マツダは2017年2月に発売したSUV「CX-5」(2代目)に2度目の商品改良を施した。改良版は今日から予約受注を開始し、11月22日に発売する。

新しい技術を生み出したら、最上級の車種からではなく、展開できるクルマから素早く展開していくのがマツダの流儀。頻繁な商品改良は、同社にとって珍しいことではない。とはいえ、2代目CX-5は発売から約1年半で2度目の改良を受けることになる。2018年3月の改良はこちらの記事でお伝えした通りの内容だったのだが、今回は何が変わったのだろうか。

マツダが2代目「CX-5」を改良。その内容に関する事前説明会があったので、参加してきた

目玉は2.5Lガソリンターボエンジン

CX-5の開発で主査を務めるマツダ商品本部の松岡英樹氏によると、今回の改良はディーゼルエンジン車に「待望の」(松岡主査の言葉)マニュアルトランスミッション(MT)を設定したり、車両運動制御技術を進化させたりといった内容だが、目玉となるのは「2.5Lガソリンターボエンジン」の導入だという。

2.5L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン「SKYACTIV-G 2.5T」(画像提供:マツダ)

そもそもマツダといえば、クリーンディーゼルエンジン車のイメージが強い会社だ。CX-5も、初代を発売した2012年には、ディーゼルエンジン車を選ぶ顧客の比率が80%を超えていた。ところが最近は、ガソリンエンジン車の販売比率が40%を超えるレベルまで増えている。

そんな状況を受けマツダは、ガソリンエンジン車の魅力を向上させ、顧客への選択肢を豊富なものにするために、新たなエンジンの導入を決めた。ターボの有無で性能はどう変わるのか。同じ2.5Lガソリンエンジンで比べてみると、最高出力はターボなしが188馬力(6,000rpm=1分あたり6,000回転)、ターボありが230馬力(4,250rpm)で、最大トルクは前者が250Nm(4,000rpm)であるのに対し、後者は420Nm(2,000rpm)だ。

今回の商品改良でマツダは、「CX-5」に最上級グレード「Exclusive Mode」(エクスクルーシブ・モード)を新たに設定。「ナッパレザー」という皮で張ったシートや本杢パネル、縁取りのない「フレームレスインナーミラー」などを採用し、前席には座った時に座面に込もる熱気を吸いだしてくれる「シートベンチレーション機能」を搭載するなど、高級感を高めた。このグレードの価格(税込み)は、2.5Lガソリンターボエンジンの4WDが387万7,200円から、2.2Lクリーンディーゼルエンジンの4WDが388万2,600円からだ(画像は「Exclusive Mode」の内装、提供:マツダ)

クローズドコースで実際に乗り比べてみると、ターボつきは走り出すときに力強さを実感できたし、時速100キロあたりでさらに加速してみても、その走りからは何か余裕のようなものを感じた。楽しく快適に走りたいのであれば、ターボつきを選ぶのが正解なのかもしれない。

ただし、ターボなしの方が燃費は良い。値段で比べてみても、同じ2.5Lガソリンエンジン、4WDの設定とし、「L Package」というグレードを選んだ場合であれば、ターボありは355万3,200円からだが、ターボなしは324万5,400円からと30万円程度は差がつく。例えば近くのスーパーに買い物に行くような、近距離でストップアンドゴーを繰り返しながら乗るのがメインの使い方なのであれば、そこまでターボにこだわる必要はないかもしれない。いずれにせよ、新エンジンの登場でCX-5の選択肢が充実したことは確かだ。

マツダのパワートレイン開発本部 エンジン設計部 第1エンジン設計グループでマネージャーを務める室谷満幸氏に話を聞くと、エンジニアにとって、作ったエンジンは「全部、自分の子供のようなもの」だそう。できれば全てのクルマに全てのエンジンを積んでもらいたいというのが本音だというが、どのクルマにどのエンジンを積むかについては、商品戦略との兼ね合いもあるのだろう。今回、海外ではすでに展開していた2.5Lガソリンターボエンジンが日本に導入となった感想を聞くと、「(自分で作ったエンジンを積むクルマが)自分で買えるようになって嬉しい(笑)」との回答だった

実は、今回の商品改良で注目したいのは、個人的には新しい車両制御技術「G-ベクタリング コントロール プラス」(GVC Plus)だったりするのだが、この技術についてはマツダのエンジニアに詳しく聞いてきたので、別の記事でお伝えしたい。

(藤田真吾)