっていますね。Rafaelさんとご飯を食べたり、レコーディングではスカイプでディレクションしていただいたりと、とても勉強になりました。

――レコーディングではどのようなディレクションを受けたんですか?

Rafaelさんはとにかく楽しんでいました。「いつものあずさの力強い感じで歌って。ポップじゃなくて、ロックで」と。完成したあとも「あずさの声はすごくいいよ! 倍音がとてもいいよ!」ってなかなか言われない褒め方をされてうれしかったです。ハッキリ言ってくださる方なので、心に響きました。

――毎回英語の発音には苦労させられていますけど、今回はいかがでした。

今回こそ変な発音だったら恥ずかしいなと思っていました。でも、仮歌さんの発音を参考にして、耳で覚えられましたね。特に変だよとも言われなかったです。

――ガラッと変わって3曲めは「スキライ」。

作詞が藤本記子さん、そして初めて星銀乃丈さんに作曲していただいた楽曲です。前の2曲とは打って変わって、明るくキラキラしています。でも、切ない。私の中でのイメージとしては、好きな人が結婚してしまって、もう手が届かない……という想いを込めて歌いました。

――絶妙な恋愛観を歌っているんですよね。

はい、一見すると高校生くらいの恋愛としても読めてしまう歌詞なので、かわいさや若さをあまり出さないように気をつけましたね。レコーディングでも、どの程度の切なさや悲しさなのかのお話をして、大人の恋愛ってこうだよな、という気持ちを込めて歌いました。